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菜園生活のきっかけ

ダーチャとの出会い
ドイツに来る前に、しばらく旅に出ていた時期がありました。

1カ月程滞在していたロシアでは、あるおばあちゃんの別荘で数日間過ごしました。

シベリアの地方都市の郊外にあるこの別荘には、きっと自分たちで建てたのであろう小さな家と大きな菜園があり、おばあちゃんはほぼ1日中、畑仕事に精を出していました。

冬は厳しく凍てつくこのロシアで、夏にはこんなにもりもりと野菜が育つものかと驚いたものです。

おばあちゃんの畑にはなんでもありました。

毎回の食事はほぼ庭で採れた野菜から出来ていて、急な来客があった時でも庭先で何か取って来て、ちょちょいと何品かこしらえてしまうのです。

そして帰ってゆく客にも沢山の野菜をお土産に持たせていました。

おばあちゃんは普段大きな町に住んでいるので完全に自給自足の生活ではないけれど、
この時初めて週末はセカンドハウスに通い
野菜作りをするというライフスタイルがあることを知りました。

ロシア語でこの菜園付きのセカンドハウスを「ダーチャ」と言います。

発端は遡れば、あの苦しかったソ連時代の国民が、十分に食べてゆくための自給自足の場。

趣味とかいうレベルではなく、本気で生活がかかっているそんな時代も
おばあちゃんはここでずーっと野菜作りをしてきたのです。

その腕は衰えるはずなく、菜園のあちこちに余すところなくプリプリの野菜たちが育っていました。

思えばここがターニングポイントでした。

私は野菜作りをするというタイプではなかったけど、このおばあちゃんのダーチャに出会ってから「庭のある暮らし」が、この先待っている移住先のドイツにあったらいいなぁという思いが、ぼんやり浮かんできました。

日本からドイツまで車旅をしていた私達は、様々な国の辺境に出向くことも多く、そういう所に行くほど、幾度となく通りすがりの私達をゲストとして
もてなしてくれました。

そしてその人達の殆どが、大体自給自足な生活を
実践していました。

「実践している」と書くと、なんだか理念や目的があり頑張ってやってる感があるけど、彼らは昔から暮らしの中にそういう生活の流れがあって、それを今もやって生きているだけ。

ただ単純に食べ物や身の周りのものを自給することに、何の主義主張もなく、それが当たり前の人達。

当時、というか今でもそうだけど、
エコだのオーガニックだの、スローライフがどうのこうのとか、そういう標語がいたる
ところに浸透していて、その理念だけが
ビジネスとか誰かの自己満とか、消費活動やトレンドと結び付いている感が否めない世界から来た当時の私は、とてつもなく面を喰らったのを覚えています。

ドイツに移り住んで、幸運なことに私は庭を手に入れました。

旅先で出会ったあの人達のような暮らしに憧れて、せっせと畑づくりに励みました。

まずは敷地内で無農薬の家庭菜園を始めました。
故郷の東京では、ベランダガーデニングすら満足にできなかったど素人の私がです。

そして8年ほど前に自宅の隣にあったクラインガルテンの土地と家を購入し、菜園が3倍に広がりました。4年前からは、念願の養蜂も始めました。

そんなこんなで、生活スタイルは自給自足を目指してる人っぽい感じなんですが、実は逆で、好奇心が募った物事を暮らしの中であれこれしているうちに、なんか色々自給できるようになってきってしまったということです。

十数年前、移住を決めた時に描いたこの国での未来というのは漠然したものでしたが、長旅の経験と、ここの環境と、あとは有り余るほどの時間に導かれ、こういう生活をするに至ったというわけです。

この10年はそんな感じだったけど、この先10年はこのライフスタイルの延長線上で挑戦してみたいことがいくつかあり、常に頭の中がアイディアと妄想がこんがらがってます。

このNOTEには、そんなこんがらがったものたちを紐解きながら、そして形に残しながら夢に向かってゆきたいという思いもあり、始めて見ることにしました。

どうぞよろしくお願いします。