同業者の評価を気にするな、と言われて心が軽くなった話。
「同業者の評価は気にしなくていい。
お客さんが満足していればいいんだよ。」
これは私がフリーランスデザイナーになりたての頃、お世話になっている企業の社長に言われたことです。
それまで私は他人の評価を気にしすぎる人間でした。裏を返せば自信が無いということ。自分のつくるものに自信が持てなくて、いつも他のデザイナーからの評価を気にしていました。特にフリーランスになってから、経験値の少ないグラフィックデザインの仕事をやる場面が増えて、独学に限界を感じ、これは正しいのか?間違っているのか?周りの人に答えを求めていました。
「こうした方がいいんじゃない?」と指摘されると安心して、あっさり「これでいいんじゃない?」と言われると、逆に「本当か・・・?」と謎に疑心暗鬼になり、苦しくなり、なかなか完成できないというループに陥っていたのです。
インハウスデザイナーだった頃は、上司からのGOサインが出るまで何度も壁打ちして、さらに商品説明会で社長や店長から意見をもらい、最終的には、期限と制約の中でこれ以上はもう無理というところまでブラッシュアップしたものをリリースしていました。
・自分→先輩→上司→店長→社長→お客様
お客様に届くまで、川の水をより細かい目で濾して浄水していくような、そんなイメージです。ですが、フリーランスになると、当たり前ですが直属の上司や先輩がいないので指摘をしてくれる人がいません。いきなり、
・自分→お客様(ここでのお客様はBtoBの話です)
になるわけです。
そして、お客様に満足してもらえれば次の仕事に繋がるし、不満であればその先はない。そういうシビアな世界です。
満足してもらえるかどうかは、デザイン的に優れているということだけでは決まりません。例えば、「お客さん自信が気に入っている」「他の人にいいねと褒められた」「短納期で仕上げてくれた」「価格以上なクオリティだった」など、人によって求めているポイントは違うので、それらが複合的に満足につながるのです。
それなのにデザインのクオリティばかり気にしていた私は、自分の力量を遥かに上回る基準を作って、自分の首を絞めていたように思います。そんな私を見かねて、
「同業者の評価を気にしなくていい。」
と言ってくださった言葉に救われ、随分と心が軽くなりました。実力で言えば上には上がいるし、今の自分にできるベストを尽くすしかないんだ。そう割り切れるようになったのです。
そして、クライアントワークをする時には以下のことを意識するようになりました。
①今の自分にできるベストを尽くすこと
②クオリティに見合った適正価格を考えること
③依頼された内容以上を目指すこと
特に③が大事だと思っていて、たとえばパンフレットの修正1つを取っても、言われたところだけを直すのではなく、こうした方がもっと良くなるというポイントがあればお節介でも積極的に提案をするようにしています。何か他にできることはないか?と言う視点が、ベストを尽くすことにつながるのです。
最終的に、「この人に頼んでよかった」そう思ってもらえるように、今までの自分の知識・経験・技術をフル活用して制作するように心がけています。
最後に
「自信が持てるようになってから独立したらいいじゃないか。」という声も聞こえてきそうですが、独立した者が皆、最初から自信を持っていたと言えるでしょうか?
むしろ、最初は自信がない人がほとんどだと思います。それでも、その時の自分のベストを尽くして、やりながら実力伸ばし、自信をつけてきたのではないでしょうか。
今、独立するか迷っている人がいたら、ぜひ挑戦してほしいと思います。誰もができることではありません。その一歩を踏み出したことに、まずは自信を持ってほしいです。全力で応援しています。