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古典的名著≠お上品
「古典的名著」と呼ばれる作品を読んでみると、思いの外、著者が毒を吐きまくっていることが分かる。
ホッブズの『リヴァイアサン』はスコラ学者を蛇蝎のごとく嫌っているし、
ロックの『統治二論』はロバート・フィルマーへの皮肉を随所に含んでいるし、
レーニンの『帝国主義論』はカウツキーを滅茶苦茶こき下ろしている。
(もちろん、私の読書範囲外にも、こういう「毒吐き古典」はたくさん存在することだろう)
個人的には『統治二論』が面白かった。
絶対的なキリスト教信仰という土台に徹底した理性的推論を加え、後世にまで大きな影響を及ぼしたあの「抵抗権」の思想すら導き出しつつ、フィルマーの王権神授説をメタメタに批判する。
「アダムの時代から、家父長となる長男一人にだけ正統な王権が相続されてきたというなら、なんで世界には複数の君主が存在するんですかね? おかしくない? フィルマーさん、そこのところどう考えてる?」
「神は人間に『増えろ』『自己保存しろ』と命じているのに、そのために必要な食べ物や衣服や家を、不当に収奪するようなカッスい君主がのさばっているのは、神意に反すると思わない? ってか、そんなクソ君主を放置するのは、神が人間に与えた理性にも反すると思うでしょ? 驚くべきことに、我らが著者フィルマーは、そう思っていないみたいだけど……」
基本的には終始こんな感じで、フィルマーに対する(皮肉と嫌味たっぷりの)批判が延々と続いている。
文庫で600ページくらいあるんだけど、最後まで皮肉たっぷりだ。
よくもまあ、こんなに手を替え品を替え悪口を言い続けられるものだ、と感嘆すらしてしまう。
「古典的名著」と呼ばれる本は、読んでみると存外人間臭いのである。
もちろん、内容自体も興味深いんだけどね。
どの著述も、前提から導き出される論理が非常に鮮やかだ。
ナイフのような論理の鋭さを味わいたいときにも、古典的名著はおすすめである。
「古典とかお堅そう」
「つまらなそう」
……と思っていた人は、何かの機会に古典を手にとってみてはいかがだろうか。
何か誰かに激しい不満を感じ、現状を変革しようとした人間の思考と感情の足跡が、そこにはある。
まあ、ぐちゃぐちゃ言ったけど、要するに「古典面白いよ」ということです。