AKIRA
え?AKIRA?
コロナ自粛から明けて、映画館の営業が再開するとなって、近所の映画館の公開予定の映画を見て回っていたら、AKIRAの文字があった。
え????
今AKIRAの映画公開してるの???
と呆気に取られてしまった私は、一度AKIRAのページを見てみることにした。
(ちなみに私はそれまでタイトルを聞いたことがある程度の知識で、作品を見たことはなかった。)
1988年に公開されたAKIRAの4K版とのことで、再公開でもあるし、リメイクでもあるし、、、
とにかく名前のインパクトがあって、最近やたらと話題に出てくるし根強い人気がある作品であるのは知っていたから、良い機会だし、と思いチケットを購入した。
数ヶ月ぶりの映画館
まだ映画館に足を運ぶのを恐れている人も多くいるだろう。数時間も一つの部屋に何人も入れられたら密な空間ができてしまうのだから。
日曜の昼の回に観賞を決め、家族連れで混み合うショッピングモールを通り抜けて、チケットを握りしめながら数ヶ月ぶりに映画館の前に立つ。
シャッターが下りていた映画館も、暗くありながら、包み込むような明かりが灯されていた。
透明なマスクを身につけているスタッフにチケットを見せて、検温を済ませ、アルコール消毒を終えたところで劇場に入ると、まばらな空間に私含め鑑賞する人は5人だった。
久方振りの巨大なスクリーン、そして暗転。本編に入る前から映画館を満喫できて幸福に満ち溢れていた。
AKIRA 本編
AKIRAの世界観は文章を読んでも伝わりづらいし想像以上のものであるから、実際に映像を見るか、漫画で雰囲気を感じ取っていただきたい。
こちらの記事がAKIRAの魅力をわかりやすく、簡潔にまとめられていたので、参考に。
この作品が不動の人気を誇る理由は、主に二つある。
一つは、日本のアニメーションの代表作と海外で話題になり続けていて、人気が衰えることを知らないからである。
まずアニメ界では桁違いの制作費で動いていて、腕ある制作会社、アニメーターが召集されている。実力のあるスタッフとともに挑戦したのが「2コマ打ち」という作画技法で、AKIRAという作品が制作されている。
コマ打ちとは1秒間の24フレームのうち、何フレームごとに異なる絵(動画)が入るのか(何フレームのあいだ同じ絵を表示するのか)を表したもの。1秒に何枚同じ絵を使うかどうかのことである。
2コマ打ちというのは、1秒に12枚同じ絵を使っていて、他のアニメの常識的に使われている3コマ打ち(1秒に8枚)というコマ打ちよりも繊細で、ヌルヌルとした絵運びになるが、如何せん労力が数倍に膨れ上がる。
映画版AKIRAはこの2コマ打ちという技法で、延べ15万枚という作画枚数で構成されている。
作画が神がかっていると称賛されるように、発展を続けるとしの様子、荒廃した旧市街の対比、臨場感と緊張感の間に立たされるバトルのシーン、どれもこれもが繊細に描かれていて全体図に吸い込まれてしまいそうになる。
加えて立体的な音響、民族っぽさをどことなく感じる音楽が、映画館の中で反響していて、衝撃音もかなり大きく印象付けていた。
もう一つは、2020年に東京でオリンピックが開催されるという描写があり、その下には「中止だ、中止」と書かれていて、中止されるところまで今の状況下と一致しているからである。
コロナ禍でオリンピックの延期は、AKIRAのファンが盛り上がっていたようだ。
作品内では、治安の悪さからオリンピックのようなイベントを開催を中止しようという動きがあった。
急激な都市化に上層部だけが盛り上がって、目も当てられないような生活を強いられている人から搾り取ったような世界の仕組みで、人だとも思われないような存在が、日常的な暴力も避けられず、心を失っていく。その結果、薬物中毒者、不良が相次いで問題を起こして、もう神のような存在、「AKIRA」に助けを乞うことしかできない。
この作品ではAKIRAはメシアとして崇められている。
世界的な打撃、救われない現実を体感すると、人間を凌駕した、神に近い存在を信じたくなる。これは私たちがいる世の中の根底にも存在しているのではなかろうか。
人々の願いと、神に近い存在と、圧倒的な作品美に一度触れてみては?
映画を見終えてから
率直な感想を述べるとすると、見やすいし周りに気を使うこともなく映画を楽しめて、今の時期に映画を見にいくのは現実を忘れられるし良い息抜きになるし、また行こうと決めた。
観賞後の衝撃、余韻は凄まじく、翌日にはAKIRAの原作漫画を衝動で購入した。
抑えられなくなった本能は、もはや人間の所業ではないだろう。
ここまでお読みいただき、有り難うございました。
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