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しばらくお休みします

 先週に引き続き、お休みしますの投稿が二週続いて少々情けないのが正直なところではありますが、noteの投稿をしばらくお休みします。理由は、年度末だからです。年度末、すなわちfiscal yearの最終月ということですが、この三月にいろいろと予定が立て込むのが本邦では通例となっております。どうしてもっと前倒しでできなかったのか、どうしてスケジュールを分散して通年でワークロードを平準化しないのか、378時間も残業して人は生きていけるのか、などなど、私のみならず皆様におかれましても思うところは多々おありかと存じます。しかし、三月は三月であり、これを他の月に代替することは、到底できないのであります。梅が咲き、桜の蕾が綻ぶころ、人はなすべきことをなす。それが花鳥風月春夏秋冬のことわりであります。

 啓蟄を過ぎ、三寒四温もひとしおの今日この頃ですが、花粉症がひどくってかないません。暖かくなった日はつい外に出て、ソーシャルディスタンスを保ちつつ、近所の公園なぞをジョギングしたくなる。これは生き物の習性であります。ですが、そうして外出した翌日には、決まってひどいくしゃみと鼻水に悩まされるのです。花粉症の薬も服用しておりますが、これが非常に慎み深いと申しますか、甚だ心許ない効き目しか発揮せぬものですから、夜寝る前と朝起きてすぐの一日二回、用量用法を守って服薬しても、くしゃみや鼻水が出る時がございます。

 公園といえば、先日西日の美しい午後に近所の公園の周囲を駆けておりますと、公園内のベンチに卒業を間近に控えた男女の高校生カップルが座っておりまして、私が公園の周囲を一周するごとに二人の距離は縮まり、男子生徒は女学生の肩付近に手を伸ばし、ついには私が走ってくるのも眼中にないとばかりに熱烈なキスを交わしておりましたので、こりゃあ見ちゃおれんと見て見ぬふりをして走り過ぎましたが、もう一周ぐるりと公園を走って再びやって参りますと、まだ口づけを交わしている、それどころか、どちらも真面目で大人しそうな風体の高校生でしたのに、今度は女学生の方から積極的になってキスをしているものですから、もう私の方が何かやましいことをしているかのような気分になって、急いで目を伏せて走り過ぎたのです。

 高校生のカップルが座っておりましたベンチは、公園の端の方に所在するものではありましたが、端といったって見えるわけです、周囲から。大体、あまり人目につかないところにベンチがあるのもこれはこれで危ないのですから、大抵の公園のベンチというものは人目のつくところにあるのです。人目につかないベンチというものはない。にもかかわらず、私が公園を一周して走ってくるたびに、高校生カップルはまったくの二人っきりワールドの住人となって愛を語らっているわけです。

 側から見ると白昼堂々、なんであんなところで、という公衆の面前で大胆にも愛を語らう二人。恋は盲目と申しますが、大体の場合二人合わせて四つの目がついているのに、恋する二人には周りのことなんぞまったく見えていないのです。そして二人はそのことにまったく気づかない。なぜか。周囲の人から注意されたりクスクス笑いが聞こえたりすれば、慎み深い健全男女、これはいけないと襟を正すことでしょう、しかし誰も二人に謹告しない。向こうから言ってこないのであれば、これはもう誰の目にも留まっていないことと同じである、こう若い二人は考えるのです。

 こちらのことなどまったく眼中にない二人の姿を見て、私は悟りました。若き恋人たちの二人っきりワールド、あれは慎み深い、思いやりに満ちた大人たちの良識と、見て見ぬ振りによって支えられ、守られてきたのであると。これをお読みの皆様方におかれましても、身に覚えがおありかと思います。お互い若かったあの時、皆様と恋人の方との愛の語らいは世界からまったく孤絶した場所で行われていたのではなく、むしろ公衆の面前で堂々行われていた、しかしながら、周囲の大人たちの心遣いによって、あの美しい時間が存在し得たのだと。

 そのことに思いを致しますと、私自身も大人と呼んで差し支えない年齢になったこともあり、これからは見守られる側から見守る側へ、前途ある若者たちの健全な恋を育むべく、なるべくあちらさんの視界に入らず、見て見ぬ振りをし、慎み深い配慮を発揮するべき時が来た、こう思い至りました。そうして視線を合わせず、ただ前のみをまっすぐ見つめて二人のそばを走り去り、私は帰路についたのでした。

 最後になりましたが、日本のエレクトロ・ミュージックの歴史に残る名演をご紹介したいと思います。1985年6月15日に国立競技場で開催された音楽イベント「All Together Now」に、スペシャルバンドを編成して登場したユーミンのパフォーマンスです。バックに坂本龍一、高橋幸宏、高中正義などを揃えた豪華メンバーもさることながら、始終声が震えているユーミンの歌がスリリングで最後まで手に汗握ります。

 季節の変わり目です。皆様方におかれましても、どうぞご自愛くださいませ。四月になりましたらば、また更新して参りたいと存じます。


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丸山 篤郎
ありがとうございます。皆さんのサポートを、文章を書くことに、そしてそれを求めてくださる方々へ届けることに、大切に役立てたいと思います。よろしくお願いいたします。