atsukotanaka521
30年近く、おしゃれ着としてきものを着て、仕事としてきものに触れて、のリアルな感覚をおしゃべりします。
工芸作家をはじめとする、お話を伺いたいあの人、この人に、インディペンデントでの取材をしていきます。
私の父と作家の尾崎一雄さんとの、得難い縁を戦前戦後の風景とともに綴ります。
半衿の縫い方には道理がある 年に2度ほどきもの箪笥の整理をしますが、なんとなく無視し続けてきたものがありました。長襦袢の引き出しの一番下にこっそりとあった礼装用の長襦袢。きものを着始めた頃、礼装用だけはうそつきではいけないとわかっていたのでしょう。お茶会や披露宴の時には、この長襦袢を着ていました。 先日、そおっと開いてみたら、嗚呼、タイムマシーン。過去の、あかん私がありありと見えてきたのです。教本を読んだのだか、うろ覚えのままやったのだか、定かではありませんが、半衿の
それでも私は半衿を縫う 自他共に認める不器用です。針を持てば笑ってしまうような運針テク。それでも、半衿はなんとか自分で縫っています。衿芯には三河芯を縫い付けます。 最初は、ジッパーで半衿をつける長襦袢や、半衿が独立しているタイプなど、いわゆる〝うそつき〟でしのいでいました。仕事を通じて、プラスチック芯を入れる衿つけを教わりもしました。その頃は、衿つけの良し悪し以前に、着付けがなってなかったので、〝うそ〟ついていても、気になりませんでしたが、次第に衿もとに違和感を感じ
受け継ぐ楽しみ 私のきものの多くは、新たに自分用に誂えたものです。最初の頃はずいぶん頂き物があったのですが、染めのきものがほとんどだったこともあり、若い人に譲りました。でも何枚かは、今も大切に着ています。 寸法を直したり、染め替えたり、八掛を直したりと、カスタマイズすることは、洋服とは違うきものならではの喜びです。手直しすることで、生まれ変わったように新鮮な表情を取り戻すきものは、なんと優れた衣類なのでしょう。もちろん、すべてのきもの素材に当てはまるわけではありませ
似合う色は若見えする いつもと違う色を試そうと、ずっと気になっていたペールブルーというか薄縹というか、とにかく水色系を巻きつけてもらうことにしました。大きな鏡の前で、反物を見頃のようにかけ、袖のように輪にして、そして見つめた自分の顔は、うーん、イマイチ。老けて見えるのです。地味だわあ。 言い訳させてもらえれば、断じてきものの地色のせいではなく、私の肌色との相性なのだと思います。 よく、着映えする、という表現を使いますが、それは、カッコよく見える、オシャレに見える、
染織作家 坂口智美さんの話を聞く 美しいものを生み出す人の手は、その人の来し方を知らぬうちに描き出しています。芭蕉、苧麻、生絹、キビソ、タッサーシルクなど、美しい糸を選び、扱い、織り上げる、染織作家・坂口智美さんの淡く静かな薄衣には、いくつもの出会いが層を成して、他のだれもが生み出し得ない世界観を見せてくれるのです。 ●中学時代に首里織と出合う ── 織りとの最初の出合いを教えてくださいますか。 もともと私はつくることが大好きだったんです。特にファブリックに興味があ