強がりの記憶たち
年長クラスで将棋ゲームを行った。
1から9までの数字が書かれた駒を
ルールに従って動かし
相手の駒を挟んでいく。
その際に、
挟んだ相手の駒に書かれた数字よりも、
自分の2つ駒の数字の合計が大きければ
相手の駒をとれるという勝負ゲームだ。
前半は、Kくんがリード。
「ふふん!」
ニヤリとした笑顔で頑張っている。
駒をとられたTくんは、
一瞬、涙を見せたものの立ち向かう。
そして、一言。
「これから本気出しちゃうもんね!」
言ったことあるーーーー!
思わず心の中で呟いた。
勝負ごとで相手が優勢になった際、
自分の実力はまだまだこれからだと
負けず嫌いな幼き自分を思い出す。
劣勢になる度に、
「よーし!作戦通りだ!」
「これから、本気出しちゃうからね!」
「その数字は、
取ってくれて逆にありがとだもんね!」
言葉巧みに
悔しい気持ちをみせまいと
口をついて出てくる言葉たち。
あぁ。
一生懸命に本気でやってるんだなぁ。
と、かわいらしい。
勝負は、最初に優勢だったKくんの勝利。
Tくんは、
勝負としては惜しかったけれども、
負けたり間違ったりすると
悔しさから泣き喚き、目の前の取り組みを
放棄していたときを思うと
最後まで、諦めずに立ち向かったのは、
紛れもない成長である。
子どもたちの分かりやすく強がりで
負けず嫌いな発言に
ほくほくした帰り道、
ひょんと兄のことを思い出した。
私と兄が学生だった頃、
外出先で母とシュークリームを食べた後、
口の端にクリームを少しだけつけたまま
気がつかずに数分を過ごしてしまった兄。
母が、先に気がついて
「口にクリームがついているよ」
と指摘すると
「‥‥つけてるの!非常食☆」
と言っていた。
「なに言ってんの!ふきなさい!」
一蹴されていたけれど。
そんなことを思い出した。
明日も無事に過ごせますように。
記事を見つけて下さり、最後まで読んでいただきありがとうございます。 少しでもなにか心に残るものを届けられていましたら、こんなにも嬉しいことはありません。