手で見て知る「触知案内図」
紙の地図の大前提
紙の地図は基本的に「目が見える」ことが前提です。地図のデジタル化のおかげで、紙の地図での弱点や限界が補われるようになりました。
とは言え、施設毎の地図はデジタル化とまではなかなか行きません。多くの人が利用するような施設、例えば駅でしたら写真のような「触知案内図」が掲示されていることがあります。
また、空港ではインフォメーションカウンターに行けば係のかたが案内をしてくれますし、点字が書かれた案内冊子が置いてあったりもするようです。
「触知案内図」の規格
「触知案内図」にも規格があります。
国内では、JIS T0922: 高齢者・障害者配慮設計指針-触知案内図の情報内容及び形状並びにその表示方法 というものが平成19年に制定されました。地図の素材、サイズや設置する方法、また構成や表示方法といった"書き方"などが決められています。
また国際的な規格もあります。
国際規格 ISO 19028: アクセシブルデザイン-触知案内図の情報内容、形状及び表示方法という名称です。この規格、実は日本からの提案で発行されました。
なお、視覚障がい者と晴眼者、それぞれ被験者になってもらい触地図についての実験をした結果によると健常者と視覚障害者で知覚内容が異なったそうです。「触知案内図」は先ほどの写真で見て頂けると判るように、街中には視覚障がい者と晴眼者が一緒に使えるようになっているものが多くあります。視覚障害者の知覚内容に沿った表示・表記方法、また晴眼者向けには晴眼者向けの知覚内容に沿った表示・表記方法にしなくてはなりません。
また視覚障がい者であっても、点字を読むことができない人もいます。(中途失明者など)
よって点字のみの触知図ではなく、利用者の特性に応じて音声案内も必要となります。
触地図の作成
商業施設のように大きな掲示ではなく、個人が触地図を作るのであれば、立体コピーという方法があるそうです。
最近は3Dプリンタもありますが、こちらは先ず、通常のプリンターで地図を白黒印刷します。その時に「カプセルペーパー」という特殊な用紙を使います。その用紙を立体コピー機にかけると、黒い部分が立体的に盛り上がります。
もちろん地図じゃなくても、イラストなどでも盛り上がるのでご自分の作品を触って体感してもらう、なんて事にも使えそうですね。
ただ、ちょっと立体コピー機と用紙のお値段がはるので、その為だけにだと難ですが‥。
また地図そのものの素材は、国土地理院が日本全国の3Dプリンタ用の地図データを提供、それをダウンロードして立体地図の使い方や立体模型、触地図の作り方を紹介しているウェブサイトを公開しています。
立体地図(地理院地図3D・触地図)
立体模型を作る(ダウンロード編)のページがおもしろいです。
アイデア次第で、お子さんの夏休みの宿題にも使える!かも?!
最後の写真は北九州市平尾台の3Dマップ。こちらは福岡県にある地図研究所さんが販売されています。毎年、平尾台でトレイルランニングレースがあり参加したさいに、同行した他のランナーさんに頂きました。
なお地図研究所さんはWEB店をYahoo!ショッピングに出店されていて、日本百名山他世界遺産などをジオラマ立体地図を、送料込500円となかなかお手頃価格で販売されています。
(別に頼まれたわけじゃないんですが、いい記念になったし良心的なのでご紹介)
地図研究所WEB店(ヤフーショッピング)
では本日はこれにて‥。
参考
・立体コピーシステムとはなんですか ( 情報通信研究機構 NICT)
・国際年次カンファレンス「SotM2017」レポート 視覚障がい者向けの“触地図”、OpenStreetMapを使って自動作成するシステム
・新宿区「ユニバーサルデザインまちづくりガイドラインを策定しました」
・RARC心理プロジェクト 2006年度第2回公開研究会「地図を「触って」読む」
・経済産業省「触知案内図の情報内容、形状及び表示方法」の国際規格が発行されました
(了)
ヘッダー写真 撮影地 ニュージーランド ネルソン ©moya
最後までご覧いただきありがとうございます! 現在放送大学でPDFのアクセシビリティを卒業研究中。noteはそのメモを兼ねてます。ヘッダー写真はnzで私が撮影しました。 【ご寄付のお願い】有料noteの売上やサポートはnzクライストチャーチ地震の復興支援に使わせて頂いております。