毎週ショートショートお題 「てるてる坊主のラブレター」
雨は今もずっと降り続いている。
この雨が私の心と体をどこかへ流してしまう前に、ずっと開けられずにいた彼からの手紙を開いた。
「ちゃんと意識がある間に、この手紙を書こうと思いました。
これがあなたへのラブレターになるのか、それとも別れの手紙なのか、感謝の気持ちなのか、酷い未練なのかは分からないけど、それでも書こうと思います。
病院のベッドであなたが僕の手を握ってくれた時に、初めてあなたと手を繋いだ時のことを思い出しました。
なんだか凄く嬉しくて、誰かに手を握られる温もりがこんなにも心地いいなら、それだけで僕はず〜っと信じていける気がしたんだ。
だからあの時、手を繋いでくれてありがとう。信じるものを与えてくれてありがとう。好きになってくれてありがとう。不安な時に抱きしめてくれてありがとう。隣で眠って安心させてくれてありがとう。
きっと僕はもうあまり長くはないけど、その分来世で、誰よりも早くあなたを見つける準備に勤しむよ。来世では誰よりも早くあなたの手を握って、誰よりもあなたが好きだって伝えます。
そんな空想に耽るだけで、不思議と心が落ち着くんだ。
だから僕の来世の計画をほんの少しでもロマンティックだと思ってくれたなら、忘れることのないように、たまに僕をことを思い出して欲しいです。
そして僕の分まで今をちゃんと生きて、僕の分まであなたは幸せになって下さい」
手紙を閉じると、雲の切れ間から一筋の光が差しこんだ。
大丈夫、この雨はきっと上がる。
少し弱くなった雨音は、私を優しく包み始めた。