盛岡神子田朝市がパーフェクト市場だった
私は旅先で訪れる市場が好きだ。そこに住む人々の暮らしを覗き見し、ヨソモノになる感覚が楽しい。東南アジアや南米では市場に必ず訪れて、しこたま滞在した。
市場の醍醐味は地元感だ。大鍋で作られる羊の頭スープ、うんと積まれた謎の野菜、カゴで飛び跳ねる蛙……。日本ではそんな地元感があふれるローカル市場になかなか出会えない。日本3大朝市の呼子や輪島は、観光客向けで少し物足りなかった。
そんな私の欲を満たすパーフェクト市場、それが盛岡神子田朝市だった。
地元感120%の市場
盛岡神子田朝市は盛岡駅からひとつ先の仙北町駅から20分ほど歩いた場所で開かれている。住宅地のなかにいきなり現れるから、最初は「ここ?」と驚いた。でもなかに入ると立派なローカル市場があった。
まず地元民の多さよ。朝6時から普段着で買い物する人。大量に野菜を買い込む人。観光客は少ないからめちゃくちゃ目立つ。
テンションぶち上げ、自家製のオンパレード
市場好きにとってテンション上がりポイントといえば自家製のおかず。盛岡神子田朝市では漬物はもちろん味噌や梅干し、キノコの水煮などが各お店で並べられていた。
店頭で座るばぁちゃんに「これはお母さんが作ったんですか?」と聞くと、当たり前のように「そりゃそうだよ」という。
なかには60年以上、この朝市で自家製の農産加工物を製造・販売しているばぁちゃんもいた。あぁ、毎日通って、色んなばぁちゃんの味を知りたい……。
あれこれ考えながら市場を3巡くらいして、干し柿とキュウリの塩漬け、一味唐辛子を購入した。干し柿は甘すぎなくてちょうどいい。キュウリの塩漬けはいつ漬けたのかわからないくらいに発酵していた。後日、鍋に入れたらすっごい旨味を出してくれた。
それにしてもこの市場、全体的に安い。おそらくこれで生計を立てている人が少ないのだろう。(みんな年金世代だし)
市場というよりコミュニケーションの場として機能
なぜ朝市が存続しているのか。これは地元の人々の交流の場として機能しているからだと感じた。店の人々がかまどを囲んでお茶を飲みながらおしゃべりし、たまに接客する。お客はたいてい顔見知りだから、接客なのか雑談なのかわからないくらい長いおしゃべりが展開される。
そういえば、こんな光景をグアテマラでもラオスでも見たな。
お客と店主がずっと世間話をしているこの感じ。市場が交流の機会として機能しているのは、世界共通なのかもしれない。
何を話しているのか、想像しながら傍から見ている感覚がたまらない。盛岡神子田朝市で行き交う方言についていけない私、もう気分は海外だった。
朝市の名物、ひっつみはツルツル
軽食も豊富なのも盛岡神子田朝市の魅力だった。ラーメンやうどんなど、あったかいメニューが揃っている。せっかくなので東北の名物・ひっつみを食べてみた。このお店だけ、ほかと比べると観光客が多かった気がする(私の前は10食テイクアウトする地元のおばさまだったけど)
ひっつみとは、東北地方に多くあるすいとん入りのすまし汁。手打ちのすいとんはつるつるしていて柔らかい。寒い朝に染み込む素朴な1杯だった。
季節を変えて訪問したい市場
私が訪れたのは晩春だったから、りんごやラフランス、茸がたくさん並べられていた。他の季節ではどんなものが見られるんだろうか。
あぁ、またローカル市場に行きたい。ローカル市場で地元の生活を覗き見したい……。
今年もたくさん、旅をしよう。