WMS(倉庫管理システム)とは経営資源の見える化part2
(この記事を読んで欲しい方:流通や小売事業の経営職、管理職の方、個人法人問わず在庫管理をシステム化したい方、通販事業の方向け)
※この記事はpart1、2に分かれて書かれております。WMSの機能理解ができている方はpart2から読んでいただいて構いません。
(part1はこちら)
内容
①WMSの機能
②ユーザーの習熟度によって変化する、求める機能
WMS 経営資源の見える化
part1までがWMSの説明となりましたが、これらは目的ではなく手段です。7年物流業に携わった経験でわかったことは、WMSの本当の目的は、倉庫に眠る経営資源の見える化です。
言い換えると売れる商品と、売れない商品を認識です。
企画や営業、マーケティングの担当者は売れる商品に目を向けがちで、売れない商品には見向きもしない傾向がありませんか。そのままでは売れない商品は、やがてその存在すら意識から消えている状態が、どの企業でもままあります。
そりゃ誰もがキラキラ光っているものに目を向けたいですが、その一方で確実に倉庫に存在しているのです。影にまぎれて見向きもされないかわいそうな商品たちが。
厄介なことに売れない商品はその存在だけで自社の利益を削っています。意識の外に置いてしまっては経営的には利益が減ってしまいますし、現場の倉庫では保管スペースを圧迫し、新商品を保管する場所が不足します。いち早く対処した方がいいに決まっています。
ではどうやって見つけるか、具体的に説明しましょう。
私の経験したファッション通販を例にとって説明しましょう。まず倉庫に保管する在庫のうち、
①直近1ヶ月間で売れた商品と、売れなかった商品の割合
②売れた商品と売れなかった商品の入荷〜出荷までの保管期間
をWMSのデータで調べましょう。
結果は次のようになりました。
パレートの法則(8:2)とまではいきませんがそれに近い数値(7:3)でした。しかもセール時期も含めて多少のバラつきはあるものの、毎月ほぼ同じ結果でした。
驚愕の結果です。まず①では、在庫の70%が売れていないのです。私のいた倉庫では常時100万点の在庫を保管していました。在庫量が多いため保管スペースが広くなり、作業が非効率になり頭を悩ませていましたが、その70万点相当が売れていないという真実。
唖然としました。
もちろん、今月に売れないからといって翌月に売れるかもしれません。そのための在庫もあります。
そこで②です。売れた商品の保管期間を分析しました。ここでも驚愕。売れているのは1ヶ月以内に入庫して保管したものばかり。2〜3ヶ月保管しているとだんだん売れなくなり、4ヶ月以上保管している商品はほとんど売れていませんでした。
売れなかった商品の保管期間を調べると、なんと全体在庫の40%以上が4ヶ月以上の保管商品でした。私の仕事の約半分は売れない在庫の管理だったのです。やるせない気持ちになったのは言うまでもありません。
わかったことは4ヶ月以上の保管している商品は売れる確率が限りなく0に近いこと。
WMS 保管料に要注意
売れない商品の何が悪か。わかりやすい点を1つ指摘すると保管料です。倉庫に商品を置くだけで保管料がかかります。これが自社の利益を圧迫してしまいます。
小売業の平均的な経常利益率は売上比で4%程度です。
仮に商品単価が5000円だとすると、4%ですから200円が利益となります。私がいた倉庫では保管料が平均20円/月でした。4ヶ月以上売れることのない商品を減らすことで、この20円のマイナスを、逆に利益にプラスすることができます。
では売れない商品に今すぐできることは何でしょうか?
返品です。返品が可能なら仕入れ元に交渉して返品しましょう。アパレルは商習慣で返品ができました。
そして今後は入荷量を1ヶ月で売り切れるくらいの適正量に調整していきます。全く同じ商品はあまりないのですが、似たようなカテゴリやデザイン、価格帯の商品は要注意です。
もし返品できない場合は、商品を複数まとめてセット販売で5−10%程度の割引販売などの方法を考えます。
ここで陥りがちなのが、値下げ10%=500円のマイナス、対して保管料20円/月のマイナスと比較すると値下げ販売の方が利益が残らないと考えがちですが、そうではありません。
例えば送料。複数セットですから、複数購入があれば、1点あたりの送料が下がります。送料は配送する箱の数とサイズで決まります。購入点数ではありません。購入1点でも2点セットでも同じサイズの箱に入ることが多いのではないでしょうか。
2点セットを一緒に送ると1点あたりの送料は当然半額です。1点500円で送っているとしたら2点セットでは1点あたり250円です。250円も安くなりました。箱サイズが一回り大きくなったとしても1点あたりは100円〜150円は確実に下がります。
同様のことが人件費にも言えます。物流作業費や、さらには営業やマーケティング部隊の販管費も同様です。1点売れても、セット販売でも人件費はほぼ同じですから結果として経常利益率は改善されるはずです。
(ただし、仕入れ価格を下回る値下げ販売は利益はでません。当然ですね)
理想はこのような打ち手を、商品が売れなくなってから実施するのではなく、売れ行きが鈍くなり、今後売れなくなりそうだと予測できるタイミングで仕掛けるのがポイントです。先ほどの保管期間でいうと2−3ヶ月頃の商品群が対象です。
WMSがあれば、売れない商品も、工夫すれば十分に売れる商品に変えられるのです。
WMS まとめ
目的は、経営資源の見える化
機能は入荷、出荷、保管、棚卸し、帳票管理など倉庫業務に特化されている
WMSに求める機能ニーズは、習熟度によって変化
経営資源を見える化することで利益を出す
今回お伝えした内容の実際の数値は、業界や取り扱い商品の特性によって変わるものと思います。皆様の状況に合わせてお考えいただければと思います。
ここまで、読んでいただきありがとうございました。ご参考になれば幸いでございます!
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