深夜水槽-MidnightAquarium
腐敗した空気が漂う鶯谷
どいつもこいつも欲求をまき散らし、
極彩色のネオン看板の入り口に消えていく。。
休憩5900円。宿泊9800円…。
コンビニで漢気見せる♂
道端で色目を使う♀
水槽はいつも濁ったMidnightAquarium。
ボクは歩く。ヒールの音を響かせて。
ブルーグラス、もしくはイエロータキシード。
ホルモン剤(人工飼料)をほうばれば、
自分の尾びれが煌びやかになる気がした。
ーポリッシュアップ、ボディ。
ーメイクアップ、イミテーション。
ーセレクト、トイズ。
ーチェンジング、メンタル。
渡されたメモ書き。
今日の水槽の扉を叩く。
ースマイル、スマイル、スマイル。
パルセットじみた声、
ああ、
これもイミテーション。
ボクは横たわる。真っ白な深海の闇。
キングコブラ、あるいはモスコーブルー。
ビデオで真似た、
尾びれの振り方は
生きるために
必要な
術だった。
ーミッショナリー。
ーサイド・バイ・サイド。
ードギー。
ーシッティング。
ーカウガール。
濁っていく、
そう…
PH値はどんどん下がっていく。
7、
6.5、
6、
5.5、
5…。
エラはどんどん漆黒くなる。
乳白色で漆黒くなる。
ああ、畜生。臭いが取れないんだよ!!
ああ、畜生。臭いを感じないんだよ!!
極彩色の天井。浮世離れしたライト。
使いづらいファニチャー。
そうか……。
「水槽自体」がイミテーション。
「優しさ」だってイミテーション。
「懇願」さえイミテーション。
「性別」すらイミテーション。
「メンタル」など…イミテーション。
全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、
全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、
全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部・・・。
嗚呼・・・・・・・。スモッグで翳んだ満月。
ああ・・・・・・・。並べられた●沢●吉。
「貴方方はボクを裏切りやしませんよね。」
……。
「そうでしょう。そうでしょう。
キミらは真で実で誠でしょうカ?」
……。
バチンっ(ブレーカーが落ちるあの音が首筋の少し上付近で鳴ったような気がするんです。)
そして、笑顔!!
「アドレナリンの氷菓は美味で御座イまショ卯!!!!!!!!!」
ボクは浴びる。
水飛沫。
鱂あるいは鯽。
後始末は静かにするのだ。
お金は誠なのですから。
水面に仲間が白っちゃけて浮いている。
目が真っ白だ。
何匹かは違う水槽で生きるという。
その「愛」もイミテーションなんだろ?
……。
山手線の音、タタン、タタン、タタン。
……。
水槽の朝は静かです。
ネオンに慣れた体には陽光は
プスプスと刺さるから厭なのです。
水槽越しに己が問う。
「慰み物の自分が嫌いかい。」
「この夜が憎いかい。燃やしたいかい。」
「プライドはないのかい。」
「貞操観念はどこいったんだい。」
「病気……。」
「病んでる。」
「人でなし。」
(深々と礼。)
『ご機嫌麗しゅう。ノーマルのアニマルな人間諸君。
ボクは♂と♀のアンドロギュノス。
ボクともっと喧嘩しませんか。』
(長い沈黙)
ちぇ、だれも目をあわせやしねー……。