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伝説の映画『幻の湖』(たぶん5回目)

幻の名に相応しいパッケージ

 映画『幻の湖』(たぶん5回目)を観てしまった。1982年公開。『七人の侍』の脚本をあの黒澤明と缶詰めで二人で書き上げ(小国英雄も参加)、『白い巨塔』『日本のいちばん長い日』『日本沈没』『私は貝になりたい』『八甲田山』『八つ墓村』とそうそうたる脚本を成したのち、東宝創立50周年記念映画として自ら監督・原作・脚本・製作を行った橋本忍の初監督映画だ。

 劇場公開後、あまりの完成度の低さからわずか二週間で興行打ち切りになったという、伝説の映画でもある。

 今はDVDかBlu-ray(いつの間にBlu-rayがAmazonで売ってた。海賊版か?)を買うか、Amazonプライム・ビデオでレンタルするしか観る手立てはない(他のサブスクでは取り扱っていない)。タイトル通り、この映画自体が「幻」になってしまった

 僕がこのトンデモ映画を何度も観ることができるのは、僕が昔にDVDを買ったからだ

 あらすじを自分で書くのが正直面倒なので、Amazonから引用させていただく。

何を追って、何を求めて、人間は走り続けるのか──?
豪華キャストの競演で贈る、東宝創立50周年記念超大作

愛犬とのジョギングを生き甲斐とするひとりの女が、殺された愛犬の復讐のため、ただひたすら走り続ける…。『幻の湖』は400年前の戦国時代から現代、そして宇宙にまで舞台を広げ、見果てぬ遠い幻の夢を追い続ける人間を描くネオ・サスペンスです。

日本映画の金字塔となった『砂の器』『八甲田山』に続く橋本プロダクションの第3作目となる本作は、製作に3年の期間をかけ、東宝創立50周年記念作品として総力を挙げて製作されました。

Amazon商品紹介あらすじ

 あらすじの時点で、もう色々おかしい。殺された愛犬の復讐戦国時代、現代、宇宙ネオ・サスペンスってなんだよ。ネオて。まあ、こりゃ打ち切りになるよな、っていう、知る人ぞ知るクソ映画の金字塔なんだけど。

 5回も観てると、呆れるを通り越して、なんかいい映画に思えてきてて、ちょっと困っています

 まず、昔の滋賀県・東京都を知る貴重な映像資料だということ。カメラワークも良く、黒澤明演出を強く意識しているのも分かる。戦国時代劇パートがやたらしっかりできていること(セットの汚し具合は改善の余地があるが)。音楽も素晴らしい。

 これがクソ映画になってしまったのは、ただ脚本だけの問題なのです。他はたぶん一流なんだな、って。

 脚本にしても、織田信長・浅井長政のいざこざと、それに巻き込まれた長尾家の苦難という史実を元に、現代での悲恋・人間関係に落とし込んだ、何も考えなかったわけじゃないんだよな、っていうのがジワジワ分かってきていて。

 問題の全ては、物語にマラソンを持ち込んだこと、主人公を雄琴のソープ嬢にして無意味にエロくしたこと(あとアメリカ人ソープ嬢ローザの源氏名を「キリシタン」にしたこと。真面目にやれ!)。これさえなければ真っ当な映画になったんじゃ……と思いつつ、でもこうだからこそ『幻の湖』なんだよなあ、このままクソ映画の頂点を誇って欲しいなあ、とか複雑な気分。

 ともあれ、DVD買って、爆笑しまくって、友だちと観て、知ってる人同士でさらに爆笑して……って、もうこの映画好きじゃん、ってなっています。DVD代の元はとっくに取れてるな。

 まあ、次に観るのはいつの日か。また僕に爆笑を与えておくれ。

追記

 以前は、長尾の唐突な自己紹介「僕の職業は宇宙開発、宇宙パルサー。電磁波や地磁気を測定する仕事です」、道子の「言わないで! あなたは遅すぎた、今さら遅すぎるのよッ!」という一人完結台詞で爆笑してたんだけど、今日はしみじみとそのセリフを受け止めてしまった。

 電磁波や地磁気は目に見えない不確かなもので、確かに幻のようなものかも知れない。

 倉田と結ばれた(この沖ノ島に関するやり取りは失笑を禁じ得ないが)道子が「遅すぎる」と叫ぶ前に、「琵琶湖には展望台が二つある。ここ(葛籠ヶ岳)と琵琶湖大橋だわ」と長尾・倉田の二人を並べていることに気付いてみると、「遅すぎた」にも幾分か納得がいったのだ。

 さすがに多くの脚本を手掛けているだけあって、台詞もそれなりにちゃんとしていたんだな、「宇宙パルサーって何?」とか表面的な不可解さに囚われすぎていたのかもしれないな、と反省した次第だ。

 ただし、以下の台詞は相変わらず如何とも度し難い。

  • (貯金が2,000万あるかと聞かれて)そんなには……1,800万円くらいかな?

  • SHIRO(タオルに書かれた文字&犬小屋の文字)

  • Autumn… Autumn in Japan.

  • ファントムではなくイーグルだ。イーグルは既に実戦配備についている

  • 白い犬 白い犬 白い犬 走る女 走る女 走る女

  • ♪恋はお邪魔かしら 今はお邪魔かしら

  • 広島の女の子と私とでは、事情も違うし、相手も違うわよ!

  • 日夏が憎い……。いや、東京中の人間が日夏をかばっている

  • さようならだわ……。あの人にも、この人にも。

  • ここだ、ここの直線で後ろに張り付く!

  • そうね、楽しい二人の湖東の旅にしなくっちゃね!

  • 沖ノ島、あれが?!

  • お願い、シロ、走らせてぇーッ!

  • 勝った、勝ったわ!(追い抜く

 観た直後とはいえ、我ながらよく覚えているものだ。そしてよくもまあ、これだけツッコミどころがある映画なものだ(これらは一部。ツッコミ始めるとキリがない)。決してオススメはしませんが、時間を浪費したい方はご覧になってください(笑)。

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