[ふんわりディスコード] by てれかす
23:00。日のない部屋で液晶が迷光を放つ。眩しいな、なんて思いながら聞くカウントダウン。
画面が動き出した。ゆったりと優しいピアノの音がする。希望の暖光が刺し始めた。
ずっと自分ひとりだと思っていた。自分だけが世界から取り残されて、自分だけが過去にとらわれて。ずっと子供のまま、成長できないまま。昔の友達を思い返しては、一緒にジャングルジムを登れないまま苦労したことを自分だけが思い出しているんだと思っていた。
でも、違ったんだ。誰しも昔の友達、会えない友達がいて。でもそれは残酷なことでもなくて。人がただ変わるだけ。ただ、変わらない過去があるだけ。
その時の自分たちは一生懸命だったんだ。何を目指していたかなんてわからない。お互いの本心なんて知り得る由もない。でも、確かに自分たちは同じ方を向いていて、同じ物を見ていた。陳腐な表現で言えば、「仲間」だったんだ。それだけで十分だ。
あと三十分の延長なんて今やない。でも自分とあいつは確かに同じ世界の延長線上にいて、元を辿れば同じ分岐点にたどり着く。たまにはそこに戻って、あの頃のアイツに会いに行こう。それで十分だから。