【スキンケア】


 面倒だけれど好きなもの、の筆頭がスキンケアである。
 いろんな形のボトルに入った、顔や体をきれいに保つ為の、透明な液体とかクリームとか。お風呂上がりに順番に塗り込むあの時間。

 いろんな質感のものがあるのが面白い。私はこっくり、と表現されがちなかたいクリームが好みで、触るたびに、一晩置いて少しばかり状態が悪くなってしまった生クリームのことを思い出す。私はケーキを買った翌朝に、あの硬く縮んだ甘いクリームを食べることが、結構好きだ。

 逆にしゃびしゃびした水みたいな化粧水とか、若干とろみのついた美容液とかは、あんまり好きじゃない。肌に吸い込まれる、という表現はわかるのだけど、私はあの、液体をぐんぐん肌が吸ってる感触にちょっとむずがゆさを覚える。

 スキンケアって「肌をきれいにする」というよりは「肌が汚くならないようにする」といった感じがするし、お風呂って入るだけでそこそこの体力を使うので、ボトルの蓋を開けるのですらプラスアルファの行為の感じがして、心底億劫に思ってしまう。けれど化粧液やクリームの、あの薄甘い匂いが肌に重なっていくときの、あのお部屋に漂う匂いはとっても好き。

 あの「めんどくさいなあ」の先にあるほの甘い時間のうっすらとした幸福の為に、毎日いくつも並んだボトルを開けている。

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