メルカリの障害者雇用
今年の2月、メルカリに三枝浩基さんが入社された。
三枝さんは、聴覚障害者(Deaf)の陸上競技で活躍されているアスリート。聴覚に障害のある、ろう者の国際総合競技大会「デフリンピック(Deaflympics)」の2017年のサムスンデフリンピック(トルコ) 4×100mリレーで金メダルを獲得されている。
メルカリはスポーツ活動支援として、既に障害者車椅子バスケットボール選手の土子大輔さん、篠田匡世さんを採用(アスリート雇用契約)している。
「ステージは違ってもベクトルは同じ」プロ車椅子バスケットボーラーがメルカリに入社を決めた理由
三枝さんの100mの自己ベストは10秒95。ろう者の大会のみならず健常者の大会にも出場されている。スタートの時は、補聴器を使用しで音を聞いてからスタートしている。ろう者の大会では補聴器の使用は禁止で、ではどのようにスタートするかと言うと光刺激システムのランプで判断するのだそうだ。
(画像: 大宮ろう学校関東聾学校陸上競技大会ブログに掲載の「光刺激スタートシステム」)
メルカリ入社時の面接は、Google Docsを使用してやり取りを進めたとのこと。ろう者の会話として思い浮かぶのは手話や筆談だが、健常者にとって手話はハードルが高く、また筆談はどうしても書いている時間を要するし書き間違いなどもある。Google Docsはふだんからメルカリ社内で利用されているリソースなので、それを活用されたのだろう。
チャット形式と違い文書として残すこともできるので、簡単な加工で面接記録にもなる。ITが職場で活用される中、コミュニケーションをとる方法はいくらでもある。
障害者雇用促進法により、従業員が一定数以上の規模の企業(事業主)は、従業員に占める身体障害者・知的障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があるとされている。今年の4月1日から法定雇用率があがり2.2%となった。(「障害者の法定雇用率の引き上げについて」厚生労働省) 従業員を45.5人以上雇用している企業は、障害者を1人以上雇用する計算だ。
昨日のnote「ウェブアクセシビリティとマシンリーダブル」で、視覚障害者がどのようにウェブサイトをみているかの動画やスクリーンリーダーが文章を読み上げる例を紹介したように、知っていると知らないでは大きな差が出る。健常者が知れるのはほんの入り口ではあるかも知れないが、ゼロのままでは何も生まれない。職場の仲間に障害者がいたら? 「知る」から双方の世界が広がるのは間違いない。
ところで、最後に私の"知らなかった"ことによる失敗談をひとつ。
ある組織内でウェブアクセシビリティ講習会の司会兼講師をしていたときのこと。説明の中で何気なく
「障害をお持ちのかた」
という言葉が出てしまったのだが、あとに登壇した行政の障害者担当のかたにやんわりと
「障害は自分で選んで持っているものではない。『障害をお持ちのかた』という言い方は避けた方がいい」
とのご指摘を受けて恐縮した。ごもっとも。以来、この言葉は封印した。
参考:
・ 「デフ五輪陸上金メダルの三枝浩基が目指す夢 」東洋経済2018年4月28日掲載記事
・「聴覚障がい者との面接、どうやってコミュニケーションした? デフ陸上選手がメルカリに入社するまで 」<メルカリ「メルカン」2018年2月13日掲載>
・第52回全国ろうあ者体育大会(2018年9月 埼玉で開催予定)
・メルカリ 障がい者採用(一般事務)
(了)
ヘッダー写真 撮影地 ニュージーランド Tekapo湖 近く©moya