ウェブサイト上でみられる文字拡縮や読み上げツールについての調査(1)
公共機関のウェブサイトをみていると、ヘッダー部分にウェブアクセシビリティの支援として文字拡大・縮小切り替えボタンや音声読み上げボタンが付いているのを見かける。
私自身は文字拡大や音声読み上げツールの組み込みは不要と考えている。(特に、後者)
ウェブサイトを閲覧するときに音声読み上げが必要なユーザーは、その公共機関以外のウェブサイトも使っているだろうし、そこのページにたどり着くためには何らかの音声読み上げソフトなどを自分のPCにインストールして使っているだろう。スマートフォンやタブレット端末にもアクセシビリティ機能が付いているからだ。
文字拡縮についても、大きな文字にしたいユーザーは自分が見やすいように既に設定しているはずで、そういった個々の設定を阻害するような作りをせず、また音声読み上げがきちんとされるコンテンツを提供することのほうが重要だからだ。
ただ、文字拡縮や読み上げツールを付けている公共機関のウェブサイトは本当によく見かける。これまでデータとしてとったことがなかったので、霞が関の中央省庁を対象に調べてみることにした。
対象とした府省庁
首相官邸のウェブサイトと当該サイト内の「国の政策(政策情報ポータル)」ページに掲載されている府省庁のサイト 46サイトから、以下の条件に適合したもの。
・独自ドメインであること
・または独自ドメインの配下もしくはサブドメインであってもデザインが異なるもの
結果、44サイトを調査対象とした。
確認したページ
対象とした府省庁のトップページ
確認方法
目視による
調査日
2018年6月9日
調査環境 ※2018年6月12日追記
OS Windows10
ブラウザ Google chrome(バージョン: 67.0.3396.79)
調査結果
1. 文字サイズの切り替え
文字サイズの変更は殆どが2段階もしくは3段階に分かれた。
1)2段階‥20サイト
2)3段階‥16サイト
3)なし‥8サイト
それぞれで少しづつ異なる表記があった。
1)2段階の場合
・中/大
・標準/大
・標準/大きく
・標準/大きめ
・標準/大きい
・標準/拡大
基本的に既に表示されているフォントサイズをもう一段階大きくするかという比較的単純な切り替えなのだが、それでも6つの表現に分かれた。
「大」と「大きい」は同じと考えても良さそうだが、「大きめ」というのはより個々の感覚に近い表現ではないだろうか。
なお、切り替えることでのサイズを数値で表しているものはなかった。
例)図の左上 『中/大』(首相官邸) 左中 『標準/大きめ』(個人情報保護委員会) 左下 『標準/拡大(法務省)』 右上 『標準/大きく』(内閣府) 右下 『標準/大きい』(復興庁)
変わったものでは、1-1)『A』という文字をデザイン上2つの大きさで表記することで、大きくなることを示唆しているもの、また 1-2)スライドさせるものがあった。
例) 左 1-1)2つの大きさで表記(運輸安全委員会) 右 1-2)スライドさせる(防衛省)
2つの大きさで表記するタイプは、「文字サイズ変更」といったテキストがそばに無く、見ている側に考えさせるデザインであり、ウェブサイトの操作に慣れていない人にとっては判り難い。なおHTMLファイルを確認すると、この部分はリストタグで書かれており「小」「大」とテキストが入っているので音声読み上げソフトでは問題ない。
2)3段階の場合
・小/中/大
・大/中/小
・小/標準/大
・大きく/元に戻す/小さく
・標準/大/特大
・標準/大/最大
・中/大/特大
3段階の場合は7種類に分かれた。なお2段階で見られたようなデザインに依存する変わり種のようなものはなかった。
基本的に「中」もしくは「標準」はデフォルトで表示されている文字の大きさと考えていいだろう。「元に戻す」もデフォルトを指すのだろうが、若干判りづらい表現だと感じた。ここで、デフォルトの大きさを一番左に持ってくるか、あるいは中央にするかのパターンが見られた。
文字の大きさは
・左から順に大きくなる
・左から順に小さくなる
のパターンがあった。
3)なしの場合
なしの場合でも実は2パターンあり、後日記載する「ウェブアクセシビリティ支援ツール」があるので、その分特に文字の拡縮ボタンがない場合と、全くなしの場合と両方がある。
文字の大きさの切り替えで、実際のフォントサイズになっているかは現時点ば未調査だがそのうち調べてみたい。
それにしても「文字サイズの拡縮」だけでこれだけパターンが分かれていたとは。(これ大学の卒論にすれば良かった~と今頃思ってみたり)
というわけで、長くなりそうなので続きはまた次回に‥。
追記: 調査環境を書き洩らしていましたので追記いたしました。(2018年6月12日)
(次回へ続く)
ヘッダー写真 撮影地 ニュージーランド 南島西海岸 Ross Goldfields Information & Heritage Centre ©moya