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ホームスクール:教育者の区分

Neuman, A., & Guterman, O. (2016). Structured and unstructured homeschooling: a proposal for broadening the taxonomy. Cambridge Journal of Education, 47(3), pp.355-371.
2024年9月19日

 教育者を区分する際に用いられる一つの基準として、構造化/非構造化されたホームスクーラーというものが用いられる。Neuman & Guterman (2016)はイスラエルをフィールドとしたインタビュー調査を行い、家庭教育(Elective Home Education: EHE)を行う教育者(親、保護者であり、すなわち母親)の実践を区分する「構造化/非構造化(Structured / Unstructured)された学習」という区分が実際には内容とプロセスという異なる次元を持つことを示している。非構造化された学習としてのホームスクールの実践は、しばしばアンスクール(Unschool)ととも呼ばれるように、子どもの内発的動機付けや興味関心によって学習を進める形態として分類されてきた。しかし、Neuman & Guterman (2016)がインタビュー調査と教育者のカリキュラムへの分析から明らかにしたように、内容とプロセスの双方が構造化/非構造化という次元を持つため、その両方が採用される場合がある。例えば、必修科目を定めるような構造化されたカリキュラムを持ちながらも、時間や場所を固定化せずに教育活動を展開することは、内容は構造化されているが、プロセスは非構造化されている実践であるといえる。この結果から、教育者を学習の構造化の程度として類型化する際には、内容とプロセスの二軸を用いて、4象限に分類することができる。これは、それまでの二元的分類を超えて、実践を理解するために役立てることができるだろう。

コメント

 近年、コンテンツとしての学びではなく、課題対応能力を育成する手法として探究的な学びが重要視されてきている。こうした学びは学習効果こそ高いのであろうが、学習に時間を要する。例えば、改革教育によって子どもの発見に大きな注目が集まってもなお、教科書によって体系的に学ぶ学校での学習方法が揺らぐことはなかった。Green-Henesy(2014)がアンスクールのアプローチをとるホームスクールの子どもが、そうでないホームスクールのこどもに比べて、学習の遅れを示しやすい可能性を示唆したように(446)、学校との比較でホームスクールを語る場合には、その手法ゆえに学習の進度が問題点として表れやすい。ヨーダー裁判ではアーミッシュの宗教的共同体の特異性が考慮され、義務教育を離れることが認められたが、ホームスクールのように、再び「学校化」された社会に合流することを念頭に置けば、その合理性は薄まらざるを得ないのかもしれない。ここでいう学校化とは、すなわち、「よい」学校に行くことが、「よい」キャリアを得るための要件となっているような社会である。

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