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村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(新潮社文庫)
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村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(新潮社文庫)再読了。読み終えたのは随分前なのだが、すぐに感想を述べるのではなく、余韻を楽しんでからにしようと決めていた。
僕なんかが説明する必要もない、村上春樹さんの傑作の一つ。前半は冗長に感じるものの、長編ゆえに、後半で圧倒される。ラストのラストまで、衝撃的だ。そして、小説でありながら、多くの生の示唆に富んでいる。
棚の中にはたしかにジレットのレモン・ライムのシェーヴィング・フォームとシックの剃刀が入っていた。シェーヴィング・フォームの缶は半分ほどに減っていて、吹出し口には乾いた白い泡がこびりついていた。死とはシェーヴィング・クリームの缶を半分残していくことなのだ。
公正さというのは極めて限定された世界でしか通用しない概念のひとつだ。しかしその概念はすべての位相に及ぶ。かたつむりから金物店のカウンターから結婚生活にまで、それは及ぶのだ。誰もそんなものを求めていないにせよ、私にはそれ以外に与えることのできるものは何もないのだ。そういう意味では公正さは愛情に似ている。与えようとするものが求められているものと合致しないのだ。だからこそいろんなものが私の前を、あるいは私の中を通りすぎていってしまったのだ。
書こうと思って書ける文章ではない。それでいて、実に的を得ている。
僕は、スタンダールやバルザックを読んだことがない。サリンジャーは数冊読んだはずだが、覚えていない。『カラマーゾフの兄弟』も読んでいない。読んでから読み直せば、感想も変わるのだろうか? デュラン・デュランという名前は知っていても、どんな音楽なのか知らない。聴けば、スポーツカーに乗った男女二人組を想像できるだろうか?
次は順番的に『ダンス・ダンス・ダンス』を読もうと思っているのだが、あまりに村上春樹続きなので、違う本を読もうと思っている。
ちなみに、その次『ノルウェイの森』は持っているし、それ以後の本も読んだのだが、僕はあまり好きではない。全く別の本を読みたい。それこそ『赤と黒』でも読むべき時なのかも知れない。