盛大にスピってた話

孤独だった。

小学六年生の頃の話である。両親が教師ということで学校では皆に距離を置かれていたし、その両親は話しかけると壮大でソウルフルなお説教が毎回展開されてしまうので接触を避けたい。
また私も両親と同じように他人に対してお説教というスタンスでしか関われなくなっていた。もちろん嫌われた。
周囲の大人は私を「教師の子」という記号でしか見なかったので甘えたり頼ったりする事はバグだとみなされてしまった。

ヤバいほど孤独だった。

そんなこじらせ孤独女子が行き着く先は図書館と相場が決まっている。
そこで出会ってしまった“ハイヤーセルフ(自分の上位存在)”という言葉。

小学校の図書館で出会うこともアレだが私はこう思ってしまった。

『これで一人じゃなくなる』

壮絶な勘違いである。

自分との1on1は2人とは呼ばない。

しかしながら高次元の自分自身と触れ合うための魂の修行(笑)は始まってしまったのだった。

ハイヤーセルフと毎日話すことで自分も上位に近づけるという。言ってることは電波だがやったことはもっと電波だ。
黒電話の受話器を耳に当てて一人で会話をしていた。何を話したかはさっぱり覚えていない。「最近暑いですねー」とか言ってたのだろうか。その社交性を学校で発揮してほしかったところである。

ハイヤーセルフと会うためには意識を研ぎ澄ませなければならないので、窒息寸前まで水を張った桶に頭を突っ込んでいた。完全なる奇行である。やめてほしい。家族に止められた記憶もないので、やはり親は私に関心がなかったんだろうということを印象付けるエピソードである。

ああ!もうやめて!!早く第三者の介入を…

まだある。

まだあるの!!!?

神社の湧き水で洗った五円玉をネックレスにして常に身につけていた。満月の夜はもちろん深夜に祈る。ハイヤーセルフとの交換日記。〇ャスコ(〇ャスコでいいんだ?)で買ったパワーストーンを傷に当てて治そうとする。

これ厨ニ病の黒歴史で済まないところに、猛烈な体調不良というのがあった。吐き気と頭痛である。まだ正常な部分の精神が「勘弁してくれ」と言っていたのだろう。しかし私はこの体調不良さえも高次元に近づけた証拠と疑わなかった。もうヤバいしかない。

この地獄から私を救ってくれたのがなんと歴史学である。読んで良かった司馬遼太郎。
単にハイヤーセルフから歴史上の人物に依存対象が変わっただけだが結果的に良かった。学問だし。やはり〇ャスコのパワーストーンは信仰するのに弱い。

しかし、私はあの頃の自分を褒めてやりたいのだ。何をどうしたらいいのかわからないまま、誰の助けも受けられず、それでも他人を傷つけたりすることなく自分を救おうとした。
良くやったじゃないか。私は褒めてつかわすぞ。

この痛い過去は先程偶然に思い出した。五円玉を財布から取り出してみた所、独りぼっちで自分自身に救いを求めたニキビ面の女児が心をよぎったのでここに記しておく。

読んでくださってありがとうございました。

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