【イベントレポート】 日本でもっと “カスタマーサクセス” を盛り上げよう!! Japan Customer Success Community(JCSC)#11 顧客を成功に導くオンボーディングの削ぎ落としとは?
本日は「日本でもっと “カスタマーサクセス” を盛り上げよう!! Japan Customer Success Community(JCSC)#11 顧客を成功に導くオンボーディングの削ぎ落としとは? 〜トレタが辞めた、4つのポイント〜」に参加させていただいたので、講演内容を整理してみました。
【登壇者】
トレタ株式会社 CRM事業部 カスタマーサクセス部部長 鈴木高太郎さん
鈴木さんは大学卒業後、某大手求人広告会社でプレイングマネージャー →制作会社で法人営業部の立ち上げ → 現在はトレタでカスタマーサクセス部の責任者としてハイタッチCSの立ち上げとインサイドCSの立ち上げ。幅広い経験をお持ちのお方です。
本日は、顧客のためについついやり過ぎてしまうことを見直し、無駄の削ぎ落としによるオンボーディングの成功率向上についてお話をしていただきました。実体験に基づく知見を共有いただき、ありがとうございました!
【トレタさんの事業について】
・飲食店向けの顧客管理でシェアNo.1
・紙の台帳で管理している予約をiPadに
・オンボーディング完了の定義は、「顧客が紙の台帳を使わなくなったら」
1.トレタさんのオンボーディングの歴史
2014年の事業立ち上げ当初、鈴木さんは顧客獲得・オンボーディング・サポートまでの全てを対応していたそうですが、これではまずいと2015年にCSチームを発足。しかし、1人で1,000店以上を担当しながら日々の業務をこなす中、メンバーからSOSが発信されるようになります。また、余裕がない中でオンボーディングの手法にもバラツキが出始めてしまい、結果として、ハイパフォーマーとローパフォーマーでオンボーディングの成功率に30%以上の開きが出てしまいました。
2.機能説明をしないという決断
上記の状況を改善するため、まずはハイパフォーマーとローパフォーマーの違いを把握するため、鈴木さんがCSの顧客訪問に同行。その結果、「ハイパフォーマーは顧客に合わせて会話をしているのに対し、ローパフォーマーは懇切丁寧に説明している」という差に気づくことが出来ました。一口に飲食店と言っても、ジャンルや規模によって悩みが異なるのは容易に想像できる中、顧客の課題に合わせて受け応えができる方の成功率が高くなるのは納得です。誰しもがハイパフォーマーのように振る舞える訳ではないため、ローパフォーマーの引き上げが課題に挙がりました。
また、どんなに丁寧に機能を説明をしたとしても、人間は一度に7つまでしか覚えられません。必要以上の機能を説明しても、相手の記憶に残らないのです。このような背景から、【機能説明を短くし、質問時間を増やす決断】をします。
・時間配分
変更前:機能説明を60分間
変更後:機能説明を15分にし、質問を45分
・説明内容
最低限の機能のみを説明し、便利機能の説明をしない。 (便利機能とは、「ちなみにこんな事もできます」のような説明)
まず、時間配分を調整したことにより、顧客が納得出来るまで質問できるようになりました。これに伴い、オンボーディングを重ねるごとに質問への知見が溜まり、CSはどのような質問にも回答が出来るようになります。結果的に、CSは質問回答力によって顧客と信頼を顧客と築くことが出来るようになりました。
また、便利機能を説明しなくなったことにより、いわゆる重箱の隅を突く質問が出なくなったそうです。
その結果、改善前は人によってオンボーディングの成功率に30%の開きがありましたが、改善後は差が10%まで縮まりました。ローパーフォーマの引き上げに成功したのです!
3.お客様のところに行かないことを決断
オンボの成功率は引き上がったものの、案件が増えるに従い、契約後のキックオフが追い付かなくなります。場合によっては2ヶ月先になってしまい、キックオフミーティングが謝罪から始まることも..。
ここでWeb会議ツールのベルフェイスさんの出番になるのですが、意外にも最初は浸透しなかったようです。理由は、Web会議よりも訪問の方が楽であるため、特に訪問に慣れていメンバーほど、訪問に流れてしまいがちだったそうです。しかし、Web会議を定着させないと、工数が増える一方であり、自分達の首を締めることになる。そこで、何とかしてWeb会議の文化を根付かせるため、以下の工夫をされたようです。
・Web会議フォローの心理的なハードルを下げる。まずは1回webで説明してみよう。それでダメだったら訪問してもいいよ。
・訪問未経験なメンバーを混ぜる
・やらなければいけない環境を作る。自席をパーテーションで区切り、「ここまで整えてもらったからやってみるか」という気持ちになってもらう。
鈴木さんも浸透に苦心した結果、Web会議が定着。なんとオンボ成功率が5%も向上したそうです!
要因は訪問よりもWeb会議の方がタッチ数が増えたためです。訪問は移動時間を要するため、オンボ期に2タッチ(情報量7×2=14)しか出来なかったものの、Web会議では4タッチ(情報量7×4=28)も出来るようになったことが大きいようです。
4.人が説明しないことへの決断
Web会議が定着し、高レベルのサポートを提供出来るようになったものの、次は顧客がサービスに慣れるという課題にぶつかりました。効率化の観点もあり、人の説明から動画説明に振り切ることを決断されたようです。
動画を見ていただくための仕掛けとして、3回のタッチポイントで動画視聴を促した結果、動画の視聴率は68%に!
ちなみに、動画制作には2パターンあり、クオリティ優先の公式リリースは制作会社に任せ、スピード優先の場合はKeynoteでCSメンバーが制作しているらしいです。
5.講演を通しての気づき
最後に、特に気づきだと感じた点を纏めてみました。
・顧客の悩みを様々であるため、サービス提供者が全てを理解できる訳がないという前提に立つことが重要かと思いました。トレタさんが質問時間を45分にして成功した理由の一つには、顧客によって異なるお悩みを吸い上げ、CSが丁寧に回答をする文化が根付いたからなのではと考えています。顧客の立場に立つと、自分特有の悩みを聞いてもらえたという安心感が得られるはずであり、「話を聞いてもらったから自分もやってみよう」という気持ちになれるのではと思います。
・人間は1度に7つしか覚えられないという前提も重要です。顧客のサクセスに必要不可欠なものだけを説明するようにします。あったらベターは説明しません。
・タッチポイントごとに説明する内容も厳選した方が良さそうです。初回に説明しなくても良いものは説明してはいけません。
・Web会議の定着により移動時間が減るというメリットはイメージ出来てましたが、タッチ回数が増えることによって、オンボの成功率が上がるまでのイメージは持てていませんでした。「なぜWeb会議ツールを導入するのか」がより腹落ちしました。ベルフェイスさん素晴らしい!
最後になりましたが、会の企画・運営をしていただけた皆様、本当にありがとうございました!
今後もカスタマーサクセスの皆様と交流を深めさせていただきたいです! 引き続きよろしくお願いいたします!
最後までお読みいただきありがとうございます! これからもカスタマーサクセス関連の気づきやノウハウを書いていきます。フォローしていただけると嬉しいです!