「趣旨・実感を読む」ということ

「過去問が大事」。「出題趣旨、採点実感が大事」
非常によく聞く話ですが、合格者の「過去問をやる」、合格者の「趣旨・実感を読む」と、不合格者・勉強がうまくいっていない方の「過去問をやる」、不合格者・勉強がうまくいっていない方の「趣旨・実感を読む」には、大きな差があると感じます。
今回は、後者の「趣旨・実感を読む」について、noteにしてみようと思います。
それでは、はりきってどうぞ!

司法試験では、試験終了後しばらくすると、出題趣旨、採点実感が公表されます。ちなみに、以前はヒアリングという資料もあり、公表されていました。
出題趣旨では、「こういうことを聞きたかった」「こういう思考をとってほしかった」という出題者のメッセージを読み取ることができます。
採点実感では、「こういうことを聞きたかったし、こういう思考をとってほしかったわけだけども、実際の答案の内容はこういうものだった」という採点者の感想を読み取ることができます。
つまり、出題趣旨、採点実感からは、「問題文をどのように読み、どのように考えれば、出題者の意図通りの答案=合格確実な答案を作成することができるのか」を学ぶことができることになります。そのうち、出題趣旨との関係では理想とする考え方や答案の作成方法を、採点実感との関係では実際の受験生相場としての考え方や答案の作成方法を学ぶことができます。

ということは、「合格するために出題趣旨、採点実感を読まない手はない」ということになります。しかし、実際の受験生と接すると、「読んでない」「読んだけど覚えていない」「読んだけど答案作成に反映させられていない」という方が多い印象です。
ゲーム等では「攻略本を片手にストーリーを進めるなんておもしろくない!じっくり自分ひとりの力で進めるんだ!!」と思うのは当然かもしれません。そして、司法試験も同様に、「じっくり自分ひとりの力で進めるんだ!」と思うのであればそれで構いません。
しかし、ゲーム等と違って、「最速で合格、最高効率で合格、確実に合格」を目指すのであれば、攻略本=出題趣旨、採点実感は必読というべきでしょう。

ここで、注意しておきたいのは、出題趣旨、採点実感の記載は、抽象的なもの、具体的なものなど、様々であるということです。
抽象的な記載は、汎用性が高い=別年度にも役立つものの、イメージが湧かなければ、「読んだけど覚えていない」「読んだけど答案作成に反映させられていない」という結末になりかねません。
一方、具体的な記載は、個別具体性が強い=別年度に役立ちにくいものの、イメージは湧きやすいので、それでもなおできていない場合、「読んでいない」ということがはっきりします。

今回は、後者の具体的な記載を紹介しようと思います。
以下の記載は、最新の令和5年司法試験刑事系第2問(刑事訴訟法)の出題趣旨の一部となります。

【実況見分調書①】は、……論述に当たっては、まず……321条第3項により……証拠能力が付与されるという本調書全体の性質を論ずる必要があろう。その上で、……甲の供述……の部分の証拠能力……の有無を論じる必要がある。【実況見分調書②】についても、……まず……321条第3項の適用を論じた上で、Vの供述を記載した部分の証拠能力……の有無を論じる必要がある。

さて、「実況見分調書の証拠能力を検討する場合の答案の書き方・構成」を読み取ることはできたでしょうか?
まず、全体について321条3項を検討し、次に、ある部分の伝聞証拠該当性を別途検討するという流れになりますね。
では、当該部分の採点実感の記載を見てみましょう。

「一応の水準」に達していると認められる答案
……伝聞証拠の意義や実況見分調書の……321条第3項該当性に関して一応の理解を示し、各実況見分調書の要証事実を認定した上で結論を導こうとしているものの、要証事実を正確に捉えられていない答案、要証事実を認定する論拠が欠落あるいは不十分な答案……である。
「不良の水準」にとどまると認められる答案
……実況見分調書の伝聞性に一切触れないもの、各実況見分調書の要証事実の検討が全くなされていないもの……など、およそ伝聞法則を理解していないとしか評しようのない答案である。

いかがでしょうか。
注目すべきは、一応の水準レベルにおいて、「一応の理解を示し」「導こうとしている」となっており、結局、「正確に捉えられていない」「欠落あるいは不十分」と指摘されている点でしょう。
つまり、一応の水準レベルの答案でも、実際の受験生相場は不十分な部分があるということになります。

さて、ここで合格者と不合格者・勉強がうまくいかない人の差が出てくると思います。
それは、前者の「実況見分調書の問題を書いた」と、後者の「実況見分調書の問題を書いた」の意味が違うという点です。試験終了後に「〇〇を書いた」という感想が飛び交う部分ですね。
つまり、前者の答案は一応の水準を超える表現ぶりとなっている一方、後者の答案は一応の水準を超える表現ぶりになっていないということです。

そこで、実際に実況見分調書の問題について、一応の水準レベル以上の答案を書くことができるのかどうか検証が必要になります。
ここにこそ、「趣旨、実感を読む」勉強が登場します。

まず,実況見分調書全体につき,……321条第3項が規定する要件を満たせば伝聞法則の例外として証拠能力が認められることを前提に,各別紙に関し,要証事実との関係で,更なる要件該当性を検討する……。

上記記載は、平成25年司法試験刑事系第2問(刑事訴訟法)からの引用となります。
そうです。最新の令和5年の出題趣旨は、平成25年と「全く同じ書き方・構成・思考で説明」されているのです。
つまり、平成25年の過去問の趣旨、実感を読み、自己の答案作成術、特に、「実況見分調書の証拠能力を検討する場合の答案の書き方・構成」を固めておけば、令和5年の受験生は試験会場で一応の水準レベル以上の答案を作成することができたといえるでしょう。

このように、ある個別具体的な論点の答案の書き方を出題趣旨、採点実感から学ぶことが合格につながります
出題趣旨、採点実感を読んで勉強する際のやり方として、もっともイメージがつきやすいところかと思いますので、ガンガンチャレンジしていただければと思います。

今回のnoteは以上となります。
また、次回のnoteもよろしくお願いいたします!

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