【瞼の裏の赤い光】

むかしから、眠ることが嫌いな子どもだった。

今も、眠ることがあまり得意ではない。


たくさん動いて、くたくたになるまで疲れて、這うように布団に潜り込んで意識を失う。そういうやり方でしか眠る方法がわからない。未だに。

子どものころは、別に眠くなくても眠るように言われるので、毎日結構つらかったと記憶している。

大人はまだ眠る時間ではなかったから、廊下から漏れてくる光で薄く見える時計の針が、ほんとうに少しずつ動いていくのをただジッと見つめていた。それにも飽きると、空想ばかりして過ごした。

そうして時間を潰し、浅く眠って、空が明るくなってくると即座に起床した。まだ4時とか5時とかで、親はいつも早起きが過ぎる子どもの私に嫌な顔をしていた。


特に嫌いなのは昼寝で、幼いころ、まだ陽のある明るいうちに布団に入れられることがいつも不服だった。

陽のあるうちに瞼を閉じると、目の前が薄く光の透けた、赤い色でいっぱいになる。そのオレンジ掛かった赤い色を見ると、更に意識がハッキリしてきて、さっぱり眠れる気がしなくなる。


大人になって、あの赤色は、自分の血や肉が光で透けている色だと知った。

たぶん子の私がそれを知ったら更に眠れなくなったと思うので、知らなくてよかったと思う。

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