実践に基づいて考える、営業の新たな役割。「共創型営業」の可能性について
はじめに
皆様、初めまして。新卒から今日まで約7年、企画提案の領域で営業に関わってきている菊地と申します。
この度、有難いご縁がありまして、大変僭越ながら「# 営業アドベントカレンダー2021」の12/7を担当させていただくことになりました。
始まって1週間の間、担当している皆さんの記事が永久保存版レベルすぎて緊張が極まりないのですが、今勤めているHackCamp (12中旬サイトリニューアル予定)で実践している「共創型の営業」をテーマに記事を書いてみようと思います。
ちなみに、営業に対するあつ〜い想いは、営業祭り第一段が楽しすぎまして、その勢いでまとめた記事があります。暑苦しい記事なので、寒い冬に暖まりたい方はよかったらご覧ください。
こんな人に読んでほしい
HackCampで普段実践しつつ、共創型営業におけるコンサルやスキル移管の際に活用しているやり方を中心にまとめていきたいと思います。共創は営業の枠に留まりませんが今回は下記当てはまる方を中心に、少しでもヒントになったら嬉しいです。
5000字近くになってしまいましたので一旦スクロールしてみて、お時間許す時にご覧ください^^;
◆この記事をオススメしたい人
・AI活用、"優秀"な人材の採用といった未知なテーマを扱う営業マン
・受身型営業スタイルや、「売る」目的にした営業に限界を感じている方
・顧客とのコミュニケーションや会議に関してヒントがほしい
・顧客と対等な関係でともに価値をつくっていきたい
・営業の新たな役割について興味関心がある方
ご興味をお持ちいただいた方、もっと話してみたいと思っていただけた方はぜひ個別に情報交換しましょう!( Twitter@akikuchi19 )
「共創」が営業の領域でも注目されている背景
まず簡単に「共創」についてお伝えすると、共創とは多様なメンバーとともに新しい価値をつくり出していくことです。「コ・クリエーション」とも言われていますね。
私の身の回りでは、コンサルや企画営業チームを中心に、部署や会社を超えて価値をつくっていく「共創型の営業」の注目度が高まっています。
なぜ、顧客と営業が共に考えて共につくりあげていくスタイルに注目が集まっているのでしょうか。
私たちを取り巻く今の状況は、時代の変化が目まぐるしく、DX推進やイノベーション・働き方改革などテーマが複雑で多様化しています。
例えば、AIやデータを活用したい、DXを推進したい、VUCA時代に対応できる優秀な人材を採用したい、SDGsを取り入れたい・・・など買い手にとっても売り手にとっても未知なテーマが増えてきている、ということです。
また、ここで大事なのは、AI活用や新規事業開発などはクライアントが目指す世界観(vision)を実現するための「手段」の1つでしかないということです。
営業である私たちがこの時代に本質的な価値を提供するためには「AI活用」「DX推進」「採用」を目的化することなく、その先にクライアントが描いている「未来シナリオ実現への寄与」を目的において、自社のサービスやソリューションを提供していくことがより重要になってきていると感じています。
ソリューションがシンプルかつ少ない営業であっても、予算達成・ソリューション販売を目的にする営業に限界を感じている方は少なくないのではないでしょうか。
顧客のありたい未来を引き出しながら、下記について整理をしてあげることで、顧客の健在的な課題解決はもちろん、潜在的なニーズや事業課題に向き合うことになり、結果として、自社のビジネスチャンスの拡大と顧客と中長期的な関係構築につながると考えています。
・なぜ顧客は世界観の実現のために自社サービスを利用すべきなのか
・顧客はどんな未来を見据えて自社サービスに興味を持ってくれているのか
・成果に寄与するためにはどのように導入して定着・活用させていくのかベストか
共創型営業にこだわるHackCampがやっていること
「共創の民主化」を掲げるHackCampは、事業としては、
①ワークショップやオンラインコンテストなどイベントの企画運営
②人材育成やコンサルティング
を行なっております。
私たちのクライアントが扱うテーマとしては、新規事業・組織風土改革、DX推進など、正解がなく、社内外横断でチームが発足されるので、ステイクホルダーによって「成功」のイメージが異なります。
また、私たちが提供する事業は、クライアントの「ありたい未来」の実現において、一過性のものでしかないという自覚があるからこそ、営業〜企画に関するクライアントとのミーティングも、彼らと私たちとの「共創」の場と位置付け、未来を起点とした発散〜収束を行い、そこから得たアウトプットをもとに、中長期的な視点でご提案やプロジェクトの詳細企画〜伴走を行なっているのです。
以下、実際にやっていることをご紹介しています。
①顧客のありたい未来を引き出して可視化する
通常は、現状課題・今後の展望についてヒアリングをするのが主流かと思います。
私たちは+@で、「●●のありたい姿」をテーマに、クライアント側のステイクホルダーに集まってもらい、当社の独自メソッドを活用して未来のコンテクスト(文脈)を描いてもらいます。
▼アウトプットイメージ
クライアントワークでのアウトプットはなかなかお見せすることができませんが… 下記、Hackcampが2020年度が始まる時に実施したワークのアウトプットです。このアウトプットを軸に1年の方針や施策にブレイクダウンしていきました。
▼主なステップは下記の通り
1. 個人ワーク(テーマに対して単語ベースでアイデアや意見を発散)
2. チームで共有(多様な意見を可視化)
3. 関連付け(単語に込められた意味や文脈を共有していく)
4. 選択(大事な論点= 単語を選ぶ)
5. 作文(「●●のありたい姿」から始まる作文により、収束)
▼特徴・メリット
・全員が発言する機会があるが、「単語」ベースなので敷居が高くない
・「バックキャスト思考」アプローチなので、潜在的なニーズや課題を知ることができる(出てくるアウトプットは現状・課題の裏返しと言える)
・組織やチームの解釈を揃えることができる(プロジェクト終了時にこんなはずじゃなかったを防げる
・ワークショップ形式でステップを区切って進めるので60分でまとまる
・オンラインでもできるので、多様なメンバーの参加が可能
▼実践テーマ例
ヒアリングした現状・課題に対して、ミッション・ビジョン・バリューや、会社の方針に準じてできるだけ「Why」にあたる部分のテーマを設定します。
例1
【課題】DXを絡めた新規事業で3年以内に3億売上を作らねばならない
【テーマ】「●●社におけるDX推進が成功した3年後のありたい姿とは?」
例2
【課題】優秀な人材を採用するためのオンラインイベントをやりたい
【テーマ】「●●事業部における、提供価値のありたい姿とは?」
②ありたい未来を軸に、提案・プロジェクト伴走する
選択された単語=論点をベースに、プロジェクトの提案を行います。
ありたい未来を描くことで、目的やゴールが明確な一般的な課題解決アプローチと同じように、ありたい未来に対して現状課題を整理して、そこのギャップを埋める施策として位置付けをしていくことが可能になります。
またこの時点で、ありたい未来を実現するには単発のイベントを1回やるだけ(当社で言うと)ではなく、顧客の努力も含めた多角的なアプローチが必要であることも理解していただきます。
そして受注後には、ステイクホルダーとキックオフを通じて改めて、主には下記項目をmiroやmuralなどオンラインホワイトボードツールに可視化をして顧客とプロジェクトの進捗を記録・可視化していきます。
・プロジェクトの狙いやゴール
・プロジェクトメンバー
・その他インセプションデッキやロジックモデルをベースに予見を整理した情報
・マイルストーン
・定例の議事メモ
これを丁寧に行うことで、VUCA時代には必須といわれている柔軟性を担保しながら進めることができます。
また、プロジェクト終了時に行う提案も、次にやるべき自然なこととして顧客とスムーズに連携をしながら進めることができるので、プロジェクトの運営に終始注力することができるのです。
【補足①】テーマ探究(自分ごと化)・未来洞察
メインは、↑ になるのですが、そのためにまず、未来について探索・探究するフェーズを設けることがあります。現状や課題を出すのは比較的時間を要しないのですが、どんな未来にワクワクするか?という問いを投げると、戸惑ってしまう顧客が多いのでエクササイズ的な位置付けです。
また、起こりそうな未来に備えていても差別化にはつながらない、ということで、非連続な未来の仮説・シナリオを複数考えていくための取っ掛かりのフェーズでもあります。
【a. テーマ探究(問いづくり- QFT)】
当社はインバウンドが多いのですが、ぶっちゃけてしまうと、問い合わせ時にイベント実施の狙いや目的についてお伺いすると、「他社がやっているから」「上司に言われたから」・・・と実施が目的化してしまっているクライアントは少なくありません。
そこで、テーマについて「探究」から行うことがあります。
実際に活用している手法は、アメリカのNPO団体(Right Question Institute)が開発した問いづくりメソッド QFT(Question Formulation Technique)です。学校の授業で、主体的・対話的で深い学びを実現する方法として注目・活用されている手法です。ハーバード大学院大学のオンラインプログラムにも採用されているとか。
ここでも、テーマに対して深堀や自分ごと化を促すことが目的としてありますが、案外「何がわからないのかをチームで共有することができた」ことに対しての評価も高いです。また自分が作った問いなので問いてみたくなる(主体性を促せる)、何をすれば良いのか明確になることもこのフェーズの特徴です。
▼アウトプットイメージ
・下記、DXレポート2(経産省)の内容をもとに、今回アウトプット例を出すためにテーマを設定→ワークをしたものです
・実際は、ありたい未来を引き出すワーク同様、顧客のビジョン・ミッション・バリューや、事業計画書・現状など多角的に検討した上で、テーマを決定します
▼大まかな進め方
1. テーマ(問いの焦点)に対して思いつくアイデアや意見を「問い」で発散する(個人・チームワーク)
2. 問いを分類する(オープンクエスチョンかクローズドクエスチョン)
3. 問いを変換する(オープンQはクローズドQに。クローズドQはオープンQに)
4. 優先度の高い質問を決める
5. 次のアクションを考える
ポイントは3です。一般的に、5W1Hのオープンな質問を良しとする傾向があるように思いますが、クローズドなクエスチョンはその人のアイデアや仮説が反映されるので、意思決定をするにはクローズドクエスチョンが必要です。顧客へのヒアリングしかり、「良い問い」とはそのコンテクストによって異なるのです。
QFTに興味をお持ちになった方は、本手法を日本で広める活動をされているNPO法人ハテナソン共創ラボ代表理事 佐藤 賢一(さとう けんいち)さんのインタビュー記事をどうぞ。
https://www.backcasting.net/interview-2021-satoh/
【b. 未来洞察】
メガトレンドのインプットや、未来を想像するのを助けてくれるツールやサイト(例:未来年表)を使って未来イメージについて想像を膨らませます。
SF映画も参考になります。
また、ITやメーカーだと、10年前と現在の製品から、5年後の新製品アイデアを引き出すことを目的にしている「9windows」という手法を活用することもあります。
https://ideaplant.jp/products/bp/02.html
【補足②】ありたい未来に基づいて戦略の方針の洗い出しと優先順位付けをする
こちらも、顧客のプロジェクト内に組み込んだり、再現性ある共創型営業を目指すチームにスキル移管をしているのが主ですが、よく行います。
現場で行うとよくあるのですが、理想の未来を描いただけじゃ、絵に描いた餅のままです。実行して意味がある。
このワークでは、↑で発散した未来イメージを転記して膨らませたあと、現状の悩みや課題の発散を行います。そして、未来イメージと現実課題がつながる地に足のついたものに対して、解決案を発散→優先順位付けをしていくのです。いわゆる大まかな方向性や戦略をつくることができます。
よくある声は「課題や現状をチームで可視化しただけでも価値を感じた」です。
他メンバーと自分が考えていた課題感が違う、ということがわかるだけで、新鮮で前に進めていける希望がもてるそうです。
手法の参考記事
http://web.sfc.keio.ac.jp/~iba/sb/sb.cgi?cid=73
今日はここまでにしたいと思います。
いかがでしたでしょうか…。 ご意見やご感想、大歓迎です!
最後まで長文をお読みいただき、ありがとうございました!
明日以降の記事もお楽しみに!!
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