自分自身を見つめ直す
11月16日。
今までで1番自分自身と向き合った日だった。
私は、10代限定の「#君のことばに救われた」のイベントに参加させていただいた。
正直、始まる前はこんなにも心を動かされるものになるとは思っていなかった。
しかしその考えとは裏腹に、実際は一言では表せないような素晴らしいイベントであった。
と、いうより、みんながそうさせたのかもしれない。
私が今まで 言葉 に持っていたイメージは、「自分の意志を人に伝える手段として最も難しいもの」であった。
これに対して、周りはこう言うだろう。「意志の伝達手段としては、手話やアイコンタクトなど他の何よりも、よっぽど分かりやすいものなのではないか」と。
まさにその通りである。
しかし、人に分かりやすく伝えられるものであるからこそ、その伝え方に苦戦するものなのだと自分は思う。
本当の自分の気持ち。
上手く伝えることができたら、嬉しい。
でも、それがうまく伝わらなくて誤解を与えてしまった時、人は痛みを感じる。
言葉 は成功と失敗の紙一重である。
だから私は、人前で自身の思いを伝えることに一種の怖さを覚えていた。
しかし、自分のその考え方が変わった瞬間があった。
それは、今回のイベントでラップに出会ってからだった。
自分の気持ちを文字に起こすなんて、慣れない作業だけれど、自分なりに思いを綴った。
今までの人生を振り返ると、18年間生きてきて、一時も離れない自分のライバルがいた。
私には4つ年上の姉がいる。彼女は新社会人として某大手車会社に務めている。
彼女には、元々才能があった。いや、今思えば才能だけではなく、相当努力したのではないかと思う。
彼女は、小学生の頃学級委員を務め、中学生の頃は生徒会長だった。テストでは毎回学年5位以内に入っていた。体育祭の短距離走ではいつも1番。市内のマラソン大会でも1位。学年合唱のピアノの伴奏をやり、中学最後には、体育成績優良生徒として学年でたった1人選ばれていた。高校でもバスケ部の副キャプテンとしてチームを支えていた。大学では、パフォーマンス系の学部へ行き、振り付けを担当したり、大人数であるのにもかかわらず全体をまとめる指揮官のような役割を任されていた。
そんな何でもできる姉を妹の私はずっと見てきた。
だから、自分も姉のようにならなければならない。という責任感を感じていた。勝手に。
小学生の頃は自由研究で入賞したり、作文を書いて市内で選ばれたりした。中学校ではポスターコンクールや作文、俳句、書道で入賞。市内の教育委員会の芸術文化部門で賞を貰ったりもした。
姉に追いつけるように自分なりに頑張っていた。しかし、私は気がついた。自分の活躍面は偏りすぎているのではないか。芸術面での活躍の場が無くなってしまったら、自分には取り柄がないのではないか。社会貢献なんて以ての外。自分が勝手に感じていたプレッシャーにどんどん押し潰されていった。
小学生の頃の市内のマラソン大会では3位、中学の持久走でも3位、テストでは学年15位、人前に出るのが怖くて学級委員会や生徒会にも入らなかった。塾との両立が困難になってきて部活では、スタメン出場からどんどん離れていった。つまり、自分は中途半端だった。全てにおいて中途半端だった。
高校になると、中途半端でもなく、もはや自分の良さは何も無くなっていた。
今まで自分を過信しすぎていた。できる。できる。私は姉のようにできると。けれど現実は違った。自分に対しての甘えが出てしまっていた。何をやっても姉には追いつかない。私は、全てにおいて劣っている。これから先もずっと姉には到底追いつけないだろう。そう考える度、私の気持ちは底へ底へと沈んでいった。
このように、自分はネガティブな思考になっていた。
この日までは。
ラップでみんなの本音を聞くまでは。
みんな同じ10代なのに、自分とは比べられないほどの強くて固い意志を持っていた。既に夢を追い始めている子もいた。
夢もきちんと定まっておらず、ただ淡々と生きているだけの自分が情けなくなった。
つらい過去があっても1歩ずつ前に進み始めた姿を見て、私は涙を流し、そして勇気をもらった。
上手く伝えられなくたっていい。
ことば にすることが大事。
人に発信することが大事。
自分の思いをありのままに伝えることが大事。
やってやろう。
私は目の前が開けてきた気がした。
夢ほど大きくはないが、私には昔からやりたいことがある。
それは、モンゴルのマンホールチルドレンに寄り添い、彼らの可能性を広げること。
現地へ行き、彼らに直接会って希望を与えたい。
「人生は自分の力で変えられる」
この言葉は、マンホールチルドレンだった男の子が言っていた言葉だ。
過酷な状況下で育ってきた彼が放つ言葉はとても信憑性があり、一言一言が私の胸に突き刺さった。
人と比べることも大切だけれど、自分は自分でしか変えることができない。
姉と同じ土台に立とうとするのではなく、自分の道を歩んでいこうと思った。
人の目を気にしてビクビクするのではなく、自分のやりたいことをやろう。
「やらないで後悔するより、やって後悔しろ」
この言葉が一生私の背中を押す。