S/IK
目を見た時に分かった。だからお前を蹂躙した。終わる前に私が壊れた。適当な用語をつけてお前、私を呼んだことがあった。あの時、絶対にお前を殺すと思ったんだけど、やっぱりこれは思った通りに、そうはならなかった。
近づこうとすると紐が解けて、最初に感じた事柄を思い出せなかった。もう何も、始まりよりも前にある、底にあった感情の他に出てくることがなかった。お前は私の人間の底から、私を着々と壊したのだ。
私の段落は短い。それは生まれついてのことで、お前と目を合わせてから、改めて運命となった。けどね、私はねお前さん、こういう語り口はしなかったよ。やはりもう少し無意識に沈んでいた。でもね、お前の身振りと声色、効くんだなこれが。
engulf だとか言った。呑み込みと呑み込まれ。お前、私で試しただろ。そのお陰で隔離されちゃったよ。しかもお前、制度の檻を覗きに来てさ、チョコレートを差し入れていきやがった。お前の言うチョコレートじゃねえよ。本当のダークなあれ、チョコレートだよ。ぼりぼり喰わせてもらって太ったさ。糖質ってさ、ああいう場所では特に、人間を狂わせるんだよ。分かってやったろお前。
出ると気がつくとお前は消えていた。気持ちのいい謝罪を残して。荷物の整理をちゃんとしてくれたね。あれは助かった。私の持ち物は自由になっていたから、誰に取られてもおかしくなかった。全部全部、残ってたよ。まるでゴミみたいに。もともとそこにあるゴミみたいに。誰の視界にも入らなかったようで。
そう死にたい。お前が思わせるのはそれ。しかも清潔に。本当に厄介だ。心の底の蓋を開けてさ、風を吹き込むと出てくるものを知ってる。本当に誠実な悪魔。意識下をずるりと動かして、人間を母体に帰らせようとする。ほら私まだ幼いからさ、こういうの好きなの。君みたいなの好きなの。君じゃないよ、君みたいなの、清潔な腐敗、匂いのない死体、コンパクトな宇宙。