自傷が求めるその先に
まず初めに、この記事は自傷行為を推奨する目的ではありません。
自傷はしないにこしたことないのです。
興味本位の自傷、かっこいいからやりたい、特別な感じがしていい、やろうか迷っているという方は絶対にやらないことをオススメします。
というかやらないでください。
もしやってしまったとしてもこちらは何の責任も負えませんので悪しからず。
さて、本題に移りましょう。
自傷の第一印象
以前の私だったら自傷なんて考えたこともありませんでした。
「どうしてするんだろう」「痛いのに、意味なんてないのに」
まあ大体の人はこう思うでしょうね。
実際私もそのうちの一人でした。
今のご時世では昔よりは精神的な病の偏見は少なくなったように思えますが、それでもリスカ跡などみると戸惑いや偏見が生まれるものだと思います。
いつだったでしょうか。市役所に用事があり、その時担当してくれた女性がいました。
とても優しそうで難しい用語もわかりやすくゆっくりと丁寧に教えてくれたことを覚えています。
しかし私は見てしまったのです。
その人の右手首にびっしりとリスカ跡があったことを。
その時から担当してくれた女性はただ優しい職員さんからなにか過去に精神疾患があった人とのレッテルを貼り付けてしまったのです。
リスカ跡=精神病だった、メンヘラ気質と当時の私はそんな偏見を持っていました。
こうして書くと我ながらひどい思想です。
それにリスカとはSNSで同じような仲間内でリスカ写真などあげてお互いの傷を舐めあっている印象があったのです。
今では彼らなりに苦労があることを知ることができて良かったと思いますけども。
まあリスカに対する第一印象は良いものとは思えませんでした。
当事者になってみると
そんなリスカとは無縁の生活を送っていた私ですがある日だんだんと精神的に体調を崩すようになり、ついには休職をしましたが結果的に辞めることになりました。
動きたくても動けない体。働きたくても情緒不安定になり平静を保つことができない。
今かかりつけ医の精神科の先生に働きたい、このままじゃ貯金が尽きてしまうと言ったのですが今の状態では働くことは不可能だと言われました。
その言葉を告げられたとき私の中で何かがプツンと切れたのです。
病院から家に帰り、いつも通り夕食を食べ眠る。
しかし私は何を思ったか体が急に動きハンガーなどかけるポールにコードを結び、首を吊ろうとしたのです。
苦しくなってきたところでハッと正気を取り戻し、私は何をしてたんだ??今までこんなことなかったのに…ともう大混乱です。
急に怖くなった私は友達に電話をかけたり、この年になって恥ずかしいのですが母親に抱きしめてもらったりしてなんとか落ち着きました。
…が、今度は死ねなかったことに罪悪感を感じるようになりました。
なんで死ねなかったんだ。あのとき苦しいのを我慢してれば死ねたのに。いくじなし、弱虫、役立たず。
そんな思考がぐるぐると頭の中で周り、私はとっさに近くにあった彫刻刀を取りました。
もうまよわず刃を手首に突きつけ、そのまま横に切りました。
痛い、血が出る。
けれどスッキリした心地にもなったのです。
死にたかった、けどそれができなかった自分が不甲斐ない。死にたいけど死ねない中途半端な自分が大嫌いになりました。
しかしリスカをするとそれが許されるような気がするのです。ときには癒しを、ときには死ねなかった自分の戒めとして、ときには罰を与える感じで
ここでようやく私は理解しました。
あぁ…リスカってこういうものなんだと…。
あのとき彼女たちは精一杯あらがっていたということを。
それから私は自傷行為にますますのめり込むようになります。
手首だけだとつまらない。体も傷つけよう。
もういたるところに自傷の跡。
大好きだった銭湯にも当分行けそうにありません。
しかし自傷をすると許された気がするのです。まだ生きてていいよ、ここにいてもいいよ、と。
自傷とは
自傷をする人の中にはかまってほしいから、自分だけを見てほしいから、心配してほしいから。など理由は様々です。
ですが彼らは叫んでいるのです。藻掻いているのです。
死にたい、けれど死ぬのは怖い。けど死に近いことをやらなければ気が済まない。
彼らにとって自傷はある種の救いなのです。
端からみたら歪んでいてとても正常ではないでしょう。
しかし彼らも私も元々は普通に過ごしていた人たちです。
楽しいこともあったでしょう。辛いこともあったでしょう。
けれど我慢しすぎてしまったのでしょうね。
我慢の糸がぷつんと切れると人は体裁を保てなくなります。
それは誰にでも起こり得るのです。
元々自傷行為に偏見を持っていた私が言うのも烏滸がましいです。誹謗中傷を言われても当然だと思っています。
けどこれだけは伝えたい。彼らは普通に生きていただけです。生きていきたかっただけなのです。
自傷とはそれでも彼らが必死に生きようとこの世に留めておく手段なのかもしれません。
どうか、自傷を否定しないで頂きたい。かといって肯定をするものでもない。
ただそっと受け止めるだけでいいのです。側にいてくれるだけでいいんです。
言葉をかけてくれるだけでいいのです。
それであなた方が生きてさえいてくれればいいのです。
自傷をしてしまったなら無理に止めません。今貴女が生きていくにはそれが必要ならば。
自傷行為は大人だけでなく、若者にとても多いです。
どうか、どうか生き延びてください。
残酷な言葉だと思うでしょう?
だから私は言い続けます。生きてください。心優しい人達よ。
この言葉が少しでも多くの人に届きますように。