《短編小説》妖花の誘い(いざない)
とある街にひっそりと佇む小さな花屋がある。しかし、これがまた奇妙な花屋なのだ。店には様々な花があるにも関わらず、出てくる客は皆揃って、見事な白い薔薇の花束を抱えているのだ。全ての客がそう要望したとは考えにくい。とすると何故? 意味がわからない。要望通りの花束を作ってもらえず、不満げな表情を浮かべる客を目にすることも少なくない。それなのに店の評判は最高なのである。しかも、どの口コミも「美しい赤い薔薇をありがとうございます」という内容なのだ。これは一体どういうことなのだろう。何