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暗殺教室もいいけど、魔人探偵脳噛ネウロ派。そして何より松井優征派。

タイトルに同意してくれる人。お友達になろう。
「暗殺教室」「魔人探偵脳噛ネウロ」
ともに少年ジャンプで連載していた松井優征さんの作品である。

「暗殺教室」は松井優征さんのジャンプ連載作品2作目で、2012年〜2016年の間連載していたが、わずか半年でコミックスの販売部数がヒットの指標とされる100万部を超えた。その後アニメに映画とメディアミックスされ人気も増し、単行本の累計発行部数は2500万部となっている。

対して「魔人探偵脳噛ネウロ」の単行本累計発行部数は400万部。アニメ化もしているが、正直アニメも漫画も「暗殺教室」に比べて大ヒットしたわけではない。
が、こっちのほうが本当にいい意味でぶっ飛んだ表現をしていて、ブラックジョークも多くて、それでいて根底にあるテーマが暗殺教室にもつながるような「人の成長と進化」で、ちゃんと感動できるから面白い。

そして何より、松井優征という人がいずれの作品も綿密に計算した上で作っている作品だなぁというのが読み取れて、最終的に彼の職業人としての凄さにハマるのである。

そんなわけでnoteの#マンガ感想文にのっかって、私が思う「魔人探偵脳噛ネウロ」の好きなところ、ひいては松井優征さんの好きなところをつらつら挙げてみようと思う。

魔人探偵脳噛ネウロの好きなところ1:「表現が独特で、コミカルかつ毒の挟み方がいい塩梅」

noteとタッグしているマンガサービス「アル」に魔人探偵脳噛ネウロが登録されておらず、実際に見せられないないのが悲しすぎるが、とにかく絵の表現が「独特」だった。決して上手いわけではなく、むしろ初期なんかは上手くない方だったと思うんだけど、個人的なイメージとしては扉絵とかはサルバドール・ダリの「記憶の固執」みたいな奇妙さとそれでもハマってしまう味がある。

特に初期に出てくる犯人達はいずれもどこかの欲望が突き抜けていて、その犯人達の欲望を絵に落とし込むのが上手いし、今見返すとどこかやはりコミカルでもあるので面白い。(コミカルで面白い、で思い出したけどそういえば松井さんは「ボボボーボ・ボーボボ」のアシスタントをしていたそうなので、その影響もありそう)
気になる人はとりあえず「ヒステリア ネウロ」とか「七光 ネウロ」「ドーピングコンソメスープ」とかでググってほしい。

そして恐怖や嫌悪等の毒的な要素を表現するのもうまかった。表現がすごすぎて小学生が読んでたらちょっとトラウマになるんじゃないかなと思うことも…(第120〜124話あたりとか)。加えて小ネタとして時事ネタブラックジョークを挟んでくるのも、1つの毒的な要素。こういう「毒」が挟み込まれているのも作風と相まって好きだった。

魔人探偵脳噛ネウロの好きなところ2:「人の成長・進化を描いてる」

最初はその絵の独特な表現や、作者の松井さんが1巻のコメントで書いているように「推理物の皮を被った単純娯楽漫画」としての設定や世界観にぱっと目が行きがちだが、回を増すごとにこの作品が「人の成長・進化」をテーマにした漫画だというのがわかってくる。しかもそのテーマをしっかりと描ききってくれているのが本当に素晴らしい。

2作目の「暗殺教室」もメインテーマとしては同じ「人の成長・進化」が入っているのだが、暗殺教室はTHE・王道をいっていてわかりやすい構造になっている。一方ネウロのほうは、途中で打ち切りとなる可能性も踏まえて、このテーマを描いていることを最初からは明確にしていなかったので、気がついた時に「うわぁぁぁぁそういうことかぁぁ」とやられた感がとても強かった。

このへんは詳しく話すと長くなりそうなので…ぜひ実際にみなさんに読んで体感して頂きたいところ。

魔人探偵脳噛ネウロの好きなところ3:「作者の松井優征さんのプロ意識と計画性が凄すぎ」

ジャンプスクエアの過去のインタビューで、松井さんが次のように話していた。(ネタバレになりそうなところは〜で省略)

――『~ネウロ』のように着地できたと。あんなに、ストーリーが大団円で着地できた漫画も珍しいと、編集部でも評判だったそうですが。
松井◆(「いかに責任を持って終わらせるか」を最重要に考えてきたので、1巻終了パターンなら〜を入手するまで、2巻パターンなら弥子が〜まで、3巻なら〜して終了…と物語の幅は決めていました。二度目の〜でも続くような長編の〜編、そこを過ぎたら弥子が〜したので、〜ネウロにはさらに〜て最終シリーズ…という具合です。

少年ジャンプはアンケートの人気投票結果によって急に打ち切りにされることが多々ある。そんなわけで尻切れトンボ的に終わる作品も数多くあるのだが、「いかに責任を持って終わらせるか」とプロ意識をもって最初からそのリスクをちゃんと考えて、話数毎の終わらせ方まで考えていたという松井さん。どんだけだよ、と。

加えてこれは私見だが、松井さん自身がネウロの後の暗殺教室では確実に「世の中でヒットさせること」を目標に置いて創られていたであろうところもすごいと思う。
ネウロもアニメ化までしたところは暗殺教室と一緒。しかし私のような原作好きからみると原作の良さが全く出ていない作品だったし、実際ヒットは飛ばせなかった。恐らくそれが悔しくて「もっとこうしたらよかった」を詰め込んだのが暗殺教室なのではないかと。そう思ったのは、以下3つの点。

王道的なテーマ(人の成長・進化)を扱っていたがネウロでは絵柄的にとっつきにくい&表現が突き抜けすぎていたため、暗殺教室では絵柄をよりマイルドに、ストーリーもわかりやすくし、毒気も減らし、より一般に好まれるテイストになっている。
メディアミックスする際も松井さん自身がより深くアニメ・映画のプロデュースに関わることで、原作をリスペクトした統一感を出し、どの媒体から入った人も別の媒体へ手を出しやすい状態になっている。
前編と後編がある映画においては、後編の公開と原作の最終回を同じタイミングに合わせて、原作とストーリーがずれないながらも映画公開としての旬も逃さず話題性も生まれる状態を作り出している。


特に3番目の映画の公開タイミングと漫画の最終回タイミング合わせるとかは考え抜いて計画立てて周りもめちゃくちゃ巻き込んでいかないと実現できないし、そもそも考えついてやり抜いてしまう漫画家さんもそうそういない。本当にどれだけ意識が高くて計画性がある人なんだろうか、と思う。

結論:松井優征推し。

ジャンプスクエアの過去のインタビューで、さらに松井さんの人柄が出ている部分がある。

――そもそも、処女作『~ネウロ』を立ち上げた経緯は、どんな感じだったんですか? デビュー前の状態から…できれば少年時代のマンガとの関わりから教えてください。
松井◆ずいぶん遡りますね(笑)。小学生時代は…自分は、マンガを買ってもらえなかったので、全然読むことができませんでした。だから、好きだった漫画家さんは? とか聞かれると困ってしまうんですね。当時はジャンプ黄金時代だったのに、その話題に参加できない。もしくは知ってるような口ぶりで何か言わなきゃいけない。ただし、その「知ってるような口ぶりして言う」ところが、今の自分に役に立っている気がします(笑)。漫画家というか、創作人に大事なのは、知りもしないことをさも知ってるかのように言う…ハッタリも大きいと思いますので。それで、中学時代も、基本的には読ませてもらえないので、仕方なく自分で描いていました。学校のプリントの裏などにビッシリと(笑)。それで、高校に入った頃から、自分の能力や周囲の反応と相談しながら、漫画家への適性を慎重に計っていました。

高校に入った頃から、自分の脳力や周囲の反応と相談しながら、漫画家への適正を慎重に計ってたって…そんな人、どれだけ世の中にいるんだろうか?
恐らく松井さんは選んだ職業が漫画家だっただけで、他の職業についていてもその道のプロになっていらっしゃる気がする。漫画家というよりも、漫画家をやっている職業人・プロビジネスマン感がすごい。
暗殺教室以降は長編連載はしていない松井さんだが、もしかしたら今度は漫画以外の場所で急に活躍しだす、なんてこともあるのかもしれない。
どんな形であれ、また松井さんの活躍を拝見することができれば至極幸福。
そして今後彼が何かしらのヒットを生むたびに魔人探偵脳噛ネウロは話題になり、密かにファンを増やし続ける作品なんだろうなと思うと、にやついてしまうのである。
さぁまずはあなたもネウロを読んで、ぜひ松井優征推しになろうぜ。


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