鏡像
「都会には自分と似たような人が集まっている」
そう言っている友人がいて、私は彼のことを少し羨ましいと思った。
私は誰も私に似ていないと感じる。
誰かと誰かも似ていない。
もし私が私に似ている誰かを見つけられたら、
それはとても素晴らしいことだと思うし、
とてもゾッとすることだとも思う。
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スタニワフ・レムの『ソラリス』の中で、絶対的な他者との関わりの中においても、結局私たちは自分自身しか求めていない、ということを言っていた気がする。
海の形をした宇宙人は、人間の記憶から最も親しかった人の形を取り出して意思の疎通を図ろうとする。
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鏡よ鏡。
最近『白雪姫』を観返した。
白雪姫の継母は、魔法の鏡ではなく、自分自身に語りかけていたのだと気づいた。
彼女が本当に殺したかったのは、白雪姫ではなく自分の内なる畏れの感情だったのだろう。
写真家は、人間ではない窓や建物や花を撮るときでさえも、その中に人間を見出し続ける。
妖怪は人ならざるものであるようにみえて、実は人間の畏怖する感情が形になって現れ出たものである。
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私は誰とも似ていない。
私は世界のあらゆるものと似ている。
私はこの世界に私を見出し続ける。
私はこの世界の中に際限なく拡散していく。
この世界に際限なく拡散していって
そうして私はいずれ消える。
そしてそこにあり続ける。
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