青い空に溶け込むような【のあ】

気づけば梅雨が夏を連れてきていた。
ついこの間まで雪が降って毛布に包まっていたはずなのに。

今日、梅雨の間の貴重な晴れ間を見つけて散歩していた。もう少し薄めのシャツでも良かったかな。そんなことを思いながら熱々になったマンホールを跨ぐ。
国道沿いの温度計は誇らしげに30℃を示す。まだ6月だってのに。
まだ6月。もう6月。あと数日もすれば夏至がやってくる。暦の上では当然かのように夏が来ていた。

いつも立ち寄る公園のベンチも今日は先客がいた。土曜日だし、こんなに天気が良い。みんなお散歩したいんだね。
普段は静かなこの公園がこんなにエネルギーに溢れてるのは初めてかも。

自販機でお茶を買っていつものベンチの1つ隣のベンチに座る。
たった2~3m横にずれるだけで新しい公園に来た気持ちだった。
キャップを開けて一口飲む。これでもかと冷えたお茶が喉を駆け下りていくのがよく分かる。

もう一口飲む。ペットボトルを傾けながら目線を上に向けた。
雲ひとつない快晴ってのはこういう空なんだろうな。
あ、飛行機雲。あの飛行機からも綺麗な空が見えているのかな。
決して栄えているとは言えないこの街も見えているのかな。

今日の空を空の上から見たらどんな景色なんだろう。
それはそれは溶け込むような美しい景色が見えるに決まってる。
自家用ジェットでも持っていたなら今すぐにでも飛び乗ってその景色を確かめに行くのに。

今日のところは想像だけ青空に飛ばして勘弁してあげようか。
なんて綺麗なんだろう。なんて素敵な星に生まれたんだろう。

ずっと空を眺めていたら青々とした空に溶け込むような気持ちになる。
心の中を涼しい風が吹きぬけると同時に段々と景色が霞む。
あれ、本当に溶け込んでるみたい。

気づけば涙が出ていた。
美しい眺めに感動した涙。本当に溶け込みたかったけど幻想で終わってしまった悔しい涙。どんな涙だろう。

いや違う。これはドライアイだ。
見とれすぎて瞬きを忘れてた。
しかも今日は目薬を家に忘れてきた。取りに帰らないと。

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