#5 さるうさぎの生きる道
あのうさぎ
あのことがあって以来、沙留卯は不登校になった。
沙留卯がいなくても、別になんともないらしく、友達からの手紙も先生からの連絡も1つもなかった。
ただ、沙留卯が帰ってきてちょうどぐらいに、先生から
「もしもし、山中さんのお宅ですか。あの、沙留卯のことなのですが、あの子、先生に向かって悪い口をしたんです。しかも、友達にも悪口をいうので、もう学校に来ないでください。」
という電話がかかってきて、先生は自分の要件だけ言って、さっさと切ってしまった。
お母さんは初めは信じていない素振りだったが、帰ってきた沙留卯を見て、おいおい泣き出した。お母さんは一日中ずっとずっと泣いていた。
そして、その明くる日。やっとお母さんは口を開いた。
「どうしてこんなことになったの?」
と、なんとか聞こえるくらいの声で言った。その声は震えていた。
「私、何にも悪いことしてない。でも、でも…。」
沙留卯はその後を言うのができなかった。ただ、お母さんとひたすら泣いていた。
「トントン」とドアをたたく音がした。沙留卯はまともに歩けなかったので、床を這ってドアまで行った。
そして、ドアを開けてみると、そこにいたのは、なんと、あのうさぎだった。そのうさぎは、1枚の葉っぱを置いて走っていった。今の沙留卯では、とても追いつけなかったので、沙留卯はその場で、
「あなたの名前、教えて。」
と大声で言った。そのうさぎは、
「は、…ゥ。」
と言ってすぐに去ってしまった。
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