路地裏から誘う

わたしにだけ見える薄暗い路地裏がある。怪しいネオンの光の瞬きに目が目が眩んで、誘うように伸びる白い手にそのまま何もかも考えられないような暗がりに引き擦り込まれてしまうのだ。

いきなりポエムぶち込んだけれど、わたしの中で路地裏誘い枠というのがある。何のことかわたし以外には伝わらないと思うので説明すると、見ているだけで頭がぼうっとして、何も考えられなくなり、そのまま見ていると自分が危険な領域に誘われてしまうので怖いな!という枠だ。

先日、ものすごく有り難いことにご縁を頂き、たまアリのすのトラなにわ合同公演に行ってきた。

トラジャを目当てに行ったけれど、すのも気になるしなにわも気になるし、入る前からわくわくしていた。トラジャ以外を観られる機会なんてそうそうないしね。

すのが登場したとき、9人になったすのはどんな感じかな?って楽しみだったので双眼鏡をステージにいる9人に向けた。

わたしはすのだったら深澤くんかなべしょかな~どっちかな~この公演でどっちか決まったりして~みたいな感じで臨んでいたので、そのあたりに目を向けるつもりだった。

瞬間、わたしの目に飛び込んできたのは、黒髪つややかな見知らぬ美少年だった。

それがラウールである。

名前は9人体制になると発表があった時に初めて知って、顔は新アー写で初めて知って、その時は箸にも棒にも引っかかってなかった。

その時に写真で見ていた顔とは全く違うじゃないか、これでは詐欺だ!と後から思った。成長期ってこわいね。

合同より少し前、横アリでの単独コンサートのうちわでのラウールの写真もすごく良くて、うわーこんなにきれいな子だったんだね、と思った。この時は箸には引っかかっていたかも。ただ、うちわ買おう~とかすの横アリ入りたい!みたいな強い思いは無くて、それからのあの衝撃である。


双眼鏡がラウールをとらえた瞬間頭が真っ白になって「うわ!!!!」って衝撃でその場に棒立ちになった。何が起こったのかわからないまま身体は冷静に双眼鏡を動かしていた。あの美しい人形みたいな子は、生きて動いているのか?


時間にして数分だと思うけど、見蕩れている自分に我に返って双眼鏡を降ろした。肉眼では小さい9人を追うのもなんだか胸が苦しかったので、なんなんだ…と困惑していた。

ほとんどの時間、割合で言えば9はトラジャしか観ていなかった。トラジャが観たかったのだし、それでよかった。しかしながら、わたしは時折ラウールに双眼鏡を向け、向けては棒立ちになり、ぼうっとするという事を繰り返していた。

青春アミーゴでラウールがステージを脚で蹴り上げるたびの歓声も遠くに聞こえるくらい、あの瞬間が焼き付いて離れなかった。

美しいという事は怖いことだと思う。あの公演中、トラジャのステージパフォーマンスに心踊りながらも、ふとした瞬間にあの汗で濡れた黒髪に路地裏に誘われそうになった。


終わった後、決まった現場の余りの多さに金欠を予感しながら、思い出すのはラウールを見ているうちに眼球に焼付いた数秒のパフォーマンスのコマ送りで、このまま回想しているときりがないのでそっと頭と心の片隅にそれらをしまった。


何が言いたいのかわからないけど結局のところ魅入られかけている最中でギリギリ留まっているという自分なりの頭の整理でした。

あれからすのつべとか観たりしてもあの瞬間の恐ろしいような手招きは感じられなくて、ラウールは十五歳の、まだ発展途上成長期真っ最中の子供だった。

じゃあ、あの日見えた怪しい路地裏からの誘いはなんだったの?みたいな、これ酩酊しながら書いてるんだっけ?みたいな、そういう、諸々を確かめたくてサマパラすの公演ひそかに申込みしてたんですけど外れたので、確かめるすべのなさに途方に暮れているこの雨の日です。

ああいう体験って、好きとかそういう感情とは別の所にあって、気づいたら身体の奥の方に根を張られてしまいそうな恐怖と紙一重でもあるので、タイミングがあればラウールのパフォーマンスが観たいです。単独、行きたかったなぁ。


余談ですが、それ抜きにしてすので好きなのはふっかかなべしょ、やっぱりどっちか決まらないんだよねー。これも謎。



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