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誰も好きじゃない、今の自分が心地良い
先日、仲の良い男友達と飲んでいる時、なんとなく話の流れで「お前、好きな男とかいないの?」と聞かれた。
その言葉を聞いた瞬間、なぜかイラッとした。
イラッとした理由が、その時は分からなかった。
おそらく彼に対して
「ハンッ! 貴様、恋愛至上主義か。好きな人がいないとダメなんか?」
と憤りを感じたのだと思う。
そのため私は口を尖らせつつ、こう答えた。
「常時三人ほど、好きな男はいる。しかも都度、自分の中にブームがあり、生活環境や仕事のペースなどによって、好きな度合いも変わる」と。
洒落の効いた、思い切りがよくてさっぱりした、きっぷのいい女性として返答したつもりでいた。
しかし、なぜか心の奥底にシコリが残る。
彼は私の発言を理解せず、キョトンとしていた。
色々なことにわずかに違和感を覚えながら、その時、その会話は終わった。
◆
翌日。
私は再び、彼との会話を反芻していた。
「お前、好きな男とかいないの?」。
考えてみればその発言は、彼がシンプルに疑問に思ったから私に尋ねただけである。
彼は私に対して、とくに失礼なことは尋ねていない。
「最近、恋してる?」くらい、親しい友人同士の関係ならば尋ねることは、ままある。
しかし、私はその質問に過敏に反応した。
「コノヤロウ。人生、そんなに好きな人がいなきゃダメなんか。好きな人がいなきゃ人間失格なのか!?」とさえ思った。
今の私には、好きな人がいないから。
ということは、むしろ彼より私のほうが、好きな人がいない状況に何らかの負い目を感じている。
そこを悪気なく突かれたことで、イラッとしている。
要するに恋愛至上主義者は、私のほうかもしれない。
それに気づいた瞬間、頭を抱えた。
◆
その後、冷静に自分自身の思考を整理した。
おそらく私は、咄嗟に「好きな人もいない、寂しい人に見られたくない」と思った。
彼に対して、常に恋愛も仕事も充実しているような、「余裕のある女性」に見られたかった。
だから、良い切り返しがしたくて、「三人ほど好きな人はいる」なんて嘘をついたのだろう。
(実際に日々、何人か好意的に思う男性は存在しており、現実的恋愛に結びつかずとも『プチ恋愛感情』はあるが、その議題は一旦、置いておく)
その考えに辿り着いた瞬間、見栄っ張りな自分を浅ましく思った。
そして、他人が何気なく発した一言に余計な意味を持たせたり、自分の枠に嵌め込んだり、勝手にイラッとしたり、フィルターをかけてしまう自分に、ゲンナリした。
◆
しかし、その上で、だ。
実際のところ今の私は、誰にも恋愛感情を抱いていない。
そして、それが大変心地良い。
20代の頃の私は、好きな人が全てだった。
好きな人に情緒を育ませてもらい、共に難題を乗り越えることに命を賭けていた。
好きな人に甘い蜜を吸わせてもらい、時には本質的なことを教わり、揉め、そういうことにシズルを覚えた。
しかし、今の私は一人で立てている。
自分という人間が誰にも遠慮することもなく立ち上がり、好きなことや仕事、趣味、特技に向き合えている気がする。
その状況は誰にも惑わされないし、気楽で、人生に集中できる。
いつか再び好きな人が現れた時も、この感覚を大切にしたい。
出来るだろうか。
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![大木 亜希子](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/799950/profile_c0c3a494585342ff20dbe4ef74788532.jpg?width=600&crop=1:1,smart)