オイラーの等式の美とτに代わるもう一つの案
オイラーの等式とは
美しい数式としてしばしば引用されるオイラーの等式は、オイラーの公式に円周率 $${\pi}$$ を代入することで導出される。
$$
\begin{align*}
e^{i\pi} &= \cos\pi + i \sin\pi \\
&= -1 \\
\therefore \quad e^{i\pi} &+ 1 = 0 \tag{1} \\
\end{align*}
$$
5つの基本的な数学定数(0, 1, e, i, π)を含んでいることが、特筆すべき点であるとされている。
しかしながら導出の過程で、右辺の $${-1}$$ を左辺にもってくるという操作に何かしらの不都合さを隠そうとする意図があるのではないか?
最初に、この $${-1}$$ の正体から現在 $${\pi}$$ が使われていることへの不道徳さと、それを解決する $${\tau}$$ を紹介し、最後にもう一つの不道徳を正す、ある意味正当な解決案を提示する。
三角関数とπの関係、そしてτの提唱
三角関数と円周率 $${\pi}$$ は、共に幾何学上において、次のように定義される。
三角関数 : 半径 1 の円(単位円)を使って定義される角度と位置の関係
円周率 $${\pi}$$ : 直径 1 の円を使って定義される円周
ゆえに三角関数によって、$${\pi}$$ と度数法は、
$$
2 \pi = 360\degree \tag{2}
$$
と定義され、本来円周を表す $${\pi}$$ が、半周しか表さないということになる。
これがオイラーの公式において、複素平面上に展開すると $${-1}$$ となる正体である。
つまり $${\pi}$$ が 三角関数という異世界に転送されてしまっている のである。
そこで近年、三角関数と同じ単位円上で定義される円周率 $${\tau}$$ が提唱されている。
円周率 $${\tau}$$ : 半径 1 の円を使って定義される円周
この $${\tau}$$ を導入することで、三角関数から $${\pi}$$ を排除する事ができ、度数法との極めて不道徳な関係が解消される。
なぜならば、
$$
\tau = 360 \degree \tag{3}
$$
と定義され、
$${\pi}$$との関係は、「半径 1 の円周を直径 1 の円周を使って表す」という言葉によってつなげることができ、
$$
\tau = 2\pi \tag{4}
$$
そして結果的に(2)式が導けることになるが、必要性はない。
もう一つの案
-1 の正体は、三角関数が、異なる世界で定義された $${\pi}$$ を使用しているからだった。
ゆえに三角関数側の定義を「単位円から 直径を 1 とする円上で定義しなおす 」ことでも解消できる。
このとき、(2)式は、
$$
\pi = 360\degree \tag{2'}
$$
となる。
これによって不道徳さが解消され、オイラーの公式に $${\pi}$$ を代入しても
$$
\begin{align*}
e^{i\pi} &= \cos\pi + i \sin\pi \\
&= \frac{1}{2} \\
\end{align*}
$$
となり、5つの基本的な数学定数(0, 1, e, i, π)だけでなく、偶数において唯一の素数である2までもが現れた。
そもそも歴史的において、三角関数は $${\pi}$$ より後なのだから、$${\pi}$$ を拝借するのであれば、$${\pi}$$ に敬意を示すべきであろう。
しかしながらこの解決案は、三角関数の重大な公式に影響を与える。(幸いなことに導関数への影響は免れている。)
例えば
$$
\cos^2\theta + \sin^2\theta = 1
$$
は、
$$
\cos^2\theta + \sin^2\theta = \frac{1}{2}
$$
となる。
これだけならばまだなんとかなりそうではあるが、その他の三角関数の諸定理がややこしくなることは目に見えている。
少なくとも私は考えたくはない。
なんだか偉そうに言っておきながら恐縮ではあるが、
ただでさえ目の敵にされている三角関数が、本格的に高校数学課程から排除されるかもしれない
と責任を社会に転嫁して、なかったこととしたい。
まとめ
オイラーの公式でπを代入すると、-1になるのは、三角関数とπで使用される土台が異なるため。
三角関数 - 半径1の円
円周率π - 直径1の円
この解決案として2つ紹介
πの廃止とτの導入
三角関数を直径1の円で再定義する