Where are you from?_シリア
興にのったパルミラの遺跡観光で熱中症になった。
朦朧とした中でなんとか宿に戻り、クーラーの中で横になり体調が戻るのを待つ。
夕方からはアラブ城に登り、サンセットを見ようと思っていた。
当初は歩いて頂上を目指そうと思っていたが、車を手配することにした。
明日の朝にはパルミラをたち、ダマスカスに戻る予定でいたので今日行くしかなかったのだ。
車を頼みにフロントに行く。
スタッフは馴染みの運転手に連絡を入れてくれ、節々のアラビア語の断片からわたしの特徴を説明をしているようにも思えた。
そして時間になり車が到着。
3列仕様の綺麗なバンが到着した。
運転手からは「アラブ城に行く前に家に寄っても良いか?家族も行きたいと言っている」
と、言われる。
こういうのはさほど驚かない。
車1台のチャーター代をわたしが払っているわけで車に余裕があれば家族を乗せてついでにピクニック、というのは特にこの辺りだと当たり前に起こることだ。
もちろん、嫌ならそこで拒否すれば良いのだが、一人旅だしこういう機会は面白いのでO.K.する事にした。
家に着くと、女性3名が乗ってきた。運転手の妹という。
そして、アラブ城に向かう車内でそれは始まった。
「名前は?」
「巻」
「どこから来たの?」
「日本」
「あなたは学生ですか?」
「いえ、働いています」
彼女の手元には英語のテキストがあり、その中の例文をわたしに試して通じている事に満足していた。
例文なのでそれ以上の会話の進展がないやりとりであった。。
彼女たちはスカーフを巻いていて、イスラム教徒ということはわかった。
彼女たちにとっては、女一人旅の外国人であるわたしは、習っている英語を試す絶好の相手だったのだろう。
特に日本人であるわたしは、彼女たちにとっても好ましい相手だったに違いない。
同じ日本人でも男の旅人には彼女たちはついては来なかっただろうし、兄も許可しなかったと思う。
よく、アラブの国を女性ひとりで旅することに危険が伴わないのか?と聞かれる事があるが、わたしは男性の旅人とは異なる楽しい経験ができるのでは?と、思ってる。
こういう機会もそうだし、家に招待される事もあった。
内と外で、女性の振る舞いを厳格に分けるイスラムの世界では、女性の旅人は彼女たちがくつろいだ姿で自宅でもてなす事ができるのだ。
アラブ城ではサンセットを見る前にお墓を観光し、そうこうしているうちに皆と打ち解けてきた。
サンセットを見終わるころには、末っ子ちゃんから、「うちに来て!」と熱烈にお誘いを受け、そのままご自宅にお伺いすることになった。
家には、このお兄さんの超絶美しい奥様がいて(もちろんスカーフは取ってお出迎え)、シャイとお菓子でおもてなしを受けた。
親戚も集まり、その中でも、海外旅行に行ったことのあるおじさんが登場し、ご自身のタイ旅行の写真を見せられ歓待を受ける。
そのあとに、
「冬にマレーシアと韓国に行くんだけど、そのあとに日本にも行きたいがビザが下りない。助けてくれないか?」と言われる。
微妙な英語でのやり取りの中、わたしはなんとか怒らせないようにうまく断る方法はないか考える。
末っ子はそれも知らずに、しきりにお菓子を勧めてくるなか、
「ごめんなさい。それはできません。何故なら、わたしは女だから。。。」
ちげーよ!!!と思ったけど、イスラムの世界だからか、理由「女」で、納得してくれて会話は終わった。。。
今、この家族はどうやって生きているだろうか?観光客も激減で、それよりパルミラ自体が破壊されている中、この家族がなんとか生き延びて、未来に希望を持って暮らしていてくれたらいいなと思う。
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