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【詩】からんからん

暑い午後

木陰の芝生に寝転がり
空を仰ぐ

わたくしの体から
抜け出した
わたくしのわたくしは

ふわりふわりと
空に向けて
浮き上がる

入道雲がもくもくと
起き上がり

やあ!とふわふわの帽子をとり
ちょこんと
お辞儀をした

今夜は雨が降りますか?

どうしょうか?

入道雲がイカヅチに
相談すると

イカヅチはカッカツと笑うだけ

ちょいとごめんよ

飛行機が
長い飛行機雲を引き連れて
前を横切る

雨と雷は勘弁してくださいよ

機体を揺らして
飛行機が抗議する

ねえねえ
乗ってみない?

飛行機雲の誘いに乗り
わたくしは飛行機雲に足を乗せた

からん

なんの音?

次の瞬間
わたくしは落下し始めた

からん

また
何かの音がして
わたくしは意識を失った

からん

また
この音

わたくしが目を覚ますと
わたくしは芝生の上にいた

傍らには
氷が入った麦茶のコップ

からんからん

コップが汗をかいていた

からんからん

喉の渇きを覚えて
飲み干すと

氷が涼しげな音を響かせたよう

相変わらず
もくもくと入道雲は揺れていて

相変わらず
飛行機雲は伸びていく

かげろう揺れる
午後の木陰

カゲロウが見せた幻

からんからん
からんからん

生暖かい風が吹いて来た

夕立が近いのかもしれない

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