海外で働く際に求められる「英語力」とは
自己紹介
ご覧いただきありがとうございます。
新卒で食品会社に就職し、営業職を経験したのちにアメリカの子会社に赴任。約10年間海外駐在しています。自分自身への備忘録も兼ねてアメリカでの体験や自身の考えをnoteに残していきたいと思います。
同じ境遇やこれから海外に挑戦したいという方にとって参考になる情報を発信していきたいと思っています。
はじめに
海外駐在といってまず最初に連想されるのは英語ができないと駄目ということではないでしょうか。実際、私の勤務先でも英語ができるかどうかは主要な駐在候補者選定基準になっていると感じます。
しかしながらグローバル企業ならまだしも、国内事業中心の会社だとそもそもその英語力を評価する仕組みが整っていないということが多いのではないでしょうか。結果としてTOEICのスコアで判断したり、評価出来ないから外部から海外駐在経験者を雇い入れることが多いのではないかと思います。
その方法自体は否定しませんが、明確な選定基準を持たず英語ができるということに重きを置いて判断してしまうと、思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性があるのではないかと感じています。
TOEICで英語力を測るのは限界がある?
私は英文学科卒業で、駐在するまでのTOEIC最高スコアは800点でした(現在は970点)。800点となるとそれなりに英語を使いこなせるレベルと認識されると思いますが、当時の私は全く英語を話すことができませんでした。正しく言うとほとんど英語を聞き取ることができなかったためにコミュニケーションを成り立たせるレベルにいませんでした。
それでも国内事業中心の会社の中では、TOEICのスコアが高い=英語ができるんでしょ?という認識でした。結果として(その誤解を利用して?)駐在という権利を得ることはできましたが、実力が伴っていなかった為に赴任後に相当に苦労しました。
私の中ではTOEICは「正しい英語がどれか分かりますか?」を問われるテストという認識です。ですので、私のように英語に対して言語ではなく勉学という取り組み方でアプローチしても点数がとれてしまう側面もあります。
私の場合はまだまだ日本人スタッフが多い時期での赴任でしたので、徐々に英語力をつけていく時間的余裕がありましたが、アメリカ人主体となった今、あのレベルの英語力で放り込まれたら・・・考えるだけでゾッとします。下手をしたら潰れていたかもしれません。私の例からもTOEICのスコアだけで判断してしまうことの危険性がお判りいただけると思います。
どうやってTOEICのリスニングで満点を取れるようになったか気になる方はこちらの記事をご覧ください。
英語力とは
英語力と一言にいっても求められるものは状況によって大きく異なると思いますので、今更ながらここでの「英語力」の定義を設定させて頂きたいと思います。
海外で仕事をしていくにあたって、ネイティブスピーカーのように英語を自由自在に使いこなせればもちろんそれに越したことはありません。しかしながらより重要なのは圧倒的にビジネスパーソンとしての基礎能力だと感じます。そういう意味では英語は自身の業務におけるパフォーマンスを担保するためのツール=手段という位置づけが適切だと感じます。
手段というのは本来目的を達成するために活用されるべきものですが、手段自体が目的化されてしまうのはビジネスシーンではよくあることだと思います。かといって英語が全くできないとなると基礎能力を発揮するどころの話ではないのでそれも論外です。
結果的にそれがいわゆるビジネス英語と言えるのかもしれません。そこまでのレベルに達したら、更に英語力を高めていくよりビジネススキルを高めることの方がアウトプットの最大化に繋がってくると感じます。
英語ができないこと、英語力で人を採用してしまうことの危険性
先ほど、私の事例で十分な英語力を身につけないままで海外で就業してしまう危険性はお伝えしましたが、これが経営陣レベルだとリスクレベルが格段に高まります。
残念ながら悪意を持ってLanguage Minority(非英語話者)を騙して利用しようとする人は一定数います。それは社外だけでなく、時には味方であるはずの社内の場合もあるでしょう。
特に日本人は基本的に性善説、他人に迷惑をかけることをよろしく思わない、人からどう見られるかを非常に重要視する国民性ですので、言われていることがよくわからないままに、何とかその場をやり過ごすために「Yes」と答えてしまうリスクがあります。かくいう私もそうでした。
幸い、私はマネージャーレベルでの赴任でしたので、大した決裁権はなく大きな案件は上位職決裁者に説明するため、まず自分自身が確実に理解をする必要がありました。しかしもし自身がそれなりの決裁権を持っていたら、なんとなくわかったつもりで判断していた可能性を感じます。わかっていないことを部下に聞くこともなかなか勇気のいることだと思います。
いずれにせよ経営レベルともなると判断は事業レベル、全社レベルとなります。内容が理解できないまま判断をすることの影響は当然甚大です。
こういったケースでは口頭で理解しようとせず、必ずメールや文面で送ってもらうことが重要です。言った・言わないの議論になると残念ながら勝ち目はありません。ですので時間を取らせて申し訳ないと思う必要はありません。英語を話しに来ているのではなく、中・長期的な視野を持って正しい判断をするために駐在員は派遣されています。プライドを持つ部分を間違えてはいけません。
そうなるとやはり英語ができる人の方が良いということになってきてしまいますが、選定する側がしっかりとした選定基準を持っていないとそこにも危険性が潜んでいます。
前述したビジネスパーソンとしての基礎能力と、ツールである英語力を掛け合わせると以下4パターンとなります。
仕事ができる x 英語ができる
仕事ができる x 英語ができない
仕事ができない x 英語ができる
仕事ができない x 英語ができない
一般的には1→2→3→4もしくは1→3→2→4の順で海外での仕事の適性が高いと考えられるのではないでしょうか。もちろん大まかに言ってそういう傾向はありますが、私の中では落とし穴にハマるリスクを考えると1→2→4→3となります。
前述の通り英語は基礎能力を発揮する手段であり、目的ではありません。
しかし3.のパターンで、もし基礎能力が足りていないがために思ったようなパフォーマンスを発揮できなかった場合、自分には英語があると手段が目的化する可能性が出てきます。そうなってしまうと英語が逃げ道となってしまい、ビジネスパーソンとしての成長を阻害する要素となってしまう可能性があります。
ここにもう一つの要素、マインドセットが入ってきます。つまりスキルセットx 英語 x マインドセットというかけ合わせになります。
上手くいかなかった場合に自分自身を責めることは簡単ではありません。特に日本で成功体験を積み重ねてきた人にとって、自己評価を見直すことは非常に難しいことだろうと思います。
そのような中、うまく行かない原因をポジティブな自責思考で考え、自身の行動を変えていくマインドセットを持っているかどうかが重要となります。
つまり3.(仕事ができない x 英語ができる)が1.(仕事ができる x 英語ができる)になっていくかどうかはマインドセット次第とも言えます。
もちろんその可能性にかけるという選択肢もありますが、それが叶わなかった場合、本人の成長が阻害されてしまうことと同時に外から見て状況が見えにくくなってしまうブラックボックス化現象が起きてしまう可能性があります。なぜなら多くの海外駐在員は一人で複数の役割を担っており、役割が重複することも少ないので、問題が起きていてもそれに気づいているのは自分だけというシチュエーションが多いからです。そして英語が出来るのでその状況を隠すことができます。
ちなみに4.(仕事ができない x 英語ができない)はある意味逃げ場がありませんので、否が応でも自分の問題に向き合う必要が出てきます。またブラックボックスを作ることも難しいだろうと思います。リスクという観点でいうとコントロール可能範囲だということができます。
たまたま配属先の適性がなかったために「仕事ができない」という評価になってしまうこともあります。しかし、海外赴任のような大きな環境の変化によって適性を発揮する可能性もあります。そこでもマインドセットの働きは軽視できません。
もちろん1.や2.の人材がいるなら4.を選ぶ理由はないとは思いますが。
ここでの対策はしっかりとしたメンター・指導役をつけて、安易な道に逃げてしまうことを防ぐことだと思います。またブラックボックスを作れない仕組み(内部統制)を構築していくことも極めて重要です。
何より赴任者に何を期待するか(目的)を明確化することで、自ずとそれらが選定基準につながってきます。そしてそれをしっかりと赴任前に伝えて目的意識・使命感を醸成することが重要です。
最後に
最後までご覧いただきありがとうございました。
典型的な日本の英語教育の犠牲者(勝手に勉学として英語にアプローチしただけですが)の私が、アメリカで四苦八苦しながらビジネスを通して感じてきた英語力に対しての考えをまとめまてみました。
海外で働きたいと英語習得に取り組んでいらっしゃる方の参考になりましたら幸いです。
英語力で信頼や尊敬を勝ち取ろうと思うと、並大抵の努力では済みませんし、英語圏であればそもそも英語を話せて当たり前と思われてしまう節もあります。逆にいうと非英語話者の我々はマイナスからのスタートです。
信頼や尊敬を勝ち取って、パフォーマンスを最大化していくにはやはり基礎能力を高めていくこと、無駄なプライドは捨てて適切なマインドセットを育むことに尽きると思います。