資金調達のお知らせと、Thingsが実現したい未来について
この度Thingsはグローバル・ブレインをリードインベスターとして、SMBCベンチャーキャピタル株式会社、静岡キャピタル株式会社、新生企業投資株式会社、PKSHA Capitalおよび既存投資家であるANRIから約2.2億円の資金調達を実施しました。
2021年9月の会社設立から14ヵ月を経て、Thingsは次のステージに入ります。これまでお客様や株主、そして優秀なメンバーに支えられて何とかここまでこれました。これまでは露出もチームもミニマムでやってきましたが、これからは周囲を巻き込んで本格的にチーム戦でコトに臨んでいくフェーズです。折角の機会ですので、Thingsのミッションや事業についてお伝えさせてください。
壮大に空回りをしている製造業のIT支出
パンデミックを起点としたリモートワーク推進や、サプライチェーン断絶に対する打ち手としてのERP・PLM*刷新を背景に、国内製造業のIT支出は増加傾向にあります。*PLM=Product Lifecycle Management。製品をライフサイクルを通して管理する概念、あるいはそれを実現するソフトの一般名称
2026年度には6兆9,450億円と2021年度比で36.2%増になることが予測されており、規模・成長率共にトップクラスです。
一方、その支出の約8割は暦年のカスタマイズで蓄積した技術的負債の代償としてレガシーシステムの保守・運用に費やされており、投資額に対し適切な効果を得にくい状況が発生しています。
*出展:経済産業省「DXレポート」
現場で発案された機能を実装しようとしたら見積りに3週間かかった挙句、開発費用が300万円と判明したため断念。
システム間連携を試みたもののデータの持ち方が異なる上にシステム全体を理解している人は既に退職。要件理解から始め1年越しのプロジェクトに。些細なデータ更新を自動化したかっただけなのに大ごとに。
パッケージソフトをカスタマイズ導入した結果、アップデートにも高額なカスタマイズ開発が必要になり、2~3年に一度しか新機能の恩恵を受けられない。
技術的負債はこうした形で具体的なコストとして跳ね返ってきます。このような背景からレガシーシステムの刷新が必要な事は誰もが理解していますが、あまりにも大変なのでしばし見て見ぬフリをされてきました。しかし、目をそむけたくなる問題は往々にして本質的だったりします。
上記の様な背景からメーカーのDX予算は限られています。例えば100億円の売上高のメーカーなら年間のIT予算はおよそ1億円*、8割の保守費用を除く約2千万円がDX予算(攻めのIT)に振り向けられます。しかしこの規模の企業のデジタル”トランスフォーメーション”が3千万円で出来るわけがありません。
*一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)「企業IT動向調査報告書 2022」
製品開発の現場が抱えているイシュー
製品開発は日単位で更新される要件(仕様)、図面、調達状況、製造状況などを担当者が正確に把握し、高度な擦り合わせをしながら進められます。担当者は組織の人間関係の中で同時多発的に更新される製品開発状況をタイムリーに入手するという大きな負荷がかかっています。
また、こうした情報の取扱には厳格な正確さが求められます。なぜなら型番が一文字でも違えば別の部品を表現するため、部品の誤発注に繋がります。また図面のバージョンを取り間違えれば形状が異なるため、試作しても部品同士が組み合わず、手配コストと材料費の無駄が発生します。製品の安全に関わる問題が内包されたまま出荷されれば最悪の場合リコールに発展します。後工程になればなるほどエラーが拡大・再生産され影響が大きくなる製造業の特徴があります。
上記課題は上場企業クラスであれば高価なPLMシステムを導入(あるいは内製)して管理されますが、ほとんどの中堅メーカーにはそこまでの資金的余力は無く、エクセルや共有フォルダによるマニュアル連携でカバーされています。Web業界的に表現するならgithubの無い世界で、ソースコードのSSOT(Single Source of Truth=信頼できる唯一の情報源)不在の中でプロダクトを作っている様なものです。これはしんどい。
ハードウェア開発をなめらかにするプラットフォーム「PRISM」
PRISMはノーコードで自社に合わせた部品データモデルを構築し、製品開発情報を一元管理するためのソリューションです。バージョンごとの部品表(Bill of Material)を土台に、各部品に対して図面、仕様、原価、在庫、調達データ、品質情報、製造情報などを紐付ける事で製品マスタを構築、製品開発における部門間の連携をスムーズにします。
プロダクトはもの凄い勢いで進化しておりますが、例えばこんな事ができます。
サービス部門が受けたクレームに基づき設計部門が品質課題のある部品を特定し、全製品で代替品に差し替える
10万点のアイテムの中から特定の条件を満たす部品を瞬時に見つける
過去の製品バージョンを表示させ、顧客に供給すべきサービスパーツを特定する
PRISMが目指す世界はSalesforceの様に複数チームが製品データをクラウドで共有し、githubの様に正確なバージョン管理ができ、notionの様に簡単にデータベースを構築できる製品開発プラットフォームです。(具体的な話は面談などで個別にお伝えさせてください)
Thingsのこれから
ここ一年が大きく伸びるポイントです。会社としての最重要目標は深いカスタマーサクセスの実現。Vertical SaaSなのである特徴を持った顧客の課題を深く解決できていれば、それは同業他社でも再現可能です。マーケットの大きさ、セグメントの絞り込みは圧倒的に自信があるので、ユーザー課題の発見→開発→リリースのサイクルをいかに愚直に・素早く回すかが鍵となります。
そしてPRISMが扱っている部品表は加工組立型メーカーにおいては基幹データです。部品表をキー情報とする事で複数プロダクトを展開しやすく、所謂コンパウンド戦略型の進化を遂げていきます。業界の中でどのデータを最初に抑えるかは中長期の成長ファクターに大きく作用しますが、部品表は製造業におけるコーナーストーンだと考えています。次世代の製造業基幹システムを最初から視野に捉えながら事業を構築していきましょう🔥
採用しています!
Thingsではエンジニア、セールス、デザイナー、コーポレートと様々なポジションにおける創業メンバーを募集しています!今ジョインすれば全員漏れなく一桁目社員なので、組織のカルチャーを方向付ける超重要ポジションとして力を入れています。
採用ページ:https://things-inc.com/recruit
オープンポジションも設けているので、上記に当てはまらないけどThingsには興味あるよ、という方はぜひお話ししましょう!
twitterのDMも開放していますので、お気軽にお声がけください🙇♂️
https://twitter.com/a28szk
最後に-そもそもなぜ資金調達をするのか?
外部から資本を受け入れるということはミッションの共感を土台に共依存関係になるという事です。株主が増えるにつれてこの共依存関係は増え、やがてIPOすればさらに多くの株主を受け入れる事で企業は社会性を帯びていきます。
Thingsは日本の基幹産業である製造業の最重要データを扱っている事業であり、多くの人が直接的・間接的に影響を受けます。こうしたテーマ性から、創業時にVCから資金調達をしてIPOを目指す選択を取りました。
まだピッチデックしか無かった頃に出資してくれたANRIに続き、瓜本さんの元ユーザーとしての共感から出資を決めてくれたグローバル・ブレイン、SMBCベンチャーキャピタル株式会社、静岡キャピタル株式会社、新生企業投資株式会社、PKSHA Capitalが今回仲間に加わってくれました。
今回のラウンドでは40社ほどお会いさせて頂きましたが「製造業は時間がかかる」「トラクションが不十分」とあらゆる理由で否定され、断られ続けてきました。しかし一部でも熱狂的に事業を応援してくれる人の存在は本当に心強く、議論を重ねる中で改めて実現したい世界と、そこに至るまでの道のりを熟考する良い機会となりました。
ANRI鮫島さんにはしんどい時でも楽観とギャクを提供してくれ、グローバル・ブレイン瓜本さん、林さんには元ユーザー兼メンターとしてあらゆる角度から相談にのってもらっています。本当に感謝しかありません。
エクイティ調達は「信用の前借り」だと思っています。未来志向のスタートアップは信用貯金を先に切り崩して調達する所から始まるので、今度は成長角度を上げて事業を育てていく事でお返ししていきたいと思います。やっていくぞー🔥