地域でもパーパスマネジメントを
(扉画像は加治川治水記念公園の桜/新潟県観光協会「にいがた観光ナビ」より引用)
パーパスマネジメントとは?
パーパス、パーパスマネジメントという言葉をニュースでもよく目にするようになりました。トレンドとなっている経営用語ですが、わたしの専門領域(コンテンツ産業)でもバンダイナムコHDが昨年パーパスを策定したことはインパクトがありました。
今月からロゴも新しくなりパーパスの認知拡大を目指したムービーも公開されています。
「パーパスって何? すでにビジョンやミッション、バリューがあるのに……」という方もいるかも知れません。パーパスマネジメントを用いた組織開発コンサルティングを行う、アイディール・リーダーズでは、その違いを以下の様に整理しています。
自分は何のためにこの組織の一員となって働くのか? という目的(パーパス)と、この組織は社会に対して何のために存在しているのか、というパーパスが一致していると、幸せな関係が結べることになります。OKRなどの管理手法も、突き詰めればこのパーパスの一致を図り、組織としてのミッション・バリューそして数年後のビジョンを実現するためにある、と言えるでしょう。
地域でも重要となってきた「パーパス」
いま日本の地方各地は大きな困難に直面しています。人口減少・少子高齢化はもちろんのこと、コロナ禍と世界情勢の変化が地域経済を痛め、将来的な展望(ビジョン)が描きにくくなっているのです。
これまで地域は自らの価値(バリュー)を、将来展望を描くための足がかりとしようとすることが多かったのではないかと思います。例えば、新潟であれば自然が豊かで、東京とのアクセスが良く、水・米・酒が美味しいといった具合です。しかしながら、例えば人口減少と給与所得が減少した結果、足元で米の消費量が減少し、実際には米作りを止める農家も増えています。
バリュー自体が揺らぐ中、それを足がかりにはビジョンが描けないということが各地で起こっています。そんな中、筆者が注目するのはコロナ前からかなり「攻めている」徳島県の取り組みです。
VS東京のコンセプトには「意義」として以下が挙げられています。
このメディアが登場した時には「いったい徳島はどうしたのだ」といったドンキホーテを見たかのような驚きをもって受止められましたが、東京をいわば仮想敵として「徳島に存在する東京に勝てる価値」を改めて探して、磨き、アピールする、という目的(パーパス)は非常に分かりやすく明確であったと思います。そしてそのことが東京ひいては日本を変えるのだ、というビジョンに自然に接続されています。その上で県庁自らが変わるのだ、という活動宣言(ミッション)を行いこのページは結ばれています。その攻めていく姿勢は、例えばリゾート性に依存しないワーケーション(アワケーション)の価値追求とそれを支えるデジタルネットワークなどのインフラの整備といった投資にも現れています。
地域にとってのバリューはいま大きく揺らいでいますが、新しい価値を見つけ出し、あるいは生み出すのだ、というパーパスは揺らぐものではなく様々な地域のステークホルダーの力を集めることができるものになっていると感じます。
地域とパーパスマネジメントの関係は、まだ様々な仮説検証が行われている段階(以下リンク先のツールもとても有益です)ですが、企業にとって重要なコンセプトであるのと同様に、地域にとっても中心に置くべきものと考えています。
(最後に少しだけPR)実は筆者は上で紹介したアイディール・リーダーズCHOの丹羽真理さんが出版した書籍の編集協力を行っています。日本でいち早くパーパスマネジメントを紹介した2018年の書籍ですが、有り難くも増刷(6版)とのことです。Kindle Unlimitedにも入っていますので、よろしければ手に取って頂けますと幸いです。