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チームラカイ練習とラカイの強さの秘密 当たり前のことを当たり前にしてただけの巻
今回の一番の目的はエドアルドフォラヤンに会いにくることだったのですが、エドアルドフォラヤン擁するチームラカイの練習体系とフィロソフィーの一端を感じて学んでくるのも目的の一つでありました。2016年に僕がエドアルドフォラヤンに負けてからチームラカイの躍進は始まりました。日本格闘技界が自信を持って送り込んだはずの和田竜光も若松祐弥もチームラカイのダニーキンガッドの前に苦杯を舐めさせられました。日本格闘技が格下に見ていたはずのフィリピン勢に苦杯を舐めさせられたことでチームラカイ勢の脅威に対策を講じてきた数年だったように感じています。
ONE旗揚げ戦(ONEFC時代)のメインイベントがエドアルドフォラヤン対クオンアソルでした。旗揚げ戦を生で見ていた僕はフィリピン勢の勢いに脅威を感じて、「日本人が勝てなくなる時代が来る」と思っていたら、5年後に自らがエドアルドフォラヤンに敗戦し、僕が身を持って証明する形になってしまいました。2018年末にはONEの世界チャンピオンを4人も擁して名実共にアジアのトップジムとなりました。
初期のラカイのファイトスタイルは近代MMAの最先端を行くものではない独自性の強いスタイルです。打撃で攻めて、テイクダウンを奪われても、飛び抜けた体力でエスケープして、打撃戦を繰り返す中で相手の消耗を誘って競り勝つラカイスタイルはオリジナリティのあるファイトスタイルとも言えますが、組み技のセオリーから反したスタイルとも言えるのでMMAとしての評価は分かれるところでした。実際に僕もフォラヤンとの初戦を終えるまでは軽視していたのは紛れもない事実です。実際に試合をしてフォラヤンの強さを感じることでラカイへの見方が変わりました。
実際に日本人は彼らを見てテクニックではなく、体力だと格闘技者としての実力を疑問視するように評する選手関係者もいるのは事実です。カールゴッチの言う得意技はコンディション的なのがまったく理解できていなくて寂しく感じます。
酷い話を言えば薬物を使用しているからの体力だと噂する者もいて、自分達が勝てない理由を薬物を理由にしてしまうのは思考停止だと思うし、自分の成功できない理由を自分以外のものにして納得させようとする在日差別や電通暗躍説的なものと同じで僕は嫌いです。好き嫌いというよりもそんな話をしていても先に進みません。ちなみにフォラヤン達を第一世代とすると今は第3世代20代前半でオールラウンドにこなすラカイ勢が育っています。ステファンローマンの打撃とレスリングを融合した最先端な技術体系はまさにその象徴です。
僕は彼らの練習体系と技術体系に興味があったと同時にチームとして常に選手が育つチームとしての取り組みにも興味がありました。
今回は二日間という短い期間ではあったのですが、一緒に練習をさせてもらって、彼らと触れ合うことで感じたチームラカイの強さを青木真也の視座で書き記していきます。
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規律のある統率されたチーム
チームラカイの特徴にマークサンジャオ先生を長にした縦の組織があります。MMAで部活を彷彿とさせる組織は当たり前のように見えて珍しいです。
優れたコーチとは何かと聞かれたらリーダーシップを持っていることだと僕は思っています。MMAの名コーチとされる方は場をまとめる力だったり、チームを統率する(マネジメント)力に長けた方が名コーチです。専門的な技術を教える能力とは別に組織論であり、如何に構造を作り上げるかにあると僕は考えています。サンジャオ先生がチームを指揮して、フォラヤンがいて、ベリンゴンがいて、バナリオがいてと年長者がチームをまとめていて、まるで部活のような組織ができています。
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このシステムは選手育成を考えたときに優れたシステムだと思っていて、それは年長の選手は若い選手に見本を見せるように日々の取り組みをするし、若い選手は先輩方の成功例や失敗例に学んで効率的に育成されていきます。もちろんその中で絆や助け合いに代表されるようなチームワークは大事でラカイはチームワークが一倍強いチームですが、それ以上に育成システムとして機能していると感じました。規律や基本のある意味を考えさせられました。形式ではなく意味のあることなのです。
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サンジャオ先生に伺ったら「最初のチャンピオン(バナリオ)を作るまでが大変」で「フォラヤンが青木に勝つことでチームにフォラヤンも一気に有名になって成功体験」ができて「それができたら皆が自分もなりたい」とやっていくと話してくれました。組織論とまずは成功例を作ってしまええば後に続くファーストペンギン理論でした。格闘技のコーチとして優秀なのはもちろんですが、組織論を持ってチーム強化に取り組んでいるのは日本にはない思考法ではないかと思いました。日本の場合は青木真也や堀口恭司や岩本健汰は突然変異であって体系化されてできたものではないので、再現性がないから同じジムで育つようなことはありません。ラカイに強い選手が揃うのは組織としての強さがあると感じました。
強さの秘密 山でのランニングトレーニング
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ラカイのテイクダウンをされても体力で切り返していく戦術には当てに競り負けない体力が必要になります。前提として相手よりもカーディオ(持久力)で勝っていることです。ラカイ攻略法の間違いの一つに彼らに削り勝とうとするのが間違いとしてあると思っていて、彼らに体力勝負を挑んでも削りに行ったこちらが削り負けてしまうのは実際に闘った自分がよくわかっています。どんなに揺さぶりをかけて動かしても動かしているこちらが疲れてしまうラカイ勢の体力です。
ラカイ勢の体力を作り上げているのがランニングトレーニングです。
チームラカイのあるバギオは標高1500mの高地で酸素が薄いのに合わせて山が至る所にあります。日常生活で昇り降りの坂が多いのに加えて、幼少期に荷揚げののアルバイトをするようでそれが足腰を鍛えているのだとフォラヤンは説明してくれました。幼少期からの日々の積み上げはあるにせよバギオの人全員が強いわけではないので、フォラヤンの話半分で日々のトレーニングが大事だと思います。
僕が参加させてもらったトレーニングは山の中のコースで降って登ってを繰り返すコースでした。降りたと思ったら登ってを繰り返して、まるで試合のような負荷のかかり方です。
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1周17分から18分のコースでフォラヤンが先頭で走っていくのですが、最初は余裕に感じますが、登りになると一気に苦しくなります。標高が高いからか、単純に昇り降りの負荷なのかどちらかはわかりませんが、肺が苦しいのではなく痛いです。肺が痛くて痛みを我慢して走っていました。その日は一周だったのですが、ケビンベリンゴンが普段は3−5周していると教えてくれて、とてもじゃないけど僕はこれ以上は走れません。この他にもいくつかコースがあるようでフォラヤンが連れて行ってくれた国立公園のところもコースで使うと教えてくれたり、リトアディワンが他のコースを教えてくれたりとのことで、この他にも5−6個コースがあるようです。
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走っている中で心肺機能が上がるのはもちろんのこと、走り終わって休憩しているとラカイの選手は回復が早くて、回復力も鍛錬を続けるうちについてくるのだと感じました。これはラウンド間のインターバルでどれだけ回復できるかの能力でラカイ勢のスタミナの秘密だと感じました。それと単純に苦しいのでこのトレーニングをしていることによっての自信が彼らを支えているように感じました。全員がこのトレーニングを信じているように感じます。それは成功体験があるのに加えて単純に苦しいことをすることで自信がついているのでしょう。フォラヤンを見ていても、この練習がまだできているからこそ、まだできると思えるのだと思います。
ランニング後にシャドーとミット打ちをしたのですが、ここで大きな発見がありました。これがこの他に一番の驚きと言っても過言ではないです。
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コーチJBのミット技術
サンジャオ先生が持つミットと指導力はよく知られています。僕もサンジャオ先生に持ってもらえるのを楽しみに嬉しく思っていました。キックミットを持ってくれたのがラカイのセコンドでよく見る小太りの若いJBコーチでした。よく見かけるのですが、外見は幼く見えるし、お世辞にも強そうには見えないので、失礼とは思いつつも重要人物だとしていませんでした。ミットを持ってもらったら初めて持ってもらうのに距離感の設定と要求する技の組み合わせと攻撃を受け切る技術が申し分ない秀逸なトレーナー技術でした。
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日本では飯村先生に持ってもらっていたり、シンガポールのEVOLVEではアタチャイ、ナムサックノーイ、ペットエーク、オロノー、ナンタチャイと錚々たる先生に持ってもらっていたのですが、JBのミット技術は負けるとも劣らないトップクラスの技術で彼がラカイの肝の一つだと思いました。機会があればまた持ってもらいたいし、できることであればまた練習にきたいし、試合で一緒になったときには持ってもらいたいと思った次第です。
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JBコーチに話を聞かせてもらったら「ラカイの散打流の蹴り方と僕のムエタイ流の蹴り方は違う」、「MMAとキックでも違う」、「選手個々でも違うし、相手によっても違う」とMMAをよく考えていたし、よく理解していました。JBコーチは元々はアマチュアの選手だったのですが、選手キャリアから教える側に回って今はラカイのトレーナーとしてラカイを支えています。若くして選手出身のトレーナーは日本では聞かないのですが、タイではよく聞く話だし、フィリピンでもこうして存在していてMMAを研究してMMAの打撃コーチがいるのは大きなアドバンテージだなと感じました。
ラカイのマインドセット 一番の強さの理由
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ラカイの選手は皆が明るいです。僕が感じたのは自分たちの実力を卑屈に見ず、かと言って過剰に見ることなく、過不足なく見えているように感じました。名前負けするようなことがないし、どんな選手とやっても自分達はの格闘技を出せば勝てると思えています。ベリンゴンは今は負けがこんでいるけれど上を見ているし、フォラヤンもまた同じです。ここら辺の卑屈にならない精神が大事だと思うし、自分達の存在を誇りを持っています。僕はこのマインドが一番大事だと思って今回の学びとして大事に思っています。僕も今は厳しい時期ではあるのですが、過不足なく今の自分を見て、自分はできると強い信念を持ってやっていこうと思いました。それを可能にするのはハードトレーニングなのだと当たり前のことをラカイで再確認しました。
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このタイミングでラカイの練習に触れさせてもらって心から感謝します。チームラカイ、サンジャオ先生、フォラヤンありがとう。
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