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メリハリ・強弱ある論文答案の書き方

「答案の書き方に沿って書くと時間内に書き終わらない、添削者から書きすぎって言われる・・・」という悩みを持つ受験生に向けたnoteを書いてみようと思います。
それでは、はりきってどうぞ!

法解釈上の重要な事項については手厚く論じ、そうでない事項については完結な論述で済ませるなど、答案全体のバランスを考えた構成も必要であり、主要な論点について結論を導くに当たっては、法解釈論を展開して判断基準となる規範を定立し、その規範に具体的事実を当てはめるという論述が求められる。

令和5年司法試験の採点実感(刑事系第1問)2頁

最新の採点実感からの引用となりますが、同様の指摘は毎年されています。
上記指摘からも分かる通り、「メリハリ・強弱ある内容の答案は、合格するための要素の1つ」といえるでしょう。
もちろん、受験生としては、「分かっているけれどもそれができないんだよ・・・」ということだと思います。

そこで、「メリハリ・強弱ある内容の答案を作成するための論文答案の書き方を事前準備しているか」が大事になってくると思います。

まず、丁寧に論じる場合の答案の書き方は具体的にイメージできているでしょうか?
例えば、ある要件を検討する際に、「問題提起→規範定立→当てはめ→結論」を実行する、問題提起の際は「事実を踏まえて、問題提起」、規範定立の際は「理由付けを踏まえて、結論としての規範を定立」、当てはめの際は「事実の抽出とその評価」を実行するといったことが考えられるでしょう。具体的には、刑法における因果関係が問題になる場面で以下の論述が考えられます。

 上記実行行為と結果の間に第三者の行為が介在しているため【事実を踏まえて】、因果関係が認められるか【問題提起】
 因果関係は、重い結果を行為に帰責できるかという法的評価の問題である【理由付け】。したがって、因果関係の有無は、行為の危険性が結果へ現実化したといえるか否かにより判断すべきであると解する【結論としての規範を定立】
 本件では、上記実行行為により死因を形成している【事実抽出】。つまり、上記介在事情は結果発生を早めたにすぎない【事実評価】
 したがって、上記実行行為の危険性が結果へ現実化したといえるから、因果関係が認められる【結論】

次に、簡潔に論じる場合の答案の書き方は具体的にイメージできているでしょうか?
例えば、ある要件を検討する際に、「当てはめ」としての「事実の抽出」と「結論」の指摘だけ実行するといったことが考えられるでしょう。具体的には、同じく刑法の因果関係について、問題文の事実が「甲がVの胸をナイフで突き刺したことにより、Vは失血死した」等となっている場面で以下の論述が考えられます。

甲がVの胸をナイフで突き刺したことによりVは失血死したから【事実抽出】、因果関係が認められる【結論】

おそらく、上記悩みを持つ受験生でも、「その例ならメリハリつけて論じられるよ」と思うでしょう。
しかし、そこで考えてみたいのは、「どのような判断基準でメリハリの要否を判断しているのか」という点です。
「前者は論点で、後者は論点じゃないから」と考えることが多いかもしれませんが、これをさらに「抽象化、汎用化」させる必要があると思います。
論点というのは、ある条文をある事例に適用する際に適用できるとの見方、適用できないとの見方が現れる部分です。だからこそ、論理的で説得力ある説明が求められるため、上記丁寧な論述をすればするほど点数につながっていくと整理できるでしょう。
ということは、「教科書等で”論点”という名称で勉強したわけではないけれども、この問題文にこの条文を適用していいか疑問が生じるよなという部分は丁寧な論述を、この問題文は誰がどう見ても適用していいかどうか明確だよなという部分は簡潔な論述を」となるでしょう。ポイントは、「論点として勉強していなくても妥当する視点」だということです。

上記視点を持ち、実行するとの戦略をとった場合、下記事例を前提にした下記論述例を考えてみましょう。

Vと共に大学の教室で休み時間を過ごしていた甲は、Vがトイレに行った隙に、机の上にあったV所有の財布内の現金を同財布から取り出し、自身のズボンのポケットに入れた。
「窃取」とは、被害者の意思に反して財物の占有を自己または第三者の下に移すことをいう。本件では、Vと共に大学の教室で休み時間を過ごしていた甲は、Vがトイレに行った隙に、V所有の財布内の現金を同財布から取り出し、自身のズボンのポケットに入れた。つまり、Vの意思に反して現金を自己の下に移したといえる。したがって、「窃取」に当たる。

上記事例が「窃取」に当たるとしていいか疑問が生じるものか、誰がどう見ても「窃取」に当たることが明確なのか、どちらでしょうか?
おそらく、ほとんどの受験生が前者であると考えるのではないでしょうか?
そして、前者であると考えるのであれば、以下のような論述になるはずです。

甲は、Vがトイレに行った隙に、V所有の財布内の現金を同財布から取り出し、自身のズボンのポケットに入れた【事実抽出】。したがって、当該行為は「窃取」に当たる【結論】。

たしかに、「窃取」の定義を示さないのは怖いと感じるかもしれません。
しかし、「そこに時間をかけたために、丁寧な論述を展開することで得点を大きく伸ばすことができるであろう部分を取りこぼす方がよっぽどこわい」という感覚に敏感になる必要があると思います。

さて、以上をまとめておくと、

①丁寧に論じる場合の答案の書き方を固めておく
②簡潔に論じる場合の答案の書き方を固めておく
③①②の書き方を実行する
④配点の大きい部分をとりこぼすことのこわさを知る

となるでしょう。

そして、もう1点大事なのは、

⑤問題文の具体的事実を見ながら、それが丁寧に論じることを求める事実なのか、簡潔に論じればよい事実なのか見抜くことができるようになる

でしょう。
つまり、上記窃取の事例も、窃取が問題となる事例(例えば、その場にVがいる、現金よりも大きい財物である、ポケットに入れていない等)を念頭にしているからこそ、簡潔に論じるべきだろうと判断していることになるはずです。
このように、常に「それを論じるのはどんな事例なのか」を正確かつ丁寧にストックしていく勉強が必要となります。

ということで、今回のnoteは以上となります。
引き続きがんばっていきましょう!!

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