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【ロック名盤100】#46 Van Morrison - Astral Weeks

 今回紹介するのは、ヴァン・モリソンが1968年11月にリリースした「Astral Weeks」だ。ポップ、ブルーアイドソウルなどのジャンルに形容されることの多いヴァン・モリソンだが、彼は元々ガレージロックバンド、ゼム(「グロリア」で最もよく知られる)出身。本作もフォーク、ブルースに接近したルーツ・ロック志向であるため「ロック名盤100」として取り上げることにした。このアルバムは言うまでもなくヴァン・モリソンの最高傑作である。
 曲のクオリティ、詩的で自由な歌詞、アコースティックな世界観に統一されたアレンジ———どこをとっても素晴らしい。アメリカの匂いが強く薫るルーツ・ミュージック、さらにはジャズやクラシック方面などとも融合を試みたサウンドだ。質素なようで高尚な雰囲気も漂う、唯一無二のバランス感覚。ヴァン・モリソンの天才極まる、といったところか。

1 Astral Weeks
2 Beside You
3 Sweet Thing
4 Cyprus Avenue
5 The Way Young Lovers Do
6 Madame George
7 Ballerina
8 Slim Slow Slider

 表題曲「アストラル・ウィークス」、「スウィート・シング」などに代表されるように、本作のほとんどは美しいフォーク・ロックに占められる。ただそのフォーク・ロックの中でもストリングスを含む「キプロス・アベニュー」「マダム・ジョージ」やソプラノサックスが印象的な「スリム・スロー・スライダー」、ジャズ色が濃い「ザ・ウェイ・ヤング・ラヴァーズ・ドゥ」などアプローチは多彩。
 だけど凄いのが、全てのトラックにヴァン・モリソンの力強いボーカルがあるということ。これはこのアルバムだけではなく彼のスタイル全体の話としてだが、この繊細な曲調と芯を持った力強いボーカルがマッチしているというのが彼の最大の魅力だと思う。たとえば哀愁漂うバラードなら他のアーティストだと寒色系のような感覚を覚えるけど、ヴァン・モリソンはそんな曲も暖色系にしてしまうパワーがあると思う。
 フォーク、ブルース、ジャズ、クラシックなどを融合したソングライティングとソウル的な歌唱によって、結果的には極上のルーツ・ロック風に仕上がっている。興味深い融合だし、全く古臭いようには思えない。心地良いけど揺さぶられるこのサウンド、休日なんかに聴いてみたらどうですか。

↓「アストラル・ウィークス」

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