大阪音楽大学から学ぶ「ビジネスとしての音楽」と「プレイフルな働き方」
こんにちは、1期生のさきです!
今回、私は初めてインタビュー記事を書きました。
舘野ゼミの一員として行った理由としては2つあります。
1つ目は、舘野ゼミの掲げる「プレイフル」に対してもっと理解を深めたいと感じ、「プレイフルな働き方」に焦点を当てた高校生向きへの記事を書きたかったからです。
2つ目は、舘野ゼミが大切にしている「とにかくやってみる」の精神を実践するためです。舘野ゼミの生徒は個々が自分の研究テーマに沿って自ら行動を起こす生徒が多いため、あまり悩まずに行動に移すことができました。
今回は、「プレイフルな働き方」=「好きなことを仕事にする」と定義した上でインタビューを行いたいとおもい、「好きなことを仕事にする」というキーワードを掲げていた大阪音楽大学様に取材を依頼し、記事を書かせていただきました。
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2022年4月より関西唯一の音楽単科大学である大阪音楽大学では、ミュージックビジネス専攻が新設されることが決まった。ホームページに「楽譜が読めなくてもいい」というかつての音大のイメージとは異なるフレーズを載せる新設専攻と、現在の音楽業界のこと、そして好きなことを仕事にするという学生のキャリア選択について、大阪音楽大学ミュージックビジネス専攻教員の西川典彦氏にお話をお伺いしました。
・演奏ではない音楽を学ぶ音楽大学の新たなカタチ
―まず、「楽譜が読めなくてもいい」といった音大のイメージとは離れているフレーズがありますが、どのような点で他の音楽大学と異なるのでしょうか。
そうですね。東京にも音大ってたくさん存在しますし、演奏を中心とした音楽を仕事にするっていう意味ではむしろ東京の方が音楽を仕事にするための大学が多いと思います。
ただ、音楽をビジネスとしてとらえたり、演奏じゃない音楽の仕事を目指したりするという点では、少なくとも関西の音大ではここが初めてかもしれないですね。
―音楽大学は幼いころから習い事などで才能を磨き、才能のある人が進学するというイメージがあるのですが、やはりそのような学生が多いのでしょうか。
そうですね。おっしゃるイメージの通り、今まではクラシックを100年やっていた大学なので、6~7割はクラシックの勉強をやってきて、大学ではこの先生のもとで指導を受けたいという理由で入ってくる学生が多かったですね。ただ、ここ10年ぐらいでバンドをやりたいとかミュージシャンになりたいという学生が増えてきました。
また、近年では職業作曲家になりたいという学生も増えてきて、クラシックではなく映画音楽やCMの曲を作るという専攻も設立されました。その専攻に入りたいという生徒も増えてきたので、音楽をエンターテインメントにしたいという学生にもっと来てもらいましょう、というのがこの専攻が新設されたきっかけですね。
―なるほど、クラシック音楽というよりは身近な音楽に対してのアプローチをするということですね。
そうですね。私は昔、レコード会社にいたんですけど、実はクラシックというのは全体の売り上げのごく一部で、大半は、今の若い人たちが“音楽”と言って思い浮かぶような J-POPを含むポピュラー系の音楽です。なので、音楽大学が今の人たちが聞く大半の音楽に目を向けないのはおかしいよね、ということですね。
―現代の若者が聞く音楽に目を向けた専攻が作られたということですね。
そうですね。特に、クラシックって聞くと外国の名前しか思い浮かばないと思います。もちろん日本人にも有名な方はいますが、それは相当クラシックに詳しい人でないと出てこないと思います。やはり、日本人が普段から聞く音楽って日本の音楽なんですね。日本がちょっと特殊なのは、若者が外国の音楽をあんまり聴いていないんですよ。
良くも悪くも、日本では海外の音楽を聴く人が少なくなっているのに、音楽の教育は外国の音楽だけっておかしくないですか?さらに、学校では外国の音楽だけ勉強していたのに、いざ仕事となると日本の音楽と向き合わなければいけないのか?とか、では日本の音楽を作っている人はどこで勉強してきたんですか?とかって少し不思議なことが多いんです。
つまり、普段聴いている音楽と学校で学ぶ音楽のミスマッチが放置されていた結果、日本の音楽って世界の中で少し取り残されている感があるんです。それこそ、若い子はK-POPを聞く子が増えていますが、あれって韓国が日本の音楽を研究して、日本人のニーズに合わせて人々の生活に落とし込んでいるものです。それを韓国はできているのに日本は何やってたんだろうって、そういう悔しさもありますね。
―日本の音楽をつくるなら日本の音楽についても学ばなければいけないということですね。
そうですね。それに加えて、世界に向けた日本の音楽の発信についてもこれから学び、作っていかなければいけないですね。
大阪音楽大学の建学の精神は「新音楽新歌劇ノ発生地タラン」というものです。現代の音楽の基本であるクラシックの教養から、最新の音楽制作やテクノロジーまで学ぶことで、建学の精神の通り、新音楽を生み出し発信できる人材を育てたいと考えています。
・面白いものを作るのに不可欠なテクノロジーの存在
―では、ミュージックビジネス専攻では世界に日本の音楽について発信する術も学ぶということでしょうか。
そうですね。ただ、世界戦略ということだけではありません。ミュージックビジネス専攻では学ぶことが音楽×テクノロジー×ビジネスとなっています。
今までの音楽大学には後ろ二つの「テクノロジーとビジネス」がありませんでした。あったとしても型通りのビジネスだけでしたが、あえてテクノロジーというのを入れた理由は、どの仕事でももうテクノロジーを無視して仕事ができないからです。
ただ、音楽とかアートとかに関わる人って、人間の感性を理由にテクノロジーに関して不勉強なことが多いんです。実際、数学やテクノロジーが苦手なので音楽やアートに逃げるっていう人もいなくはないと思うんですよね。でもそれはたぶん、数字やテクノロジーをどう使うかが想像できないから苦手なんだろうなと思います。
山村さんはお金の計算はお好きですか?
―あんまり好きじゃないですね…。
そうですよね。でも、例えばもし自分がこのnoteで、取材した記事でお金がもらえるとなったらユーザー数や購読数をいかに増やそうかって考えますよね。そうなると、アクティブユーザーとかの計算を始めますよね。そのように、自分の楽しみや喜びにつながる計算であれば嫌がらずに積極的にやると思います。人のお金の計算や自分の家計簿とかになると途端に嫌になりますが、自分の楽しみや人の喜びにつながる計算だって言われると苦にならずにできると思うんですよ。
なので、やりたいことをどうやったら大きく楽しくしていけるのか、そのためのツールとしてのテクノロジーを勉強しましょうということで、テクノロジーをあえて加えています。世界に売っていくというよりも、テクノロジーに関わって仕事を面白くしていこうと思うと結果的に日本だけに収まりきらなくなるぐらい大きくなります。
―日本だけでは収まりきらないので世界に目を向けるようになるということでしょうか。
目を向けるというよりも、テクノロジーを使って面白いものを作れば嫌でも勝手に世界から注目されるものになりますよ、ということですね。
―なるほど。では、音楽とテクノロジーとビジネスの3要素がお互いに関わりあっているから並べることができるということですね。
また、ミュージックビジネス専攻では起業経験というキーワードがありますが、これはどのような意図なのでしょうか。
音楽の産業って設備投資があんまりいらないんですね。例えば、自動車の起業しようと思ったら何百億かけて工場が必要ですが、音楽で何百億稼ごうと思えば自分の部屋で作ったものが大ブレイクして稼げるかもしれない。という意味では音楽の産業って、設備投資よりもアイデアで勝負できる産業なんです。
今では、音楽という産業の独自性とデジタルが使えるという時代性で起業しやすい状況が整ってきています。また、もともと音楽業界は自分で起業している人が多いので風土も合っているんですね。
もう一つは、就職にコミットした専攻であるから、という理由ですね。就職と起業は相反するものに見えてしまうんですが普通に考えて、何でもするから入れてくださいという就活生よりも起業経験があって、もっとこうした方がいいと思うんです、ということを提案できる就活生ではどちらを採用したいかは一目瞭然だと思うんですね。そのために、経営マインドを持ちましょうという意味で起業というキーワードを使っています。
・コロナによって思い出されたデジタル時代におけるコンテンツの魅せ方
ー昨年コロナウィルスによって色々な状況が変わってしまいましたが、音楽に携わるうえで困難なことはなかったのでしょうか。
多少はありました。ただ、むしろわれわれにとってはチャンスだと思っています。
最近は、音楽って「フィジカルでリアル」というイメージが強かったと思います。「作るのは人間で、それを楽しむのはコンサートでしょ」というイメージが強かったんです。レコードってデジタルなものでしたが、それが一度テクノロジーの波に飲み込まれてYouTubeなどに音源を上げられてしまってレコード会社ってもう駄目なんじゃないか、と言われていた時期もありました。しかしそこに、ライブとかコンサートっていう業態が頑張ってくれたことによりデジタルよりリアルの方が面白いですよ、と音楽の楽しみ方をビジネスとしてさらに盛り立ててくれました。
ところが、このコロナによってライブやコンサートができない状況になってしまいました。そんな中で、今まで自分たちはデジタルで音楽を楽しんでいたよね!ということに気づいた人も大勢いました。
それはコロナによって家にいる時間が増えて、音楽はもちろん、テレビやYouTubeなども含めてコンテンツを楽しむ時間が増えたことも関係しています。鬼滅の刃を無料で配信し続けた後に劇場版を出して大ブレイクを作り出したことや、Niziuのようにリアリティショーにして過程を見せることで、デビューした後に大ブレイクを起こしたという例のように、デジタルやコンテンツの上手な使い方を見せてもらったなということですね。
―なるほど、デジタルの上手な使い方を発見できたということでしょうか。
発見できた、というよりも、デジタルの上手な使い方を思い出した、という感じですかね。それ以外にも嵐のコンサートが配信になったことで結局全員神席になったね、ということもありました。今は、コンサートビジネスもなかなかリアルで行うことができず大変だということも聞くのですが、一方で配信ライブなどをやって次の準備をしているという人も多くいますね。
ダメになっていく人もいるけどここを準備期間として使っている人も多くいるので、これから二極化していくと思います。今、K字回復と呼ばれる「K」のように上がる人と下がる人がいると言われているみたいですので、ここをいかに準備期間として使うかというのがすごく大事になってきているかなと思います。
―音楽をビジネスとして成功させる際に必要となる要素というのは何かあるのでしょうか。
それは人それぞれだと思います。音楽自体は絶対になくならないと思いますが、音楽に関わる仕事って先ほども言ったK字回復のように、伸びる仕事もあればなくなってしまう仕事もあると思うんですね。そこで、自分が得意とする+aをどう掛け合わせるのか。
そのために必要なものは「今までにないアイデア」「好奇心」「ちょっとした勇気」あとは「エンターテインメントが好きだという情熱」ですかね。最後の情熱だけはみんな持っていると思いますので、やはり自分にしかない強みみたいなものを掛け合わせるのが必要なのかなと思います。
―近年、好きなことを仕事にするべきだと多く言われています。音楽が好きな人はたくさんいると思いますが、音楽の業界でも好きが仕事につながるものなのでしょうか。
まさにわれわれの業界は「THE・好きなことの業界」でしかないですね。
例えば、お金が儲かるから音楽の仕事に就こうっていう人はほとんどいないと思うんですよ。おうちがお医者だからお医者さんになろうっていう人もいるし、お金が儲かるからコンサルティングの仕事に就こうって人もいるかもしれないですが、そういうモチベーションで音楽業界に入ってくる人はいないし、入れない業界です。実際に、周りで音楽あんまり聴いたことないっていう業界人は会ったことがないですし、それでは仕事にはならないですね。
―音楽が好きだ、という人が音楽を仕事にしたい場合は音楽大学を経由しない人もいるのでしょうか。
そうですね、むしろこれまでは音楽大学を出て音楽業界に入ってくる人の方が少なかったと思います。子供のころから聴いているのでジャニーズのことならだれにも負けない!みたいな人や、ヨーロッパのロックに関してはかなり詳しい人もいます。やっぱり幼いころから自分の好きなものを聴いてきているので、大学でクラシック音楽の勉強をしなくても個人のバックボーンでこの業界に入ってくる人が多かったですね。しかし、今は専門性が強く求められる時代になって、ただの音楽好きだけでは通用しづらくなってきていると感じます。
―音楽を仕事にすることや、好きなことを仕事にすることに対してハードルが高いと思っている学生も多いのですが、何かメッセージをいただけますでしょうか。
好きなことを仕事にするというのは、仕事人生の中で強い武器になりますし、人生を面白く豊かにしてくれる要素になってくれると思います。音楽で飯を食えないぞ、という親御さんや先生もいると思うんですが、われわれスタッフ側に関しては普通に食えます。ブラックだって言われることもありますが、そのようなこともあまりないと思います。
確かに、普通の人と生活時間がずれているとかはあります。しかし、一年中文化祭の準備をしているようなものなので、大変ですが好きなことを仕事にできているっていう面白さがありますね。しかもうれしいことに、人を喜ばせてお金がもらえるんですね。それこそ医療のようにみんなが感謝している仕事でも、喜んでお医者さんに行く人っていないですよね。感謝はされるけど楽しまれる仕事ではない。しかし、我々の仕事は、こんなに喜んでくれてこんなにお金払ってくれるんだ、というような喜ばしい仕事です。
好きなことをやっていても、もちろん大変なことはあります。ただ、その大変な目に合ったことでさらに深めて面白くしていけることが好きなことだと思います。嫌いなことをお金のためにやっていたら、辞めてしまいたくなったりするじゃないですか。なので、お金のためとか人気だからという理由で仕事を選んでしまうと自分の人生損しちゃうんじゃないかな、と思います。皆さんにもぜひ好きなことを仕事にしてもらいたいな、と思います。
―本日は貴重なお話をありがとうございました。
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今回のインタビューを通して「好きなことを仕事にする」というのはやはりプレイフルな働き方に通づるものだと気づくことができました。
自分が何かに対して持つ情熱、そしてそこから得られる自身の喜びという要素はプレイフルに働く上で必要不可欠なのではないでしょうか。
高校生の皆さんも、自分の持つ「ちょっとした情熱」や「好きなもの」という要素を大切にした働き方について考えてみてはいかがでしょうか!きっとそれが、プレイフルに働くための第一歩につながると思います!