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ルンバに学ぶ 市場を切り拓くマーケティング戦略
今やロボット掃除機の代名詞ともなった「ルンバ」。2002年の初代ルンバの発売から現在に至るまでに、「ルンバ」はいかにして家庭用ロボット掃除機の市場を切り拓いていったのか。
この連載企画「〇〇から学ぶ マーケティング戦略」シリーズは、株式会社セブンデックスがお送りしております。反響が良ければ、次回もメンバー持ち回りで更新していきますので、いいねやXでの拡散お願いします!
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◆ルンバの概要|ロボット掃除機で圧倒的なシェアを誇るルンバ
始まりはMITの研究所の一室から
「ルンバ」の生みの親であるアイロボット社は、1990年MIT(マサチューセッツ工科大学)で人工知能の研究をしていた科学者ロドニー・ブルックス、コリン・アングル、ヘレン・グレイナーの3名により共同設立され、宇宙探査用に設計された「ジンギス」や、地雷除去・遠隔操作多目的ロボットなどの産業用ロボットの開発を経て、2002年に家庭用ロボット掃除機として「ルンバ」を発表した。
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ハイエンドからエントリーモデルまで
アイロボット社が販売しているルンバは、障害物回避機能を搭載した賢い頭脳の上位モデルの「jシリーズ」、多機能でコスパの良い中位モデルの「iシリーズ」、必要十分な機能で価格を抑えたエントリーモデルの「Essential robot」の3シリーズがある。「Essential robot」であれば、3万円代〜と初めてルンバを買う人でも手が届きやすい価格設定になっている。
またアイロボット社はロボット掃除機のルンバシリーズに加え、床拭きロボット「ブラーバ」、空気清浄機「カラーラ」、プログラミングロボット「ルート」なども展開している。
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ルンバの購入チャネルは自社ECサイト、ネットモール、家電量販店、百貨店が主であるが、最近はサブスクリプションの提供開始や、レンタル事業者によるレンタル販売など、直接購入以外の選択肢も広がっている。
国内はルンバ一強、グローバルは中国勢が躍進
日本国内のロボット掃除機のメーカー別シェアを見てみると、アイロボット社(ルンバ)が74%と圧倒的だ。グローバルで見ると、アイロボット社(ルンバ)が29%で1位ではあるものの、エコバックスやシャオミ、ロボロックなどの中国勢が軒並み上位を占めている。
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◆ルンバのマーケティング戦略|ルンバはいかにして市場を切り開いたのか
①掃除機売り場の客寄せパンダとなり、認知を拡大
ルンバの最初のマーケティング課題は「ロボット掃除機という製品」の認知が全くなかったことである。そのため、デモンストレーション販売で「ロボット掃除機とはこういうものだ」という認識を形成していった。
その際、家電量販店の掃除機売り場で取り扱ってもらうために、ロボット掃除機としてのルンバを提案するのではなく、「ルンバを置くと掃除機売り場が活性化され、掃除機全体の売上増が見込める」という相手側の利益になることをストーリーとして提案したのだ。
この戦略が功を奏し、掃除機売り場の客寄せパンダとなったルンバは、家電量販店での取り扱い量を増やすと同時に、ロボット掃除機の認知を急速に拡大させていった。
<Point①>
製品そのもののではなく、製品を取り扱うことで相手にどのような利益をもたらすのかをストーリーとして提案することで、取り扱い量を増やし、認知を拡大させていった。
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②「ルンバが掃除した方が綺麗になる」という理解の促進
ルンバの次なるマーケティング課題は「製品の理解が進まず、購買に至っていないこと」だった。特に日本のマーケットでは、他国と比べて衛生意識が高いことから、自らの手で掃除をする方が綺麗になるという認識があった。
そのため、「ルンバが掃除した方が綺麗になる」という事実を証明するために、「ゴミ除去率99.2%」というようなエビデンスを出し、人の手で掃除を行うよりもロボット掃除機が掃除を行う方が綺麗になる、という理解を進めることで、購買を促した。
<Point②>
購買を妨げている要因をエビデンスやデータによって払拭し、購買を促進した。
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③掃除を任せるのではなく、助けるという訴求が刺さった
「日本人の勤勉な性質」もルンバにとっては大きなマーケティング課題となっている。「掃除は真面目に行わなければ罰が当たる」「楽をするのは良くない」という気質があるため、自分の代わりにやってもらうことに抵抗感があり、「掃除は自分で行うもの」という固定観念から、「あなたの代わりに掃除する」といった機能的価値訴求が効果的ではなかった。
そのため、「任せる」ではなく「助ける」ための商品という切り口で、「あなたに家事の助けになる」という文脈で訴求し認識を広めたことで、日本での普及が進んだ。
<Point③>
機能的価値の訴求のみだけでなく、情緒的な障害を取り払うための訴求を行い、普及率を高めた。
認知度は十分、今後は意識変革から行動変容を起こせるかが課題
2023年の国内市場におけるルンバの認知度は約98%を誇るが、世帯普及率は10%以下に留まっている。世帯普及が滞っている理由は依然として「ロボット掃除機で本当に隅々まで掃除ができるのか?」というデビュー当時からあるイメージと「掃除は自分の手でするもの」という意識が強いことを解消しきれていない層があるためである。
これらについての対応方針として「購入未検討の方々へ気づきを与えるマス的なアプローチ」「購入を検討されている方々へのダイレクトレスポンス的なアプローチ」「ルンバのことをまだよく知らない方へのエンゲージメント促進」である。意識を変革させることから、さらにその先の行動変容を起こせるかが大きな課題だ。
◆まとめ|ルンバに学ぶ 市場を切り拓くマーケティング戦略とは
ロボット掃除機市場を切り拓き、以前としてNo.1のシェアを誇る「ルンバ」。マーケティング戦略はいずれも今となっては、当たり前のように思えることばかりではあるが、共通しているのはただ商品の良さを訴えかけるだけでなく、相手の本当のニーズを考えることにあると言えるだろう。
ルンバに学ぶ 市場を切り拓くマーケティング戦略
<Point①>
製品そのもののではなく、製品を取り扱うことで相手にどのような利益をもたらすのかをストーリーとして提案することで、取り扱い量を増やし、認知を拡大させていった。
<Point②>
購買を妨げている要因をエビデンスやデータによって払拭し、購買を促進した。
<Point③>
機能的価値の訴求のみだけでなく、情緒的な障害を取り払うための訴求を行い、普及率を高めた。
◇ ◇ ◇ 参考文献(抜粋) ◇ ◇ ◇