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初音を待ちわびる

ほととぎす雲井のよそに過ぎぬなりはれぬ思ひの五月雨のころ
後鳥羽院「後鳥羽院御集」

5月の初めには梅雨の走りが・・・と言っていたかと思えば今度はゲリラ雷雨的な雨は降るものの梅雨のような気候にはならずに東京地方の梅雨入りは遅れそうだとの予想も出ていて、近年の天気予報もなかなか難しく予報士の皆さんも気苦労が多かろうと推察します。

冒頭の和歌は、ほととぎすが大空を過ぎていってしまう怨めしい気持ちと五月雨の空をかけて思いが晴れない心情を詠ったと直訳しますが、
雲井とは大空の意味とともに宮中の意味があり、

「後宮に入れることのできなかった美形を惜しんでいる」(「後鳥羽院 第二版」丸谷才一 ちくま学芸文庫」)のと、その思いが晴れない=心が乱れる=さみだれ、とかけている歌のようです。

ただし丸谷才一氏は、この歌には後鳥羽院の政治に携わる方としての心情も込められていると言っていて、今の大河ドラマの進行状況は知りませんが、
「『雲井のよそに過ぎぬ』ほととぎすとは、実際の鳥と意に従はぬ鎌倉方と美女とを重ね合せた何かであつたろう」(同上)とも述べています。

とはいえ、
「エロチックなものを表面に置いて政治をほのかに歌ふ詩法」(同上)を使われる後鳥羽院の感性と歌に生きた人生には感服します。

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