飯豊と高円寺、ふたつのまちをつなぐ場所―山形県飯豊町アンテナショップIIDE
高円寺駅を出てすぐにある、大きなアーチが目印の高円寺純情商店街。『山形県飯豊町アンテナショップ IIDE(いいで)』は、個性豊かなお店が並ぶその一角にあります。
アンテナショップといわれると、地方の特産品が所狭しと並んでいる……というイメージかもしれませんが、IIDEの主力商品は、“おにぎり”。
店内のショーウィンドウには、飯豊町(いいでまち)で採れたお米「つや姫」を使った、様々な種類のおにぎりが並びます。
どうして高円寺で、山形県飯豊町のアンテナショップがおにぎりを?
話をうかがってみると、IIDEの飯豊町と高円寺、2つのまちを繋ぐ場所としての魅力がみえてきました。
書き手:奥野愛
気軽に寄れる地元のお店
そもそも、どうしてアンテナショップがおにぎりを売っているの?
その答えは、商店街という場所柄にありました。
稲田さん:「IIDEは、高円寺の小学生と飯豊町の農家さんが農業交流をおこなったことでできたお店なんです。
当初は飯豊町のお米や物産を売るお店だったのですが、より多くの人に気軽に立ち寄っていただける形を目指し、2019年におにぎりを主力商品としたスタイルでリニューアルオープンをしました。
高円寺には若者のまちというイメージがあるかもしれませんが、実は長年お住まいの地元の方や子育て世代も多くて。
そういった方々に日々の食事としておにぎりやお弁当、お惣菜を購入していただき、飯豊町の食材を味わってもらうことで、自然と飯豊町に興味をもっていただけたらと思っています」
取材日にも、お昼ごはんを求めるお客さまがたくさん。これおいしいのよね、などと話しかけてくれるリピーターの方もいらっしゃるのだとか。
IIDEが飯豊町の魅力を伝えつつも、決して商店街にとっての“他所”ではなく、自然と高円寺の日常に馴染んでいる様子がうかがえました。
生産者と共に伝える飯豊の魅力
IIDEのおにぎりに使われているお米は、すべて直接農家さんから仕入れたもの。そしてお米のほかにも、飯豊町で採れた食材を使用した商品が店内に並びます。
たとえばこの南蛮味噌のおにぎり。こちらに使われている唐辛子は飯豊町でとれたものだそう。
実際にいただいてみたのですが、これがピリッと辛くておいしいんです……!
またショーウィンドウの反対側には、壁一面に飯豊町や山形県の特産品が飾るように並べられています。
お店の外からもよく見えるこの棚に興味を惹かれてご来店されるお客さまも多いのだとか。
しかし稲田さんはこう話します。
稲田さん:「何のお店だろう?おしゃれ!入ってみたい!と思っていただくことは嬉しいですが、実際に買ってもらえるかは別の話です。
飯豊町の皆さんは、IIDEを通じて自分たちのものを知ってもらいたい、買ってもらいたいという気持ちを強く持っています。ですが、例えおいしくてもこのパッケージデザインではなかなか売れないよ……なんてこともあるんです。
そんなときはこちらから売り方の提案をさせていただくこともあります。
たとえばこの1㎏のお米の袋。これはIIDEでパッケージをデザインしたものなんですよ。
こうやって私たちからも働きかけをすることで、一緒に飯豊町の魅力を伝えていけたらいいなと思っています」
まち単位で取組むフードロス削減
高円寺というまちともつながりが深い『山形県飯豊町アンテナショップ IIDE』。それを表しているもののひとつが、“高円寺フードロスゼロプロジェクト”(お店を知っておいしく食べて「高円寺フードロスゼロ」へ! – 高円寺百貨店 (koenji-depart.com))への参加です。
飲食店に大きな打撃を与えている新型コロナウィルスの蔓延。高円寺のお店でも、せっかく作ったメニューが売れ残り、廃棄になることが増えたそうです。
そこで高円寺百貨店と早稲田大学学生チームがタッグを組んで始めたのがこのプロジェクト。Instagramアカウント(高円寺フードロスゼロ@高円寺百貨店(@koenji_foodlosszero) • Instagram写真と動画)を通じ、加盟店舗のロス情報や限定メニューなどの情報発信をすることで、フードロスの解消を目指しています。
実はこのプロジェクトを進めるメンバーの一人は、IIDEに勤めている早稲田大学4年の小泉さん。くわしいお話をうかがってみました。
小泉さん:「プロジェクトが立ち上がったのは、私がIIDEでの勤務中に売れ残りが出ている様子を目にしたことがきっかけです。
お店で売れ残る商品の中には、決して誰からも求められていないものだけではなく、誰かが求めているはずなのに、その人の元へ届けることができなかったものもあります。
その誰かになんとかしてIIDEの商品を届けたいという想いから、フードロス対策に関心を持つようになりました。
しかし、フードロスはIIDEだけでなくどこの飲食店も同じように抱えている問題です。そのためもし仮にIIDE1店舗がその対策を行ったとしても、それは根本的な解決には繋がりません。
そこで同じくまち単位でフードロス対策をしたいと考えている仲間を集めて、この取り組みをスタートしました。
最近、IIDEで店頭に立っていると、インスタを見て来ました!と声をかけてくださるお客様がいらっしゃるんです。
また自分自身、加盟店をめぐる中で高円寺にこんなお店があったんだ、という楽しさを感じているので、ユーザーの方にもそれが伝わっているといいなと思います」
最終的にはロス情報を発信するのではなく、高円寺の店をもっと多くの人に知ってもらい、多くの人に来ていただくことで、結果「フードロスが出ない」という形になったらいいですね。
Instagramアカウントでは、ロス情報のほかに高円寺のプロジェクトメンバーによるお店紹介も行われています。お近くにお住まいの方は是非ご覧になってみてくださいね。
飯豊と高円寺をつなぐ場所
最後におふたりに、飯豊町と高円寺に対するIIDEの想いをうかがいました。
小泉さん:「飯豊町にはお米に玄米、牛肉、山菜、日本酒、川魚…などといったおいしい食べ物や、紅葉や豪雪、そしてその雪解け水が生みだす美しい景色など、数多くの魅力があります。私自身、何度でも訪れたいと思える場所です」
稲田さん:「ですが東京の人は、ほとんど“飯豊町”という地名も知らないんですよね。そういう人たちに飯豊町に興味を作ってもらうきっかけをわたしたちが作れたらいいのかなと思います」
小泉さん:「IIDEのファンになってくれた人は、飯豊町のファンだとも言えるはず。住む人や訪れる人を増やすお手伝いをしたいです」
稲田さん:「このお店ができた最初のきっかけは、高円寺の小学生と飯豊町の交流です。だからこの人と人とのつながりを、わたしたちも引き継いでいきたいなと思っています」
小泉さん:「そしてフードロスゼロプロジェクトの方は、まだまだ加盟店が少ないのでもっと大きなムーブメントにしたいですね。
単に売れ残ったものが安く買えて嬉しい、だけではなく、こんなお店が、こんな風景があったんだ!という発見がうまれて高円寺のまちをより一層好きになってくれる人が増えたら嬉しいです」
稲田さん:「高円寺はみうらじゅんさんが”日本のインド”だと言ったくらいにディープな文化に溢れた面白い場所。IIDEも含め高円寺全体がさらに盛り上がっていったらいいなと思います」
編集後記
IIDEへの取材を通じ、アンテナショップは地方の魅力発信をするだけではなく、まちとまちを繋ぐ架け橋にもなれる場所なのだと知りました。
その土地でとれるおいしいものを、その土地に訪れて味わうこと。
これがどれだけ貴重で贅沢なことなのか、身に沁みて感じたこのコロナ禍。ですがIIDEのおにぎりは、高円寺にいながらも飯豊町を感じさせてくれました。
お近くにお住まいの方、そして高円寺にお立ち寄りの方は、ぜひ『山形県飯豊町アンテナショップ IIDE』に訪れてみてくださいね。
飯豊町観光協会HP⇨心の古里 山形県飯豊町観光協会 (iikanjini.com)
公式HP⇨山形県飯豊町アンテナショップ IIDE – 美味しいおにぎりとお弁当、産地直送の名産品 (iide-kouenji.com)
高円寺フードロスゼロプロジェクト⇨お店を知っておいしく食べて「高円寺フードロスゼロ」へ! – 高円寺百貨店 (koenji-depart.com))
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