【アロエのジュース】


 小さいころ、アロエのジュースが好きだった。近頃はめっきり見なくなったアロエのジュース。
 ペットボトルの中のうすく透けた白い液体に、透明なアロエの果肉が沈んでいた。パッとみた感じはカルピスをさらに薄めた感じで、果肉がどこに入っているのかわかりづらかった。
 甘くて、さっぱりした味がする。と思って飲んでいた気がする。遠い記憶の味や匂いは、なんとも言葉で伝えづらいものだと思う。

 先日、定期で頼んでいるヤクルトのおまけでジョアのマスカット味をもらった。ジョアは小学校の給食で飲んだ以来で、その頃(二十年近く前になる)にマスカット味はなかったと思う。懐かしいような気持ちになって飲んでみると、アロエジュースの味がして驚いた。
 よくよく考えてみれば、アロエの味というものをわたしはよく知らなかった。スーパーでアロエの果肉だけ買ってみても、薄甘いシロップの味がほんのりするくらいで、楽しんでいたのはあの独特の食感だけだったのかもしれない。きっと、昔に存在したアロエジュースも、白ぶどうの味だったのだろう。

 何よりも、ジョアを口に入れた瞬間にパッとアロエジュースの記憶が蘇ったことに驚いた。味と香りの記憶というものは、もしかしたらものすごく根強いのかもしれない。

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