しこり

⚠注意
この文書には不妊治療や病気といったセンシティブな内容が含まれています。
自身の体験として、偽りなく書いていますが軽率だと感じられる部分もあるかもしれません。
読まれる方はその部分を踏まえてお読み頂けたら嬉しいです。


ある日、片方の胸がやけに痛むので触ってみると胸にシコリが出来ていた。

昔、脇にも同じ様な痛みのシコリが出来たが、
確かアレはリンパ腫だった。
今回はシコリは掴めなくて何だか大きい気がする。嫌な予感がした。

とりあえずレディースクリニックへ行くと、乳腺の部分なので乳腺症かもしれないが、熱は出ていないし授乳中でもないのでエコーだけではこれが何なのか分からないらしい。

その場で大学病院に紹介状を出してもらい、そのまま病院のハシゴをする事になった。

話しは少しそれるが、
私は現在34歳で、結婚8年目になる。

旦那との関係は良好。
良好といってもいろんな良好があると思う。

私達の良好は
「喧嘩もなく、自由な時間があり、咎められることも無く、大切にされている」

と、いった具合。

その代わり男女のものは一切ない。

 数年前、話題になったドラマ「あなたがしてくれなくても」の状態がかれこれ7年続いている。

最初の2年は悲しかったが、3年目になると彼への依存で病むと思い、起業をした。
そんな私を彼は応援してくれている。

自分の仕事と会社員が忙しいので、気持ちは十分紛れる。
でも、ふとした時に「もう私の女としての人生は終わったのかな。」という想いが湧き出てきて、後ろを向いて寝る旦那にこっそりおでこをつけるのだ。

先月、子供を作ろうと話をすると珍しく「良いよ」と言ってくれた。

嬉しくてドキドキした。

営み目的で子供の話をするのは罪悪感があったが胸の高鳴りとまだ女性としての見てくれているんだと感じて嬉しかった。

その後夫の口から出た言葉は

夫「病院行こうな」

だった。
体外受精の事を言ったのか。
こちらの方がずっと現実的だし、本当に子供の事を考えてくれているんだなと感じられる。
それはそれで嬉しい。
私の心の中は嬉しさと、このなんとも言えない切なさでいっぱいになった。

 もう本当に終わりなんだな。

女性としての人生はもう終わったたんだな。
もちろん、営みだけが女性を表すものではないのは十分わかっている。
でも、ずっと大好きな夫に私はもう抱かれる事はないんだなと思うと悲しかった。

話が二転三転して申し訳ない。
 私は主婦でもあり会社員でもある。職場では私は年配者になるのだが、最近までまったく自覚が無かった。
自覚をしだしたのは職場の男の子が私におばさんいじりをして来たのがきっかけだった。

 私は童顔で大体20代前半に見られる。
たまにタバコやお酒も年齢確認をされて買えない程だ。
起業仲間は私よりも年上だし、旦那も8つ離れている。
私の周りには年上が多いし、友達も童顔で非常に若く見える。

自分の環境がこんな感じなのでそれが当たり前だと思っていたが、職場でおじさんだと思っていた人が私の2つ上だったり、同い年かな?と思う人が27歳と若いことがあるので自分の年齢というものを意識する事が増えた。

特にその男の子が私をおばさんいじりをするものだから余計に「おばさん」を感じだしていた。

別に若く見られたいわけではないが、「おばさん」というワードは正直刺さる。

おばさん。
まぁ、たしかに「おばさん」なんだろうな。

だとしたら綺麗なおばさんになろう。

私の脳内はそのように変換した。

メイクも習いに行った。
服も清楚で綺麗に見えるようなオフィスカジュアルな服を買ってみた。
体型は太めだが、これはこれで似合う。
誰が褒めてくれるわけでもないが、綺麗になっている気がする自分に自信が持てたし、若い時とはまた違う雰囲気が出だして、おばさんも悪くないなと思うようになった。

胸に痛みのあるしこりができたのは、そんな時だった。

さて、
大学病院へ行き、マンモグラフィとエコーを取った。

 マンモグラフィは始めてだったが、あれは痛い。
胸をお餅のように伸ばし板と板で挟むのだ。
 撮影中は息ができないし、胸は挟まれてるしで意識が遠のいた。

待合室で呼ばれる間、もし乳ガンだったらと考えていた。
胸が摘出になったら、
いっその事もう片方も取ってもらってボーイッシュになろうか。
メイクも勉強したし、かっこいい女性のもっとメンズみたいな感じにしよう。
子供は母乳では育てられないけど仕方ないよね!

頭の中は怖いくらい不安がない。
まるでただの風邪の診察を受けてるようだった。

診察室に呼ばれた。
皮肉な事に苦労したマンモグラフィには何も映っていなかったが、エコーではしっかりとシコリがうつっていた。

大きさは1.5センチ前後。
乳腺のあたりにゴツゴツとした、少し液が漏れているような形らしい。

ホルモン異常の乳腺症の可能性もあるが私は発熱していないので、断言はできないらしい。

もっと精密な検査をする事になった。

先生「次の処置として胸のシコリに針を刺します」

私は針で刺されるらしい。

 先生いわく、シコリに針を刺しシコリ内部の細胞を採取して悪性か良性かの検査に掛けるそうだ。

悪性なら取り除くし、良性なら特に何もしないらしい。

なるほど。

先生「針を刺すというと皆さんびっくりされますが、この検査は麻酔を使わないので痛みが生じる場合があります。」

ほう。麻酔を使わないのね。

先生はこう続けた。

先生「麻酔を使わない理由としては、麻酔針と今回刺す針が同じ太さだからです。
要は針を2本刺さなければいけないということですね。しかも麻酔針と同じ太さならそもそも先に採取する様の針を刺せばいいよね。となるから、麻酔はせずにそのまま針を刺すと言う判断になっています。」

なるほどわかりやすい。
私の胸に針が刺さるのか。

先生はさらにこう続けた。

先生「本来なら確実に採取する為に太めの針を指して細胞を取るんだけど、80歳のおばあちゃんならまだしも34歳の女性でしょ?やっぱり多少なりとも傷跡が残るので、なら細い方で先に試したほうがいいものね。」

胸に傷跡が残っても、もう旦那に見られることはない。
旦那に見られないのなら他に見る人なんているわけがない。
私の胸はもう誰にも見られること無く死んでいくんだと、何年か前に覚悟していた。

思わぬ所で女性として扱ってもらえて何だかとても嬉しかった。

 その後、採取は無事終わりシコリはまだ痛いままだ。
痛みが胸がある事を感じさせてくれている。
同時に私が女性である事も。
この気持ちのまま、私は1週間後の結果を待っている。



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