#7 さるうさぎの生きる道
猿卯新聞
あの葉っぱを開いてみると、「緊急!猿卯新聞 6月17日」と書いてあった。今日は6月27日。
「こんな新聞、うちには来てないわ。」
とお母さんが言った。
次の行を見ると、もっとびっくりした。小見出しには、「うさぎ連れ去られる」とあったのだ。
「何でこんなに重要な新聞が来なかったんだろう。」
沙留卯(さるうさ)が言うと、お母さんが、
「きっと、届け忘れたんじゃない。」
「それじゃあなぜ、あのうさぎが新聞を?」
「…」
お母さんは黙り込んでしまった。そして、次の文を見て、びっくりするのも通り越し、青ざめてしまった。そこには、
6月16日。うさぎが連れ去られてしまったという事実が明らかになった。容疑者と思われる、山中猿希は現在逃走中であり、家にはいない状態だ。そして、連れ去られたうさぎは島上宇幸姫(しまかみ うさひめ)と思われており、両親共々悲しんでいる。
と綴られていた。
「お父さん、出張しているんだよね。」
沙留卯はおそるおそる聞いた。
「ええ、そう聞いているわ。」
お母さんが弱気でそう言った。
あれは、満月の夜のこと。空には雲ひとつなく、あたりはあきれるほど静かだった。そんな日のこと、山中家には、1通の速達便が届いていた。
その手紙には、
明日、急に出張しなければならなくなった。その準備で今日も帰れない。
いつ帰れるかはまだ分からないので、分かったら連絡する。
6月15日 猿希より
と書いてあった。その手紙には、なぜだか差出人の住所が書いてなかった。
ヒュルルルルー。さっきまで静かだった街も、風はびゅうびゅうと吹き、森は轟々(ごうごう)とざわめき、鳥たちはバサバサと森を去っていくように飛び立っていった。
これは、何かの前触れなのだろうか。自然はこれから大変なことが起こることをまるで、猿やうさぎに訴えているようだった。
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